登りで積極的に動いた2010年ジャパンカップ覇者ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)が、風吹き荒れる1級山岳ラ・コバティーリャ頂上ゴールを制覇。マイヨロホを着るホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は失速し、ステージ2位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)が首位に躍り出た。

世界遺産に登録されたアビラの市壁を通過世界遺産に登録されたアビラの市壁を通過 photo:Cor Vos今大会2回目の頂上ゴールは、サラマンカ近郊のスキーリゾート地シエラ・デ・ベハル・ラ・コバティーリャ。ビジャカスティンをスタートする183kmコースの最後に、標高1970mの頂が待ち構えている。

1級山岳ラ・コバティーリャの正式な登坂距離は9.1kmだが、実質的な登坂距離は18.2kmに達する。しかも後半の平均勾配は10%を超え、風が吹き付けるタフなコンディション。この前半戦最後の山岳で、マイヨロホ争いの火花が散った。

逃げグループを形成するセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)ら4名逃げグループを形成するセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)ら4名 photo:Unipublicレースは15km地点で飛び出したセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)にホセビセンテ・トリビオ(スペイン、アンダルシア・カハグラナダ)が加わり、遅れてヴァカンソレイユ・DCMのマルテイン・ケイゼル(オランダ)とピム・リヒハルト(オランダ)が合流する形で4名の逃げが先行する。

気温25〜30度の晴天の下、ラングら4名は最大10分30秒のリードを稼ぎ出す。メイン集団は前日にマイヨロホを獲得したカチューシャがコントロールし、これにランプレ・ISDやエウスカルテルが手を貸して勝負への意気込みを示した。

一路、1級山岳ラ・コバティーリャを目指すプロトン一路、1級山岳ラ・コバティーリャを目指すプロトン photo:Unipublicやがて逃げグループオランダチャンピオンジャージのリヒハルトと、これまでグランツールで再三逃げを打ってきたラングの2人に絞られる。ゴールまで20kmを切り、1級山岳ラ・コバティーリャの登りが始まった時点で先頭2名とメイン集団のタイム差は3分30秒に。

メイン集団はカチューシャを先頭に緩斜面を進んでいく。トムイェルテ・スラグテル(オランダ、ラボバンク)とダリオ・カタルド(イタリア、クイックステップ)が均衡を破ってアタックを仕掛けたが、決定力を欠いて吸収。

メイン集団をコントロールするカチューシャメイン集団をコントロールするカチューシャ photo:Unipublic先頭ではゴールまで10kmを残してラングが独走に持ち込むも、頂上まで8kmを切って勾配が増すとペースダウン。ラスト6.5kmでラングが吸収されると、16%の最大勾配ポイントでレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が有力選手の中から先陣を切ってアタックした。

ターラマエの鋭いアタックは直ぐさま引き戻されたが、この攻防によってイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)が早々に脱落。有力選手のアタックが始まると、カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)も集団から姿を消した。

ラスト5kmでマーティンとニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)の従兄弟コンビがアタックを仕掛け、ここからマーティンが独走。ディフェンディングチャンピオンのニーバリが先頭マーティンに追いつき、協力してメイン集団を引き離す。

先頭で1級山岳ラ・コバティーリャに突入したセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット)先頭で1級山岳ラ・コバティーリャに突入したセバスティアン・ラング(ドイツ、オメガファーマ・ロット) photo:Unipublic1級山岳ラ・コバティーリャを先頭で登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)1級山岳ラ・コバティーリャを先頭で登るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) photo:Unipublicメイングループを率いて1級山岳ラ・コバティーリャを登るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)メイングループを率いて1級山岳ラ・コバティーリャを登るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Unipublic


吹き付ける風の中、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)のためにクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がメイン集団のペースを上げると、ここから遂にロドリゲスとミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)が脱落。精彩を欠くマイヨロホのロドリゲスにブレーキがかかった。

1級山岳ラ・コバティーリャ頂上ゴールを制したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)1級山岳ラ・コバティーリャ頂上ゴールを制したダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ) photo:Unipublicラスト2kmを切って先頭ニーバリとマーティンにウィギンズ、フルーム、モレマ、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)が合流。最後はマイヨロホを振り切ったこの6名による勝負に持ち込まれ、ラスト200mで仕掛けたマーティンがモレマを振り切ってゴールした。

登りで積極的にアタックを仕掛け、後続に追いつかれながらもスプリントで優勝を飾ったマーティン。昨年10月のジャパンカップで優勝したアイリッシュクライマーは、ブエルタの1級頂上ゴールでグランツール初勝利を飾った。

マイヨロホに袖を通したバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)マイヨロホに袖を通したバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク) photo:Unipublic「世界最高峰のクライマーが集まる大会の山岳ステージを制した意味は大きい。(第4ステージの)シエラネバダでも3位に入っているし、小集団の勝負に持ち込めば勝機があると思った。とても満足している。この先の山岳ステージでも活躍したい」。

マーティンは水玉の山岳賞ジャージを獲得。総合でも55秒遅れのステージ12位につけており、ガーミン・サーヴェロのエースとして総合上位を目指す。なおマーティンはこれが3度目のグランツール出場。2009年のブエルタは総合53位、昨年のジロ・デ・イタリアは総合57位だった。

最後までペースが上がらず、チームメイトのダニエル・モレーノ(スペイン)とともに50秒遅れでゴールしたロドリゲスは、僅か1秒差でマイヨロホを失った。苦手なタイムトライアルを前にリードを広げる走りが期待されたが、結果は真逆のタイムロス。マイヨロホはオランダ期待のクライマー、モレマの手に渡っている。

前日のステージでタイムを失ったニーバリは、ステージ6位で総合3位に浮上。モレマとのタイム差は9秒であり、翌日のタイムトライアルで総合逆転のチャンスはある。

有力選手の中では最もタイムトライアル能力に秀でたウィギンズは、自身も驚くステージ4位。ウィギンズはレース後「今日はロドリゲスらに対してタイムロスを抑える走りを想定しただけに驚いている。後方で苦しんでいるライバルたちの姿を見て、タイムトライアルモードに切り替えて引き離したんだ。でも自分が本領を発揮するのは明日のタイムトライアルであり、今日のタイムはボーナスのようなもの。フルーミー(フルーム)の働きは素晴らしかったし、これ以上ないほどファンタスティックな結果だ」とコメント。総合首位と1分差の総合13位で、こちらも首位を狙える位置だ。

この日は多くの選手が20分以上遅れてゴール。土井雪広(スキル・シマノ)は16分14秒の集団で今大会2つ目の頂上ゴールを終えた。本人曰く調子は上がっており、「景色を眺めながら楽しい一日になりました」と、元気のよさを見せている。

選手コメントは公式リリース、ならびにチーム公式サイトより。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第9ステージ結果
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)     4h52'14"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)     
3位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)           +03"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)            +04"
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               +07"
6位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)   +11"
7位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)             +12"
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)
9位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック)
10位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)
108位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                  +16'14"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)               37h11'17"
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              +01"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)    +09"
4位 フレデリック・ケシアコフ(スウェーデン、アスタナ)            +18"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)     +27" 
6位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               +35"
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)         +37"
8位 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー、クイックステップ)        +42"
9位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック)
10位 ファンホセ・コーボ(スペイン、ジェオックス・TMC)            +46"
 
12位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)       +55"
13位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)           +1'00"
16位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)            +1'12"
17位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)           +1'17"
18位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)          +1'54"   
19位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)       +2'05"
20位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)       +2'10"
21位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックス・TMC)           +2'18"
30位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)            +4'31"
31位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックス・TMC)           +4'43"
175位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +2h06'28"

ポイント賞(プントス)
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)          74pts
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              62pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)    50pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)   25pts
2位 マッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)   23pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          20pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)             10pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         13pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)          15pts

チーム総合成績
1位 ジェオックス・TMC       111h04'53"
2位 レディオシャック
3位 ラボバンク               +01"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos, Unipublic