超級山岳を含む223kmの難関山岳コースで行なわれたツール・ド・スイス第7ステージで、トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が独走逃げ切り。アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)の追撃を振り切る価値ある勝利を掴んだ。

第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.ch3つのカテゴリー山岳を越える第7ステージは今大会最難関の「クイーンステージ」。標高2383mの超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフを越え、最後はオーストリアの1級山岳セルファウスにゴールする。

曇り空が広がるスイス北部の山岳地帯曇り空が広がるスイス北部の山岳地帯 photo:Cor Vosコース全長は今大会最長の223kmで、クライマー系選手にとってはこの第7ステージが攻撃を仕掛ける最後のチャンスとなる。特に個人タイムトライアルでタイムを失うと目されるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)にとっては、総合リードを広げる重要な局面だ。

レースは序盤からアタックの応酬。Aシュレクを含む逃げグループが早速形成されたが、総合16位(7分51秒遅れ)のブラニスラウ・サモイラウ(ベラルーシ、モビスター)が入っていたため、ランプレ・ISDはこれを封じ込める。

標高2383mの超級山岳フリュエラ峠でメイン集団をコントロールするラボバンク標高2383mの超級山岳フリュエラ峠でメイン集団をコントロールするラボバンク photo:Cor Vosすでに総合で遅れ、ステージ優勝を狙う選手たちが挙ってアタック。続いて超級山岳フリュエラ峠でAシュレクを含む17名の逃げグループが形成された。

逃げメンバーは実に豪華。Aシュレクの他、総合17位(9分53秒遅れ)のヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)、クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)が入る。ヴァカンソレイユ・DCMはデヘント、ラグティン、マルカートの3名を送り込んだ。

逃げグループを率いるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)逃げグループを率いるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vos17名の大きな先頭グループは最大7分のリードを得て、曇り空の山岳地帯を逃げる。一方のメイン集団は、総合2位と3位を擁するラボバンクが積極的にコントロール。同じく総合逆転を狙うレディオシャックもこれに加わった。

超級山岳フリュエラ峠と2級山岳ノルベルツホーフはいずれもAシュレクが先頭通過。やがて2級山岳の下り区間では逃げグループ内のアタックが続発し、人数を揃えるヴァカンソレイユ・DCMが波状攻撃でデヘントの独走に繋げる。ゴールまで25kmを残してデヘントが独走を開始した。メイン集団とのタイム差が一向に6分を切らない。

興奮する悪魔おじさんと冷静なトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)興奮する悪魔おじさんと冷静なトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vosデヘントは追走グループから1分のリードを築き、最後の1級山岳セルファウスに突入する。登坂距離7.2km・平均勾配7%の登りを、デヘントはリズミカルなペダリングで進んでいく。後方では、ゴールまで9kmを残してAシュレクの単独追走が始まった。

しかしデヘントのペースは落ちない。デヘントは登り始めでの1分リードを有効に使い、ペースを崩さずに1級山岳セルファウスを登頂成功。最終的にAシュレクを35秒振り切り、余裕のガッツポーズでゴールに飛び込んだ。

デヘントを追走するアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)デヘントを追走するアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:Cor Vosデヘントはベルギー生まれの24歳。今年トップスポート・フラーンデレンからヴァカンソレイユ・DCMに移籍し、初戦のツアー・ダウンアンダー第4ステージで逃げ切って2位。パリ〜ニースではステージ優勝を飾るとともに、リーダージャージを3日間着用した。

この半シーズンで、山をこなせる逃げのスペシャリストとしての名声を得たデヘント。「ゴールまで25kmを残してアタックした。最後の登りに入る時点で1分のリードがあったけど、逃げ切れたことに驚いている。パリ〜ニースでのステージ優勝と並ぶ大きな勝利だ」。ワールドツアーレース2勝目に本人も驚いている。

独走でゴールに飛び込むトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)独走でゴールに飛び込むトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vos一方、総合成績が懸かったメイン集団の闘いは、総合12位のトム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)のアタックを切っ掛けに活発化する。一時的に総合3位のステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)ら3名が飛び出すも、イエロージャージを含むメイン集団はこれを封じる。

ライバルたちのアタックを、ライバルたちの動きを有効に利用して封じ込めるクネゴ。バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)やフランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)のアタックも功を奏さず、クネゴはライバルたちをスプリントで下してゴールした。

優勝したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を祝福するアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)優勝したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)を祝福するアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック) photo:Cor Vos近年にないほど絞れているクネゴは、モレマから1分23秒、クルイスウィックから1分36秒のリードを守り、イエロージャージをキープした。Fシュレクとのタイム差は1分41秒、リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)とのタイム差は1分59秒。

総合リーダーとして安定感ある走りを見せたクネゴは「チームメイトのおかげで力を温存しながら最後の登りへ。ライバルたちのアタックに反応することに集中し、状況をコントロールした。ゴールラインでは全力でスプリント。ライバルたちを引き離せず、タイム差を広げることができなくて残念だ」とコメント。最終個人タイムトライアルでは、イエロージャージを懸けた熱い闘いが繰り広げられることになりそうだ。

選手コメントはレース公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。


ツール・ド・スイス2011第7ステージ結果
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)      5h38'42"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)      +35"
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)             +48"
4位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)  +51"
5位 アルベルト・ロサダ(スペイン、カチューシャ)             +54"
6位 セルゲイ・ラグティン(ウズベキスタン、ヴァカンソレイユ・DCM)   +1'33"
7位 ヤン・バケランツ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)       +1'34"
8位 マルコ・マルカート(イタリア、ヴァカンソレイユ・DCM)      +2'30"
9位 ジョージ・ヒンカピー(アメリカ、BMCレーシングチーム)
10位 マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク・サンガード)

個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)         27h09'49"
2位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              +1'23"
3位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)       +1'36"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)    +1'41"
5位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)     +1'59"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)     +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)           +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)         +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)       +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)   +3'22"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)

中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
レオパード・トレック

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

最新ニュース(全ジャンル)