8月22日、ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第3ステージがペトレル~トタナ間の163kmで行われ、逃げグループからさらにパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)が単独で逃げて区間優勝。同時に総合リーダーの座にもついた。

逃げグループを引っ張るマルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)逃げグループを引っ張るマルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック) photo:Tour d'Espagne/Graham Watson前日の第2ステージに比べると、レース後半に3級山岳が2つあるため、単純なスプリンターのステージとは言いがたい第3ステージ。最後の3級山岳アルト・デ・ラ・サンタ山頂からゴールまではわずか13kmで、スプリンターにとってはここで集団に残らなくては勝利は無い。

この日もスペインは真夏。35度を超える気温の中、選手たちはスタートしていく。逃げに適したコースプロフィールから、逃げ狙いの選手たちが序盤から動くが、リーダーのダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)を擁するレオパード・トレックのお許しがなかなか出ず、逃げが決まったのは15kmを過ぎてから。

不安定な集団内でクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)が落車不安定な集団内でクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)が落車 photo:Tour d'Espagne/Graham Watson逃げたのは次の5人。シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)、マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)、ルスラン・ピドゴルニー(ウクライナ、ヴァカンソレイユ)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)。

この5人は30km地点を手前に4分の差を稼ぎだすと、70km地点ではその差は9分にまで拡大。メイン集団では登りをこなせるスプリンターの代表格オスカル・フレイレ(スペイン)のためにラボバンクが牽引を開始。ピーター・サガン(スロヴァキア)でステージ優勝と総合リーダー獲得を狙うリクイガス・キャノンデールもこれに加わる。

3級山岳アルト・デ・ラ・サンタで逃げグループを追うチームスカイ勢3級山岳アルト・デ・ラ・サンタで逃げグループを追うチームスカイ勢 photo:Tour d'Espagne/Graham Watsonしかしフランスチャンピオンのシャヴァネルを含む逃げの5人は粘る。この日一つ目の3級山岳、109km地点から始めるアルト・デル・ベロの登り口にリード6分で入ると、ネオプロのエデがハチに刺されて脱落するトラブルがあったものの、山頂を集団から4分30秒のリードで通過。

この頃になると集団のコントロールはレオパード・トレックに戻り、タイム差の縮小がストップ。逃げる4人にステージ勝利の可能性が濃くなってくる。残り30kmで集団が中切れを起こしているうちに、逃げグループは4分のタイム差をキープ。この不安定な集団内でクリストフ・ルメヴェル(フランス、ガーミン・サーヴェロ)が落車したが、後に集団に復帰している。

この日最後の3級山岳アルト・デ・ラ・サンタに入って逃げグループでも集団でも動きが発生。先頭の4人からは山頂を目前にラストラスがアタック。他の3人に数秒先攻して下りに入ると、ここで一気に差を拡大。ゴール地点のトタネまで10kmの地点で、ラストラスは20秒を稼ぎ出す。

独走での勝利を飾ったパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)独走での勝利を飾ったパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター) photo:Tour d'Espagne/Graham Watsonメイン集団でもこの登りでルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)やダビ・デラフエンテ(スペイン、ジェオックスTMC)が飛び出しを図る。登りで高速化した集団からは多くの選手が千切れ、デニス・メンショフ(スロシア、ジェオックスTMC)やウラディミール・カルペツ(ロシア、カチューシャ)、サガンといった選手がメイン集団についていけない。

逃げるラストラスは残り6kmでもその差20秒を維持。3人になった追走グループで引くのは実質シャヴァネル一人。それでも一時は10秒様で詰めることに成功するが、お互いに牽制が入るとその差は再び拡大。残り1kmで15秒差となると、ラストラスの逃げ切りは確定的に。

単独でゴールへやってきたラストラスは天を指差しながらフィニッシュ。今年5月に不慮の事故で亡くなったチームメイトのシャビエル・トンドに捧げる勝利となった。

この日のスタート地点で「僕にとっては毎日がクラシックレースのようなもの。ファラポナとアングリルを除いてはね。毎日トライしてみるよ」と語っていたラストラスはこれがブエルタのステージ3勝目。区間2勝を飾った2002年以来となる勝利だ。同時に総合リーダーの座についてマイヨロホを獲得した。

マイヨロホに袖を通したパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)マイヨロホに袖を通したパブロ・ラストラス(スペイン、モビスター) photo:Tour d'Espagne/Graham Watson15秒遅れの追走グループを制したのはシャヴァネル。地足では決してラストラスに劣らなかったが、アタックのタイミングと展開に翻弄されて勝機を逸した。メイン集団は1分43秒遅れで、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)を先頭にゴール。総合を狙う選手を中心とする40名ほどまでにこのメイン集団は縮小していた。

終盤にかけて集団の前方に姿を見せた土井雪広(日本、スキル・シマノ)は最後の山岳でパンクしたエースのために車輪を渡したため、10分25秒遅れの154位でゴール。総合順位を18分29秒遅れの192位としている。

日々総合リーダーが変動する今年のブエルタ・ア・エスパーニャ。迎える翌第4ステージは早速のシエラネバダ超級山頂ゴール。登坂距離23km、高低差1322mのこの登りは、総合優勝争いの最初の試金石となる。誰がマイヨロホを争う権利を得、誰がそれを失うかに注目だ。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2011第3ステージ結果
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)         3h58'00"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)     +15"       
3位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)
4位 ルスラン・ピドゴルニー(ウクライナ、ヴァカンソレイユ)
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)   +1'43"
6位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ラボバンク) 
7位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)     
8位 フランチェスコ・ガヴァッツィ(イタリア、ランプレ・ISD)
9位 エンリーコ・ガスパロット(イタリア、アスタナ)
10位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)
154位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +10'25"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)            8h25'00"
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)       +20"       
3位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)         +1'08"
4位 ルスラン・ピドゴルニー(ウクライナ、ヴァカンソレイユ)       +1'24"
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)      +1'55" 
6位 マキシム・モンフォール(ベルギー、レオパード・トレック)           
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) +1'59"     
8位 ヴァレリオ・アニョーリ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)   
9位 エロス・カペッキ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
10位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、HTC・ハイロード)    +2'04" 

14位 マルツィオ・ブルセギン(イタリア、モビスター)           +2'09"
19位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)  +2'13"
21位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・サーヴェロ)     +2'20"
23位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           
28位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)           +2'23"
29位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)      +2'24"
35位 ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ・ISD)         +2'27"
40位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)      +2'37"
42位 ブラッドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)
45位 カルロス・サストレ(スペイン、ジェオックスTMC)          +2'58"
75位 デニス・メンショフ(ロシア、ジェオックスTMC)           +4'01"
108位 ピーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)    +7'44" 
192位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)                 +18'29"

ポイント賞(プントス)
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)          28pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)    26pts
3位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)   25pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)          3pts
2位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)      3pts
3位 ポール・マルテンス(ドイツ、ラボバンク)           3pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 パブロ・ラストラス(スペイン、モビスター)          3pts
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)    8pts
3位 マルケル・イリサール(スペイン、レディオシャック)      12pts

チーム総合成績
1位 モビスター         24h49'13"
2位 クイックステップ        +16"
3位 レディオシャック        +30"



text:Yufta Omata
photo:Cor Vos, Unipublic

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