オーソドックスなプレーンカーボンチューブを組み合わせたシンプルなスタイルに定評があったCAYOがついにフルモデルチェンジを果たした。

フォーカス CAYO EV 3.0フォーカス CAYO EV 3.0 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

フォーカスのラインナップではミドルグレードに位置するCAYOであるが、もともとそのポテンシャルは高く、ハイエンドのIZARCOとそれほど遜色があるわけではなかった。その証拠に”チームカチューシャ”で数人の選手から指名され、レースにも駆り出されている。
大幅なフルモデルチェンジを果たしたCAYO EV 3.0のフレームはさらに軽量化され、他社のハイエンドモデルに匹敵するほどのスペックをもったといってもいいだろう。

新しく開発したCAYOはこれまでのロングライド用としてのコンセプトに加え、よりレーシーな性能を追求しているという。フロント部分はより高い剛性を追求するために、エッジの効いたデザインを採用している。トップチューブはヘッド部からシートチューブへ向かうほどシャープになる設計だ。

ボリュームを増したヘッド周辺部の形状ボリュームを増したヘッド周辺部の形状 一方シート周辺部は細身のシャープな形状一方シート周辺部は細身のシャープな形状


ダウンチューブ内にはシフトケーブルが通っているダウンチューブ内にはシフトケーブルが通っている リアブレーキの内蔵処理リアブレーキの内蔵処理


シートステーは横方向に扁平成型を施したモノステータイプを採用しており、縦方向にボリュームがある既存モデルと比較するとやや細くなったイメージである。これは横剛性を保持しつつ、衝撃吸収性を高める設計だろう。

ボトムブラケットの規格はBB30からプレスフィット30(PF30)へと変更が加えられている。各コンポメーカーやサードパーティ製品のアダプターによって、標準的な設計のクランクならほとんどのメーカーのものが装着できる。このPF30を用いることで、ハンガー周辺部の軽量化、大口径化によるフレーム剛性の確保に繋がるという効果もある。

テーパードヘッドチューブ。内蔵ケーブル処理に変更テーパードヘッドチューブ。内蔵ケーブル処理に変更 フロントフォークはCAYO EVのオリジナル設計。やや細身になったフロントフォークはCAYO EVのオリジナル設計。やや細身になった 大幅なデザイン変更となったモノステー。横扁平形状となった大幅なデザイン変更となったモノステー。横扁平形状となった


また、上位モデルのイザルコと同様に、インターナルケーブルルーティングシステムを導入。イザルコで培ったノウハウを活かし、ケーブルの経路をできるだけ直線的に配置することで、スムーズなシフティングを実現している。

リアエンドもイザルコに採用されたコンフォートシートステー形状である。剛性と快適性を兼ね備え、ロングライドに効果的なデザインである。

ヘッドチューブは前モデルから継続で、テーパードヘッドチューブを用いる。アッセンブルしているカーボンフォークも新型となり、CAYO EVO T4カーボンフォークというCAYO EV 3.0専用設計のフォークとなった。ハンドリング性能はより洗練され、安定感あるライディングを可能にしてくれる。

ボトムブラケット規格にはPF30を採用しているボトムブラケット規格にはPF30を採用している BB下のケーブル処理はアウターワイヤーを用いるBB下のケーブル処理はアウターワイヤーを用いる


構造上クランクが接近するため、逃がし加工を施したチェーンステー構造上クランクが接近するため、逃がし加工を施したチェーンステー イザルコと同様のE.C.R(Elbowed Comfort Seatstays)を採用するイザルコと同様のE.C.R(Elbowed Comfort Seatstays)を採用する


2012年から定められるUCI規定の公認ももちろん取得している。国内販売はコンポーネントにスラム フォース、ホイールはマヴィック コスミックをアッセンブルした完成車仕様となる。




―インプレッション

「万能の走り性能は"ファスト・ロングライドバイク"だ」 三船雅彦

新たな“EV“というモデルは、その外観からCAYOの進化版と自分なりに解釈をしていたが、路線はまったく違うような印象を受けた。走りはよりスパルタンになってよりレーシーな雰囲気になったようだ。

2011年までのCAYOから感じたしなやかなイメージからはうって変わって、どちらかというとイザルコの質感に近くなっている。従来のCAYOのイメージで乗るとその変貌ぶりに少々驚くかもしれない。

「上りも下りもこなせるロングライド系バイク」 三船雅彦「上りも下りもこなせるロングライド系バイク」 三船雅彦
イザルコがもっている剛性感の場合、一方向に剛性を高めているので、人によってはすごく硬いといったイメージをもちやすい。一方で、これまでのCAYOは縦、横方向にもしっかりとした剛性を保っているために乗りやすく、かつ乗り心地も良い。その点がカチューシャの選手たちといったトッププロにも認められ、実際のレースでも採用されているのだろう。

自分自身も普段CAYOに乗っているが、長距離を走れば走るほどCAYOの良さがじわじわと伝わってくる。ロングライド向きという設計のとおり、ほどほどに感じる剛性感がロングライドを走るうえでとてもフィットしていた。

これまでのCAYOは、プロのレースを主眼に置いた場合、フロントフォークが泣き所になっていた。カチューシャなどはプロレベルの性能を要求するあまり別のフォークへと変えていたようだが、このCAYO EV 3.0のオリジナルフォークなら、そのまま使うことができる性能だろう。

非常に戦闘的なスペックのバイクだ。BB部分もBB30からPF30に変更されているが、従来モデル同様にロスが少なく、パワー伝達性能に優れ、パワフルなペダリングでもしっかりと受け止めてくれる。 ダンシングでダッシュしているときでも次の足が前に出やすいイメージもそのまま引き継がれている。

CAYO EV 3.0は、ロングライド向けのコンセプトであるが、独自の定義がなされていると感じる。ロングライド=ゆっくり走るのではなく、ファストライドとして考えるなら、この走りの質には納得できる。ブルベとて先頭集団はレースのような走り方をしている。そんなシーンにも最適かもしれない。速く、遠くがこのバイクの持ち味だろう。

ただしこれまでのCAYOを思い描いていると面を食らってしまう。そういった意味ではまったく別のニューモデルとして考えても良い。


「走りはミドルクラス以上。より上品に生まれ変わったオールラウンダー」 山本健一(サイクルジャーナリスト)

前作のCAYO以上にキレのある走りが特徴的だった。軽やかに加速するフィールは前作を上回っているだろう。フレームのデザインもより洗練され上質なオーラが漂っている。しかしながらフォーカスの位置づけではこれが「ミドルクラス」なのだ。

メーカーコンセプトに関係なく思い描くCAYO EV 3.0は、ミドルながらもプロレースで使える。しかもホビーサイクリストもその性能を満喫することができるという、とても使い勝手の幅が広いバイクというのが、このバイクイメージである。

踏み込んだ瞬間、踏力はロスなくダイレクトにスピードに変わっていくイメージ。なにも抵抗が発生していないかのようにスムーズに加速し、スピードを維持できる。フォークの絶妙な剛性感はスピードを殺さず、荒れた路面でもステアリング性能を維持してくれる。

「より上品に生まれ変わったオールラウンダー」 山本健一「より上品に生まれ変わったオールラウンダー」 山本健一
ヘッド周りからBB周辺にかけて、大幅な剛性アップをしているような雰囲気だ。ダンシング時の安定性に秀でており、必要以上のウィップを生み出さないよう配慮しているようだ。

安定したステアリングとダンシングしたときに感じる一体感は非常に心地よかった。
フォークの完成度がより高まっているとも思える。下りではライントレースが思いのままで剛性の高さを感じる。路面からの振動もうまくいなしている。ダンシングで荷重がフロントにかかるような場面でも、細身ながらもよく応え、不安に感じさせることはない。

イーブンペースで走行しているときに感じる路面からの振動減衰性もよい案配で吸収をしている。手の込んだバックステーが十分に機能し、ロスなく振動吸収性を高めている。さらにロードインフォメーションを失うこともなく、適度な振動減衰性を実現していると感じる。

完成車のホイールにはマヴィック コスミックを装着し、平坦向けのスペックだった。ホイール剛性に負けることのない、タフな軽量カーボンフレームといえそうだ。予算に余裕があるのなら、マヴィック Rシスなどの軽量系ホイールも揃えておくと走りの幅を広げられるだろう。

タイプ的には上りも平坦も下りもこなせるオールラウンドな性格。軽やかな走りと安定したステアリングなどによって長丁場でもストレスが溜まりにくいだろう。ロングライドでもスピードに妥協したくないような人に選んでほしい。もちろんホビーレース、耐久レースなどあらゆるシチュエーションで楽しめるポテンシャルを秘めている。




フォーカス CAYO EV 3.0フォーカス CAYO EV 3.0 (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

FOCUS CAYO EV 3.0
サイズ:48、50、52cm
カラー:マッドブラック&ブルー
フレーム:CAYO EVカーボンPF30
メインコンポ:スラム フォース 50x34T、11-28T 10
ブレーキ:スラム フォース
ホイール:マヴィック コスミック
タイヤ:コンチネンタル グランプリ
重量:7.3kg(完成車)
価格:スラム フォース仕様完成車 344,400円(税込み)




インプレライダーのプロフィール

三船雅彦(元プロサイクリスト)三船雅彦(元プロサイクリスト) 三船雅彦(元プロサイクリスト)

9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、オーナーとしてチーム運営も行っている。
過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム

山本健一(バイクジャーナリスト)山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)

身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。





text:Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto AYANO