2011ツールは"パッサージュ・デュ・ゴア"から長い旅に出る。ヴァンデ県の西端に位置するノワールムーティエ島にあるこの「海の道」は、干潮時にだけ海の中から姿を現す。全長4.5kmのこのぬかるんだ道は1999年ツールにも登場している。

北西フランスの海沿いはカキで名高い北西フランスの海沿いはカキで名高い photo:Makoto Ayanoこの海の道の付け根にある小さな村に用意されたヴィラージュでは、この地方名物の生牡蠣(かき)が振る舞われた。招待客に混じってプレスもこの海の幸の恩恵に授かれるので、さっそく「いただきます」。レモン汁をひとふりしてフォークですする透き通った牡蠣は、冷たい海のこの地方ならではの味。このヴィラージュも海の浅瀬に面していて、風に乗って潮の香りがただよっている。

地元ヴァンデのチーム、ユーロップカーは黒いつや消しのコルナゴと黒いソックスで登場してちょっと迫力が増した印象だ。

ドクターも登場ドクターも登場 photo:Makoto Ayanoスポンサーとしてのユーロップカー社は他社より安めの価格設定のレンタカー会社だけど、チームジャージの緑はコーポレートカラーよりも濃い緑で、ちょっと高級感を演出したいという意図もあるのだろう。

海の道の終点付近でミニ・セレモニーが行われるということで駐車スペース不足が懸念されたので仮スタートの1時間前にコースインする。まずは橋を渡り、ノワールムーティエ島の一本道を通る。ここは個人タイムトライアルで幕開けした2005年のツールでアームストロングがウルリッヒを追いぬいてしまった道。当時はパッサージュ・デュ・ゴアは通らなかった。

1999年以来のパッサージュ・デュ・ゴアへと入る。満潮時には海水が路面を洗うこの道は、この日は干潮から時間が経っているのか、夏の太陽に照らされて乾ききっていた。12年前にカメラを構えた、なかほどにある見張り塔を見つけたので、その脇の砂地にプレスカーを停め、よじ登る。

電話代付き自転車で登場するクラシックなムッシューたち電話代付き自転車で登場するクラシックなムッシューたち photo:Makoto Ayano地元スタートで期待も大きいトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)地元スタートで期待も大きいトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoクマ(?)もツール・ド・フランスを歓迎クマ(?)もツール・ド・フランスを歓迎 photo:Makoto Ayano


12年前ここで撮影していたら、濡れた路面に滑った大集団の選手たちが連鎖的に落車を起こした。そのときの写真はhref="http://www.cyclowired.jp/?q=node/25691">こちらで紹介しているが、そのとき目の前で起こった惨劇は普通の落車と違って、道路から磯の岩場に滑って飛び出した選手たちもいて、その痛さを想像するとちょっと見ていられない種類の落車だった。でも今回は路面は乾いているし、パレード走行なので心配なし。

干潮で現れた道パッサージュ・デュ・ゴアを走りぬける集団干潮で現れた道パッサージュ・デュ・ゴアを走りぬける集団 photo:Makoto Ayano
通過する選手たちを撮影し、後追いでスタートセレモニーに向かうが、プロトンの隊列最後尾に駐車して、集団のいるところまで走って向かううちにセレモニーは終了してしまった。かなりあっさりと始まった感のあるグランデパールだった。

逃げグループで走るペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)逃げグループで走るペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー) photo:Makoto Ayanoヴァンデ県の主役はやはりチームユーロップカーだ。この郷土に根ざしたチームを応援する地元の観客たちが沿道に目立つ。一番人気は言うまでもなくトマ・ヴォクレールだ。白地に赤のマークのヴァンデの旗とトリコロールを振りかざして楽しむなかを走り抜けるプロトン。

リエーベ・ヴェストラ(オランダ、ヴァカンソレイユ・DCM)、ジェレミー・ロワ(フランス、フランセーズデジュー)、ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)の3人を逃がしたプロトンは後半までタイム差を保ったままリラックスして走る。しかし、3人が捕まってからの緊張感と混乱は、いつもどおりのツール第1ステージのそれだった。

トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)のファントマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)のファン photo:Makoto Ayanoヴァンデ県の田舎道は道幅が狭い上に路肩にも余裕が無い。路肩がすぐに落ち込んでいるために観客がコース上に出て応援していた?

ラスト10kmを切って女性ファンとマキシム・イグリンスキー(アスタナ)が接触して、集団の選手たちはドミノ倒しのように落車した。そしてゴールが近づいてからもう一度落車が発生。ふたつの落車の影響を受けたのは約80人の選手たち。その数も12年前のパッサージュ・デュ・ゴアステージの75人とほぼ同じだ。

2回目のアンディ・シュレク(レオパード・トレック)、ブラドレー・ウィギンズ(チームスカイ)を含む落車はゴール前3km以内の救済対象となり、集団とのタイム差はつかなかったが、最初の落車は救済処置対象外。ゴール順とは食い違いができるため、ゴール地点は混乱した。

アルデンヌ・クラシックを勝つように勝った「ファースト・フィル」

ベルギーチャンピオンジャージにキスをするフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)ベルギーチャンピオンジャージにキスをするフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Makoto Ayanoユーロップカー勢の集団コントロールはTV観戦する地元ファンを大いに沸かせた。その動きはチームのアピールにはなったが、ヴォクレールのためのアシストとしてはあまり意味が無い動きだったかもしれない。結果としてはフィリップ・ジルベール必勝体制のオメガファーマ勢の助けにもなった。

余裕を持って前のポジションにつけて登りに入ったジルベール。ラスト500mのカンチェラーラのアタックにも冷静に対処して、まるでアルデンヌクラシックの再現ように余裕を持って勝利した。
ツールでのステージ優勝は意外にも初めてのことだが、昨年来のジルベールの快進撃は、まさにすべてを手に入れるかのような勢いがある。

マイヨ・ジョーヌに袖を通したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)マイヨ・ジョーヌに袖を通したフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット) photo:Makoto Ayanoアルデンヌ3連戦でハットトリックの偉業を達成したジルベールにとって、今年もっとも大きな勝利は子供の頃からの夢だったリエージュ・バストーニュ・リエージュを制したことだった。しかし、ツールでのステージ優勝とマイヨジョーヌ獲得は「選手なら誰もが夢見ること」。たとえ、それがたった一日だったとしても。

ここまでを振り返るとジルベールは4月13日以降に出場した8つのレースのうち、7つに優勝している。勝てなかったのは2位に終わった個人タイムトライアルのベルギーナショナル選手権のみ。これは記録にはならないが、ちょっとすごいことだ。

今回のツールでステージ4勝できるのではないかと言われている"Fast Phil"ジルベール。
パリでのマイヨヴェールの可能性については、ベルギー在住の友人ロビー・マキュアンと交わした言葉をもって今の気持ちを表した。

3秒遅れの2位に入ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)3秒遅れの2位に入ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Makoto Ayano「ツールに出たらまず1勝すれば夢が叶ったことになる。その後、調子をみて2つ3つと勝てるなら、その結果としてマイヨヴェールが見えてくるもの。最初から狙って追うものじゃない。マキュアンはそう話していた」。

ジルベールのオメガファーマ・ロットはチームタイムトライアルの準備をほとんどしていないと言う。だから2日目にしてマイヨジョーヌを失う可能性は高い。しかし、第3ステージはミュール・ド・ブルターニュに駆け上がる、ジルベールにとって理想的ステージ。だから第2ステージでマイヨを失っても第4ステージで再び着るだろうことはすでに織り込み済みだ。

初日から追い詰められたコンタドール

落車で傷ついたマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)落車で傷ついたマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Makoto Ayanoナーバスな展開に落車で混乱することが多いツール初日。今年も例年ではなかった。

ステージ優勝狙いの選手も多く含まれた。登りフィニッシュに意気込んでいたマシュー・ゴス(オーストラリア、HTCハイロード)は前輪をすくわれて落車。幸い深刻な怪我は少なかったようだが、血を流し、ジャージを汚した選手たちが続々と帰ってきた。ツール初日の悪夢のジンクス、そしてパッサージュ・デュ・ゴアの呪い?

1999年ツールのパッサージュ・デュ・ゴアでは、落車によって当時優勝候補だったアレックス・ツェーレ(スイス)が6分3秒のタイムを失い、優勝争いから脱落。シャンゼリゼまでにアームストロングにタイム差を広げられ、7分37秒差で3位の表彰台に上っている。

落車によって1分20秒を失ったアルベルト・コンタドール(サクソバンク)。2位カデル・エヴァンスに対して1分17秒、アンディ・シュレク(レオパード・トレック)に対しては1分14秒のタイムロスだ。

落車の影響で1分20秒を失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク)落車の影響で1分20秒を失ったアルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク) photo:Makoto Ayano昨年のツールをアンディに対して39秒差で制したことを考えると、この差はちょっと苦しい差だ。初日にしていきなり大きなハンデを背負うことになった。まだ先が長いとは言え、ツール制覇には黄信号だ。そのぶん、山岳で攻撃に転じるコンタドールの姿が見られることになるだろう。

コンタドールは言う「今日は混乱の日だった。張り詰めた緊張のなかで常に前を走ろうとしていたけれど、落車があったとき先頭付近にいたのに目の前で選手が重なりあった。逃げ場はなかった。集団はすでに遠くに行ってしまっていた。

これがレースだ。今日僕に起こったことは明日誰にでも起こること。ツールはまだ先が長い。モチベーションを切らさないようにしないと。調子の良さを感じたことは良かった。取り返すのには苦労しそうだけど...」。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)のベルギーカラーのキャニオンフィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)のベルギーカラーのキャニオン photo:Makoto Ayano総合優勝候補が初日に遅れる事態となった過去の例では、1989年のペドロ・デルガド(スペイン、当時レイノルズ)の「大遅刻」がある。プロローグのスタート地点に2分40秒遅れて現れた山岳スペシャリストのデルガドは、翌日の46kmのチームタイムトライアルでも遅れを喫してグレッグ・レモン(アメリカ)に対して3分41秒差を背負い込むことになる。

デルガドは得意の山岳でアタックを繰り返してそのタイムを取り返すためのレースを必死に展開したが、パリ・シャンゼリゼではレモンに3分34秒で3位に終わっている。日本でもNHKの特集が放映されていたため、記憶にあるファンも多いことだろう。

ひどく落車したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)ひどく落車したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Makoto Ayanoコンタドールがアンディと僅差で終えた2010ツールを振り返れば、ことの深刻さは明らか。コンタドール以外の総合狙いの選手たちでタイム差を喰らったのは、おもに...

+1分20秒:サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)、バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ラボバンク)

+1分55秒:トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)、 ライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・サーヴェロ)、ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)、ジェローム・コッペル(フランス、ソール・ソジャサン)、ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、リッチー・ポルト(オーストラリア、サクソバンク)、クリストフ・ケルヌ(フランス、ユーロップカー)

+2分10秒:マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)
+2分25秒:サンディ・カザール(フランス、FDJ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、モビスター)

チームで難を逃れることができたのは、総合狙いが可能なメンバーを揃えるレディオシャック。アイマル・スベルディア(スペイン)は影響を受けたが、ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア)、クリストファー・ホーナー(アメリカ)、アンドレアス・クレーデン(ドイツ)、そしてリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ)が前の集団でゴールし、総合争いで豊富なコマを残すことになった。

一方でチームで失望は初出場のオランダチーム、ヴァカンソレイユDCM。多くの選手が落車に巻き込まれ、好調のトーマス・デヘント(ベルギー)は鎖骨骨折の疑いがあるということでレントゲン検査のためゴール後病院へ直行した。

photo&text:Makoto.AYANO
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