ツール・ド・シンカラ第4ステージは中島康晴(愛三工業レーシングチーム)が4人の先頭集団に入り、そこから逃げ切り優勝を決め、2009年の熊本国際ロードレース以来となる国際レース2勝目を挙げた。また総合順位はトップから7分24秒差、UCIポイント圏内である8位から12秒差の10位にランクアップしている。

ステージ優勝を喜ぶ中島康晴(愛三工業レーシングチーム)ステージ優勝を喜ぶ中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanaka

ホテルからスタート地点まで名物の馬車と一緒にパレード走行ホテルからスタート地点まで名物の馬車と一緒にパレード走行 (c) Sonoko Tanaka得意な下りで仕掛けた中島康晴

59kmという短い距離で争われたツール・ド・シンカラ第4ステージ。スタート直後に単独でアタックをかけたのはイラン、アザド大学のアッバース・サイディ・タンハだった。
彼のあとを真っ先に追ったのが、チェン・キン・ル(香港ナショナルチーム)。そして中島康晴とロガン・カルデール(オーストラリア、プランB)の下りが得意な2選手が、スタート後6kmの下りを利用してアタックをかけ、10km地点で中島ら3選手がタンハに合流。4人の先頭集団が形成された。

集団とのタイム差は1分半前後でレースは進んでいく。集団ではトレンガヌ・プロアジアなどスプリンター擁するチーム4人の逃げグループで走る中島康晴(愛三工業レーシングチーム)4人の逃げグループで走る中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanakaがゴールスプリントの展開に持ち込むべくコントロールするが、リーダーチームであるアザド大学は加わらなかったこともあり、集団のペースは上がらず、4人の逃げが決定的となる。


必ず勝つ、そう信じて挑んだゴールスプリント

中島が逃げ切りを意識したのは、残り20km地点で1分20秒だったタイム差が、残り15km地点で1分50秒と開いたときだったと言う。4人の先頭集団だったが、アザド大学の選手は終始付き位置でローテーションには加わらず。


先頭でゴールラインをめざす中島康晴(愛三工業レーシングチーム)先頭でゴールラインをめざす中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanaka「アザド大学の選手がいるからこそ逃げが容認されたし、昨日までの働きがあって、彼はいまのポジションがあるので、ローテーションに加わらないことを悪くは思いませんでした。ただ彼がいつアタックをかけてくるのかと警戒していましたね。あと残りの3人はアザド大学には負けたくないという暗黙の共通意識があったと思います。だから協力して先頭を回し続けました。イランがアタックをかけたら勝てないかも…と思うこともありましたが、レースは何が起こるかわからないし、そう考えてはいけないと思って、勝ちをめざすことに専念したんです」。

そして、ゴールに向かう狭く曲がりくねった道で先に仕掛けたのは香港のチェン・キン・ル。それをイランのタンハが追い、それに中島が続いた。「残り500mでタンハが前に出るようなサインを出したので、自分が前に出て香港の選手を先頭でゴールラインをめざす中島康晴(愛三工業レーシングチーム)先頭でゴールラインをめざす中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanaka追いました。これまでの走りを見ていて、彼がカーブが得意ではないことがわかっていたので、ゴール前最後のカーブで自分がインを攻めて彼を交わし、あとはただただゴールをめざしてスプリントをしました」。


ヨーロッパからアジアへ、経験を積み重ねる

集団スプリントなら綾部、逃げが決まるなら、得意の下り区間を使って中島が逃げよう、そんな作戦があったと言う。その作戦が見事にハマったレースだった。エキップアサダからチームNIPPOとヨーロッパでのレースを重ねてきた中島、今季より主戦場がアジアとなったが、ヨーロッパで培ったという勝ちにいくための勝負勘が生かされたステージだった。

「去年はUCIレースで勝てなかったので、ようやく勝てたことをすごく嬉しく思っています。熊野での愛三工業の活躍もそうですし、かつてのチームメイトたちが多くの好成績を出しているので、自分も勝ちたいという気持ちでいっぱいでした。

スタート前に別府監督と、もし逃げが決まってそれに乗ったら絶対に勝つように、と言われていました。それに応えられたことも嬉しいですね。逃げに乗りやすい状況を作ってくれたチームメイトにも、支えてくれているスタッフにも感謝しています」とコメント。

ステージ優勝を喜ぶ中島康晴と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)ステージ優勝を喜ぶ中島康晴と綾部勇成(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanakaゴール後、笑顔でチームメイトを迎えるステージウィナー中島康晴(愛三工業レーシングチーム)ゴール後、笑顔でチームメイトを迎えるステージウィナー中島康晴(愛三工業レーシングチーム) (c) Sonoko Tanaka

日に日にチームワークが高まる愛三工業レーシングチーム

レースの序盤はチームがうまく機能せず、もどかしい雰囲気のなかスタートした愛三工業レーシングチームだったが、少しずつ新しい編成でのチームやインドネシアの環境が馴染み、レースの折り返しとなる第4ステージで、それが形となって現れてきた。
ゴール後に満面の笑みを見せるゴール後に満面の笑みを見せる (c) Sonoko Tanaka
「いいキッカケができれば、うまく回り出すと思う」と話していた綾部キャプテン。レース日数は折り返しを過ぎたが、ラスト2日が1日2ステージとなるため、残りのステージはまだ5つ残されている。

「熊野でいい結果が出ているから、そのメンバーがいないと勝てない、そう思われたくなかったんです」ステージ優勝の喜びのコメントの最後にそう付け加えた中島。

ゴール地点は深い谷間にあるため、日照時間はわずか3時間しかないが、太陽の光が表彰を待つ彼の笑顔を照らし始めた。ようやく勝ててまずはホッとした、という愛三工業。今日の結果に満足することなく、明日からもさらにいいレースを見せてくれるだろう。


名瀑の前に設置された表彰台名瀑の前に設置された表彰台 (c) Sonoko Tanakaステージ順位
1位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム) 1h10'25"
2位 アッバース・サイディ・タンハ(イラン、アザド大学)
3位 チェン・キン・ル(香港、香港ナショナルチーム)
4位 ロガン・カルデール(オーストラリア、プランB)+06"
5位 チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)+1'43"
6位 綾部勇成(愛三工業レーシングチーム)
7位 モハマド・ハリフ・サレー(マレーシア、トレンガヌ・プロアジア)
8位 バムバン・サルヤディ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)
9位 フェリナント(インドネシア、ユナイテッドバイクケンカナ・マラ)
10位 ダビッド・ファンエード(オランダ、グローバルサイクリング)

総合順位
1位 アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)8h21'51"
2位 ラヒン・エマミ(イラン、アザド大学)+06"
3位 ゴラコール・ポウルセイディ(イラン、アザド大学)+1'48"
4位 チョイ・キー・ホー(香港、香港ナショナルチーム)+5'25"
5位 ボッシュ・マント・ベルケン(オランダ、グローバルサイクリング)+6'14"
6位 アガング・アリシャバナ(インドネシア、プリマウタマ)+6'53"
7位 シェリー・アリスタヤ(インドネシア、ポリゴンスイートナイス)+7'12"
8位 ハリ・フィティリナント(インドネシア、プリマウタマ)
9位 ラン・アリエハーン・ヒルマント(インドネシア、プリマウタマ)+7'19"
10位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)+7'24"

チーム総合首位
アザド大学

ポイント賞
チャン・ジェ・ジャン(韓国、トレンガヌ・プロアジア)

山岳賞
アミール・ザルガリ(イラン、アザド大学)

photo&text Sonoko Tanaka