ひとり、またひとりと新しいチームに選手たちが契約していく中、HTC・ハイロードのオーナーであるボブ・ステイプルトン氏は自らのチームが終わりを迎えつつあることを実感している。まだ残っているマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)と数名の選手も、新チームとの契約かその発表を先に控えている状態だ。

HTCハイロードのボブ・ステイプルトンGM(2009年ツール・ド・フランスにて)HTCハイロードのボブ・ステイプルトンGM(2009年ツール・ド・フランスにて) photo:Makoto Ayano「クイックステップチームに数名の新しい選手がやってくる」 クイックステップのプレスリリースの文面だ。
「フランティセク・ラボン(チェコ)とベアト・グラブシュ(ドイツ)が今後2年間、チームで走ることになった」。 ベルギーのクイックステップは、2名のHTC・ハイロードの選手と契約をかわした。ステイプルトン氏がスポンサーを見つけることができなかったために、このアメリカのチームはまもなくその終わりを迎えることになる。

HTCは2009年のツール・ド・フランスからスポンサーに加わった。マーク・カヴェンディッシュとベルンハルト・アイゼルHTCは2009年のツール・ド・フランスからスポンサーに加わった。マーク・カヴェンディッシュとベルンハルト・アイゼル photo:Makoto Ayanoチームの冠スポンサーである携帯電話会社のHTCとステイプルトン氏との契約は今年まで。HTCは2009年のツール・ド・フランス前に、それまでのメインスポンサーであったコロンビア・スポーツウェアに代わるようにしてチームに合流した。ステイプルトン氏はこれまでのスポンサー企業や新しいスポンサー、そしてHTCと折衝を重ねたが、チームを継続できるだけの資金を集めることはついにかなわなかった。

チームの顔でありトップスターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC)はチームスカイ入りが有力視されているチームの顔でありトップスターのマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC)はチームスカイ入りが有力視されている photo:Cor Vos先の日曜日にツアー・オブ・ブリテンでのカヴェンディッシュの勝利によって、ステイプルトン氏による2008年のチーム再建以来のチーム勝利数は500に達した(女子チームの結果も含む)。現在、3年が経って彼が見ているものはチームの瓦解ではあるのだが。

2008年にステイプルトン氏の下で再始動してから今日までにチームは500もの勝ち星を積み上げた2008年にステイプルトン氏の下で再始動してから今日までにチームは500もの勝ち星を積み上げた photo:Riccardo Scanferlaステイプルトン氏が抱える最大のスターであるカヴェンディッシュはまだ新しいチーム名を明かしていない。このマン島出身のイギリス人は母国のチームスカイへ、頼れるアシストのベルンハルト・アイゼル(オーストリア)を伴って移籍するだろうと見られている。

一時代を築いたHTC・ハイロード。選手・スタッフの今後の活躍に期待したい一時代を築いたHTC・ハイロード。選手・スタッフの今後の活躍に期待したい photo:Kei Tsujiラルスイティング・バク(デンマーク)、マチュー・ブラマイヤー(アイルランド)、カレブ・フェアリー(アメリカ)、クレイグ・ルイス(アメリカ)、ダニー・ペイト(アメリカ)の5名の選手はまだ今後の進退についてアナウンスをしていない。

ルイスは今年、ジロ・デ・イタリアの雨のステージでチームメイトのマルコ・ピノッティ(イタリア)を巻き込んで落車。ピノッティは骨盤を、ルイスは足の骨折に苦しんだ。2人とも先月にはレースに復帰し、ピノッティは来シーズンをBMCレーシングで走ることを明らかにしている。

7月にステイプルトン氏はこう言っていた。「このチームにいた選手が成功を収めることをとにかく熱望する。我々のチームを経験した30〜40名のアスリートたちが、カヴェンディッシュやトニ(・マルティン)、エドヴァルド(・ボアッソン、昨季チームスカイに移籍)のようにプロサイクリングを引っ張る存在になってくれるなら、私は心から幸せだ。」

HTC・ハイロードの監督陣もせわしない状況だ。イタリア人ヴァレリオ・ピーヴァはカチューシャに加わり、デンマーク人ブライアン・ホルムはオメガファーマ・クイックステップへ、オーストラリア人アラン・パイパーはガーミン・サーヴェロへ、といった具合に。ドイツ人チームマネージャーのロルフ・アルダグは、まだ今後について明らかにしていない。

HTC・ハイロードの全ての選手が新しいチームを見つけ、シーズンが終わりを迎えれば、53歳のステイプルトン氏がプロサイクリングの世界で過ごす時間は少なくなり、代わりに多くの時間を他のビジネスに割くのだろう。
かつて自分のチームで走った選手が勝利を収める場面を、彼はカリフォルニアの自宅のテレビで眺めることになりそうだ。



HTC・ハイロードのメンバーと来シーズンのチーム
ミハエル・アルバジーニ(スイス)→グリーンエッジ
ラルスイティング・バク(デンマーク)→ロット・リドレー?
マチュー・ブラマイヤー(アイルランド)→?
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)→チームスカイ?
ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)→スキル・シマノ
ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)→チームスカイ?
カレブ・フェアリー(アメリカ)→?
ヤン・ギセリンク(ベルギー)→コフィディス
マシュー・ゴス(オーストラリア)→グリーンエッジ
ベアト・グラブシュ(ドイツ)→オメガファーマ・クイックステップ
パトリック・グレッチュ(ドイツ)→スキル・シマノ
リー・ハワード(オーストラリア)→グリーンエッジ
クレイグ・ルイス(アメリカ)→?
トニ・マルティン(ドイツ)→オメガファーマ・クイックステップ
ダニー・ペイト(アメリカ)→?
マルコ・ピノッティ(イタリア)→BMCレーシング
フランティセク・ラボン(チェコ)→オメガファーマ・クイックステップ
アレックス・ラスムッセン(デンマーク)→エリート2
マーク・レンショー(オーストラリア)→ラボバンク
ヘイデン・ロールストン(ニュージーランド)→コフィディス?
カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ)→チームスカイ
ガティス・スムクリス(ラトビア)→カチューシャ
ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ)→BMCレーシング
マルティン・べリトス(スロバキア)→オメガファーマ・クイックステップ
ピーター・べリトス(スロバキア)→オメガファーマ・クイックステップ


text:Gregor Brown
tranlation:Yufta Omata