大西洋を見下ろすペーニャ・カバルガ。石灰岩がところどころ露になった標高569mの頂上にゴールする。頂上には電波塔が何本も建っていて、白い展望タワーが青い空に向かって伸びている。相変わらず太陽光は強烈で、一秒毎に肌が焼けているのを感じる。

カンタブリア州ペーニャ・カバルガカンタブリア州ペーニャ・カバルガ photo:Kei Tsujiこのペーニャ・カバルガは、登坂距離が6kmちょっとしかない。カテゴリーが超級たる由縁は、その勾配にある。アングリルと比べれば緩いが、最大勾配は19%。ラスト1.5kmの平均勾配は13%。登りの密度が濃いので、選手の喘ぎ方を見るとまるで中距離走のよう。

昨年はホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がこのペーニャ・カバルガを制した。しかしロドリゲスは昨日のステージで落車して満身創痍の状態。骨折していないためスタートしたが、本領を発揮できるような状態ではない。

電波塔が立ち並ぶペーニャ・カバルガ頂上電波塔が立ち並ぶペーニャ・カバルガ頂上 photo:Kei Tsujiスタートを見ずにゴールに向かうと、頂上にはイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)の応援団がちらほら。アントンは昨年このペーニャ・カバルガにマイヨロホを着て挑む、はずだったが、登りに差し掛かる前のハイスピードダウンヒルで派手に落車し、そのままリタイアしている。

アントンが落車したのは、ポジション争いが活発化する下り区間。道幅のある幹線道路から90度直角に曲がってペーニャ・カバルガに突入するので、集団での位置取りが悪いと後方に沈んでしまうのだ。

ビゾンテ(水牛)が迫ってきてますビゾンテ(水牛)が迫ってきてます photo:Kei Tsujiカンタブリア州の州都サンタンデールが近いため、今までのステージの中では一番観客の密度が濃い。勾配がきつくなるラスト1.5kmにみんな集まっているので当然と言えば当然。

でも沿道の観客曰く、観客の数は昨年より少ないらしい。やはり昨年はアントンがマイヨロホを着ていたので、すぐ隣のバスク地方から大勢のファンが詰めかけたそうだ。

連なる山々を横目に登りが続く連なる山々を横目に登りが続く photo:Kei Tsujiこの日バスク応援団より目立っていたのが、地元のカンタブリア応援団。マイヨロホを着るコーボは、ゴール地点ペーニャ・カバルガの30km西に位置するカベソン・デ・ラ・サル出身。チームメイトのデラフエンテは50km南西に位置するレイノーサ出身。17あるスペインの自治州の中で2番目に人口が少ないカンタブリア州にとって、コーボとデラフエンテは数少ないヒーローなわけだ。

コーボのあだ名は「ビゾンテ(水牛)」つまりバッファロー。どおりで沿道の観客はバッファローのコスプレだったり、角の生えたキャップ(バイキングの使い回し)を被ったりしていたわけだ。

マイヨロホのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)がフルームを追うマイヨロホのファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)がフルームを追う photo:Kei Tsujiそんな熱い観客を前に、特にラスト1.5kmを切ってから、マイヨロホ争いは加熱した。今大会最後の頂上ゴールで、正真正銘強い者同士が闘いを交えた。コーボを少しでも引き離してゴールし、ボーナスタイムを獲得したいフルームと、そのフルームを何とか逃がさずに登り切り、ボーナスタイム獲得を阻止したいコーボ。

撮影場所として選んだラスト600m地点にフルームが先頭で姿を現したとき、正直言って総合は逆転すると思った。明らかにフルームに勢いがあり、コーボは後方で喘いでいる。コーボはレース後の会見で「そうか、こうやってマイヨロホを失うんだと思った」と告白している。

大歓声を受けて登りを進むダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックス・TMC)大歓声を受けて登りを進むダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Kei Tsujiだが熱狂的な声援に後押しされるように、コーボは粘った。「意図的に少しペースを落とした。自分のペースで追走しようと思った」という言葉通り、ラスト400mあたりからコーボの挽回が始まる。逃げるフルーム追うコーボ。結果はレースレポートにあるように、フルームのステージ優勝&コーボのマイヨロホ死守。間違いなく今大会の頂上決戦だった。

その差13秒。たかが13秒、されど13秒。もう頂上ゴールは残されていないが、ボーナスタイムでひっくり返る差だ。チームスカイはウィギンズが失速したためフルーム一辺倒に。最終ステージを除く残り3ステージで、2チームは総力を挙げて闘うことになる。

17分53秒遅れの集団先頭でゴールに向かう土井雪広(スキル・シマノ)17分53秒遅れの集団先頭でゴールに向かう土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsujiレース前に「大きな逃げ集団ができれば乗りたい」と語っていた土井雪広(スキル・シマノ)は、17分53秒遅れのグルペット先頭でゴールした。「序盤の20名ほどの逃げに入ったものの吸収。次の逃げが決まって、チームメイトが入っていたのでスキル・シマノとしてはそれでよかった」。

この日の平均スピードは43.3km/h。ハイスピードな展開に苦しみ、そして最後の激坂を登った土井雪広の表情には、さすがに疲れの色が浮かぶ。「今日は最初から最後までジェットコースター。今大会で一番疲れた一日だ。最初の1時間は49キロ、2時間目45キロ、3時間目46キロ、4時間目43キロ。登りを含むコースでこのアベレージスピードを記録したのは初」。

翌日はずっと逃げたいと言っていた第18ステージ。だが「本当に疲れた」とこぼす土井雪広は「完走は大丈夫だけど、明日(第18ステージ)は狙えるかどうか分からない」と言う。毎日大量に飲んでいるというコーラを飲み干し、麓のチームバス駐車場に向けて下って行った。
観客が詰めかけたペーニャ・カバルガ観客が詰めかけたペーニャ・カバルガ photo:Kei Tsujiマイヨロホを13秒差で守ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)マイヨロホを13秒差で守ったファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC) photo:Kei Tsuji17分53秒遅れの集団先頭でゴールした土井雪広(スキル・シマノ)17分53秒遅れの集団先頭でゴールした土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji


text&photo:Kei Tsuji in Solares, Spain
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