イタリアがジロに燃える5月中旬、スペインでも山岳ステージレースが幕を開ける。プロツアーカテゴリーで、1週間をかけて争われるボルタ・ア・カタルーニャも要注目のレースだ。

毎年5月に開催されるボルタ・ア・カタルーニャは、ジロ・デ・イタリアの影に隠れてしまいがちだが、今年で89回目を迎える歴史あるステージレースだ。ジロにかけるイタリア人選手が不在な分、ツールを見据えるスペイン勢らが顔を揃えるのが特徴。その名の通りスペイン・カタルーニャ地方が舞台となる1週間のステージレースは、山岳基調のレースだ。

総合優勝の行方は、中距離ステージレースによくあるように、大逃げによって決まることも多く予想しにくい。従ってここでは、各ステージの特徴と注目の選手を挙げることでレース観戦の見どころとさせていただこう。プロローグ2連覇なるかトール・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)プロローグ2連覇なるかトール・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ) photo:CorVos

第1ステージは5月18日にリョレット・デ・マールで3.6kmのプロローグで行われる。コースは1.1km地点にかけて上るがゆるやかなもので、パワーのある短距離TTスペシャリストに多いにチャンスがありそうだ。ほぼ同じコースの昨年の第1ステージを制したトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)はこのステージの優勝候補筆頭だ。第2ステージではサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)のダウンヒルに注目!第2ステージではサミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)のダウンヒルに注目! photo:CorVos

1週間のステージレースではのんびりと山岳コースを迎えるわけにはいかない。ジローナ〜ロセス間163.1kmの第2ステージから1級の山岳ポイントが2つある難易度の高いコースが設定される。ただし標高は最高で530mと高くなく、逃げを狙う選手たちの活躍の場となりそうだ。総合を伺う選手は様子見といったところか。残り17.5kmを下ってのゴールとなるため、下りのスペシャリスト、サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)が動いてくるかもしれない。

第3ステージはロセス〜ラ・ポブラ・デ・リリェト間の182.9km。1000m級の山岳が3つと、ノンカテゴリーながらラ・ポブラ・デ・リリェトは登りゴールとなっており、総合を狙う選手が火花を散らすことになりそうだ。今大会のクイーンステージとなる第4ステージはアンドラ公国のバルノル・セクトル・パル山頂ゴールで、ゴール地点の標高は2000mを超える。ここで総合優勝の行方が問われることになるのは間違いない。


昨年区間優勝を飾っているシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)昨年区間優勝を飾っているシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:CorVos


続く第5ステージはスプリンターにとって少ないチャンスのひとつ。ラ・セウ・ドゥルゲル〜トレデムバーラ間の201.3kmはゆるやかな起伏があるものの、ゴールまでは下り基調で、統率のとれたスプリンターチームが逃げを計算ずくで押さえ込めば、スプリンターによる集団スプリントになりそうだ。バルセロナにゴールする第6ステージも序盤こそ山岳ポイントが設定されるが、ゴールにかけてはゆるやか。逃げを狙う選手なら最終日前日、決めてみたいステージだろう。

最終第7ステージはサン・クガのアルト・レンディメンセンター〜モンテメロのカタルーニャ・サーキットまでの110.8kmで、中盤にかけて緩やかな登りが続き、ゴールまで下り基調のレイアウト。昨年は最終ステージで大逆転劇が起きたカタルーニャにあって、総合リーダーを擁するチームにとって油断は最後まで禁物だ。F1も行われるサーキットでステージ優勝と、総合優勝の2つの栄冠が決定される。

注目選手紹介

昨年のプロローグを制し、第2ステージも制したフースホフトは今年も注目の選手だ。昨年3位のホセイバン・グティエレス(スペイン、ケスデパーニュ)や、ブレット・ランカスター(オーストラリア、サーヴェロ)といったこの種目のスペシャリストはこの第1ステージをどんなタイムで走るか。総合に注目の集まるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)総合に注目の集まるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ) photo:CorVos

スプリンターの名前を見ても彼がひとつ図抜けているか。フースホフトに対抗するであろうスプリンターとしては、昨年のカタルーニャで1勝を挙げたフランチェスコ・キッキ(イタリア、リクイガス)、ゲラルド・チオレック(ドイツ、ミルラム)らが挙げられる。キャトル・ジュール・ド・ダンケルクで集団スプリントでヒトケタ台の順位に入り、総合9位と調子の上向きな新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)が、プロツアーの集団スプリントでどこまで食い込んでくるかにも注目したい。調子が上向きの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)の走りに期待!調子が上向きの新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)の走りに期待! photo:Hitoshi Omae

しかし、新城に期待がかかるのは第2、5、6ステージのような逃げが予想されるステージだ。ゴールまで少人数でたどり着けば、ステージ優勝も狙えるはずだ。こうした展開を狙う注目選手は他に、シリル・デッセル(フランス、アージェードゥーゼル)、ピエリック・フェドリゴ(フランス、Bboxブイグテレコム)、ステファヌ・オジェ(フランス、コフィディス)、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、ファンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)らがいる。

総合優勝の行方は混沌としているが、ツールまで見据えている注目のオールラウンダーの名前を挙げておこう。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケスデパーニュ)やキム・キルシェン(ルクセンブルク、チームコロンビア)、サミュエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)ら、6月、7月に調子を上げていきたい選手たちの走りやいかに。

昨年総合優勝したグスターボ・セサル(スペイン、カルピン・ガリシア)はチームが招待されず不参加。最終日でリーダージャージを手放したレミ・ポリオル(フランス、コフィディス)は骨折からの復帰戦でモチベーションは高いだろう。

昨年は秒差で決まったボルタ・ア・カタルーニャ。今年はどんな展開が待ち受けるのだろうか。

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