今年から一発勝負となった栂池ヒルクライム。2010年に負った大怪我からカムバックした増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が制した。「以前よりも強くなったと思います」―増田は精神面でも強くなったことを強調した。

麓の集落をスタートしていく選手たち麓の集落をスタートしていく選手たち photo:Hideaki.TAKAGI

スタートアタックは伊藤翔吾と斉藤亮(京都MASSA-FOCUS-SUPER B)スタートアタックは伊藤翔吾と斉藤亮(京都MASSA-FOCUS-SUPER B) photo:Hideaki.TAKAGI4km地点、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)ら17人の先頭集団4km地点、狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)ら17人の先頭集団 photo:Hideaki.TAKAGI8km地点、先頭を走る狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)と2番手の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)8km地点、先頭を走る狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)と2番手の増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGI10km地点、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が2度目のアタックを成功させる10km地点、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が2度目のアタックを成功させる photo:Hideaki.TAKAGI12km地点、単独でゴールを目指す増田成幸(宇都宮ブリッツェン)12km地点、単独でゴールを目指す増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGIコースレコードで優勝の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)コースレコードで優勝の増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki.TAKAGIF1/2トップの西加南子(LUMINARIA)F1/2トップの西加南子(LUMINARIA) photo:Hideaki.TAKAGIJPT表彰JPT表彰 photo:Hideaki.TAKAGI昨年までの栂池ヒルクライムは、実業団の個人TTの位置づけだったが、今年から純粋なヒルクライムレースとなった。もちろんフルコースの1本のみのレース。17.1kmで標高差1200mのコースは、序盤の急勾配、その後の平坦、そして中盤以降のおよそ一定勾配の区間に分かれ、ペース配分の難しいものだ。
今までのコースレコードは、2009年大会予選時の狩野智也(現・チームブリヂストン・アンカー)が出した48分22秒8。昨年は狩野が同50秒4、競った森本誠(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)は同56秒9だった。今年は一発決勝のマスドスタートのレースなので、展開によっては記録更新が見込まれた。

純粋なヒルクライムレースとなった栂池
ここ数年は全日本選手権個人TTと日程が重なるが、やはり栂池にはヒルクライムのスペシャリストたちが集まる。この栂池で3連覇中の狩野、昨年2位の森本、1週間前の西日本クラシックなどで復活をアピールした増田、08年TOJの富士山ステージ覇者、ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)らだ。畑中勇介・青柳憲輝(シマノレーシング)もポテンシャルの高さで注目だ。

市民レース参加者も入れると約1000人の参加者がスタート地点にクラス別に並ぶ。朝9時にP1クラスがスタート。すぐに伊藤翔吾と斉藤亮(京都MASSA-FOCUS-SUPER B)が先頭に立つ。そして秋山尚徳(京都岩井商会GANWELL RACING)、丸山厚(京都MASSA-FOCUS-SUPER B)も先頭に立ちペースを上げる。1km地点で抜け出したのは狩野、秋山、丸山の3人。10秒差の集団は鈴木譲(シマノレーシング)が引く。

2km地点で集団はひとつになるが、ハイペースのため先頭集団が形成されだす。3km地点の旅館街は山本聖吾(イナーメ・アイランド信濃山形-JPT)が先頭で入り、その後は狩野が先頭でペースを作る。先頭の狩野に鈴木と秋山が加わってハイペースを維持する。そのため先頭は17人になる。

中盤から3人が抜け出す
6km地点で狩野、増田、ガロッファロの3人が17人の集団から徐々に抜け出す。アタックというよりは踏み込んだハイペースにほかが付いていけない。抜け出した3人では狩野が先頭でペースを維持する。しだいに狩野だけが先行し、増田とガロッファロが差をつけられる。その差は最大で10秒ほど。

厳しい表情のガロッファロに先頭交代を促した増田は、一呼吸置いてからペースを上げてガロッファロを置き去りにする。増田は15秒ほど先の狩野を目指して上る。9km地点で狩野に追いついた増田はアタックをかけるが狩野に合わされる。ふたたび狩野が増田を引き連れ先頭で上る。

増田がコースレコードで優勝
10km地点で後方からスピード差をつけて増田が再びアタックすると、狩野は一気に離れていく。その差はすぐに30秒ほどになる。増田はたびたび後方をチェックしながらゴールを目指す。狩野はその後30秒ほどの差を維持したまま追走。結局その差を保った増田が優勝。48分20秒の優勝タイムは、狩野が持つコースレコードを2秒8更新。公式戦初勝利の増田は、コースレコードを樹立して日本のレース界に完全復帰した。

優勝した増田は力はもちろんだがレース勘も衰えていなかった。2人のライバルに対し、まずはガロッファロを攻略し、そして自分のペースを守って狩野に追いつき、2度のアタックで勝利を手中にした。いっぽうの狩野は、自ら先頭でレースを作ることを貫き通した。狩野もガロッファロも、切れてからも大崩れすることなくゴールしているのは第一人者ならではだ。


各選手のコメント

優勝の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)「自転車トレーニングは2月末、30分から始めた」
「昨年10月下旬、怪我して入院しているときに栗村監督から連絡をもらい今に至っている。入院中だった自分を採用することを、推してくれたと聞いている。今まで怪我してからもあきらめずにやってきたことが報われた。本当に嬉しくて、ゴール後に涙が出てきた。自転車を続けてきて良かったと思った」
「年が明けてからは1日7、8時間のリハビリを続けてきた。基礎トレーニングであって、有酸素運動ではなかった。自転車に乗るようになったのは2月末からで、30分から始めた。今回、タイムを見て前よりも強くなっているのではと思える。栂池はタイムが指標になるのでそれを実感する。コースレコードで狩野さんに勝てたことは嬉しいし意義のあることと思う。まだ腰は痛く体は完全には戻っていないが、運動能力は上がっていると思う」
「ブリッツェンはいいチームで、トレーニングもみんなで切磋琢磨してやっている。そのおかげで今、走れている。応援してくれる人もたくさんいて、やりがいあるしモチベーションも保てる。お世話になった人たちにもっと恩返しをしたい」

2位に終わった日本の山岳王・狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)
「増田が強かった。コースレコードを破られたことは、新たな目標ができた」
「今日はいつもの自分の走りをした。先頭を引きレース展開を自分で作っていくことが自分の考えるレース。そのために勝てないことがあるかもしれないが、自分はそれを貫きたい。昨年の森本さん、そして今日の秋山や鈴木譲は前へ出て行く動きでいい走りだったと思う」
「今年は海外遠征続きで実際は体調が上がっていないが、それはほかの選手も同じ。出るレースでベストを尽くしたい」

3位のヴィンツェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)
「今日のレースは勝ちたかった。3人になった中盤にものすごく苦しくなり、そのときのペースについていけず遅れてしまった。その後に持ち直し自分のペースで上れた」
「翌々日にイタリアへ2ヵ月半ぶりに帰国してイタリア選手権に出る。3歳の息子に会えるのが楽しみ。次はツール・ド・北海道で頑張りたい」


結果
P1
1位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)48分20秒
2位 狩野智也(チームブリヂストン・アンカー)+28秒
3位 ヴィンツェンツォ・ガロッファロ(マトリックスパワータグ)+2分17秒
4位 畑中勇介(シマノレーシング)+2分29秒
5位 鈴木譲(シマノレーシング)+2分32秒 
6位 矢部周作(パッソ・ディ・シルベスト)+2分36秒
7位 乾友行(竹芝サイクルレーシングJPT)+2分40秒
8位 平林昌樹(湘南ベルマーレ)+2分50秒
9位 斉藤亮(京都MASSA-FOCUS-SUPER B)+3分02秒
10位 屋部佳伸(チバポンズ川口農園cyclowired)+3分15秒

F1/2
1位 西加南子(LUMINARIA)1時間07分26秒
2位 橋本みどり(なるしまフレンド)+59秒
3位 野中優子(TEAM YOU CAN)+4分29秒

E1
1位 山形昌士(CLUB viento)53分57秒
2位 大塚拳(FUKADAまじりんぐ)
3位 足立智弘(クラブGiro)
4位 岡泰誠(spacebikes.com)+01秒
5位 細木郁生(foxhole)+03秒
6位 佐々木英雄(Tacurino.net)+49秒

E2
1位 堀孝明(ブラウ・ブリッツェン)53分24秒
2位 河合玄太(リベルタスTOCHIGI BICYCLE CLUB)+57秒
3位 山口博久(ACQUA TAMA)+1分49秒
4位 山中健治(ナカガワAS.K'デザイン)+3分02秒
5位 茂木一輝(ラヴニールあづみの)+3分19秒
6位 アンディ・ウッド(スミタ・ラバネロ)+4分03秒

E3
1位 兼子博昭(スワコレーシングチーム)53分32秒
2位 平間豊典(イナーメ・アイランド信濃山形)+06秒
3位 岩井航太(立教大学自転車競技部)+1分33秒
4位 入倉健(チバポンズ川口農園)+1分38秒
5位 小山内健太(CLUB SENSATIONS)+1分50秒
6位 雨澤毅明(ブラウ・ブリッツェン)+2分20秒

photo&text:高木秀彰

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