ジロ・デ・イタリア閉幕の1週間後、いよいよ7月のツール・ド・フランスに向けた動きが本格化する。昨年からツールと同じA.S.O.の主催に変更された第63回クリテリウム・ドゥ・ドーフィネが6月5日から12日まで、ドーフィネ地方を舞台に行なわれる。多くのマイヨジョーヌ候補の他、新城幸也(ユーロップカー)が出場予定だ。

マイヨジョーヌ争いの鍵は最終山岳3連戦

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011コース全体図クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2011コース全体図 image:A.S.O.1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞のドーフィネ・リベレ社が運営していたドーフィネ・リベレ。フランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)を舞台にした8日間のステージレースだ。

正式名称はクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ。昨年ツールと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)主催に変更され、レースの規模がアップした。

第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.「ミニ・ツール」と呼ばれるほど内容の濃い8日間で、プロローグから個人タイムトライアル、そして頂上ゴールまで、様々なコースレイアウトが詰め込まれている。今年は山岳ステージの比重が高いのが特徴だ。

第5ステージ・コースプロフィール第5ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.初日はローヌ=アルプ地域圏サヴォワ県にある山間の街サン・ジャン・ド・モーリエンヌでのプロローグ(短距離個人TT)。コース全長は5.4kmで、スタート後すぐに登場する平均勾配5%の短い4級山岳以外はフラットだ。

第6ステージ・コースプロフィール第6ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.短距離独走力に長けたプロローグハンターに渡ったマイヨジョーヌは、2日目の2級山岳サン・ピエール・ド・シャルトルーズの頂上ゴールで早速オールラウンダーの手に渡る。カテゴリー山岳が連続するアップダウンコースの先に待つサン・ピエール・ド・シャルトルーズは登坂距離7.4km・平均勾配4.8%だ。

第7ステージ・コースプロフィール第7ステージ・コースプロフィール image:A.S.O.今年はパンチャーやクライマー向きのコースが多く設定されている。第2ステージは一見フラットコースだが、4級山岳が4つ登場。最後はリヨンを見下ろす丘の町クロワ・ルースに向かって平均勾配4.8%の登りを駆け上がる。伝統的に絹織物の街として知られるクロワ・ルースは4級山岳に指定されており、スプリンター向きとは言えない。

「A.S.O.主催のツール前哨戦らしさ」が全面に出ているのが、第3ステージの個人TTだ。コースはグルノーブルを中心とした起伏のある42.5km。なんと、今年のツール第20ステージ・個人TTとコースが全く同じだ。つまりマイヨジョーヌを狙う選手にとって、6週間後の実戦に向けた最高の予行演習になる。

今大会唯一と言えるスプリンター向きのフラットな第4ステージを経て、レースはクライマックスに向けてフレンチ・アルプスに分け入っていく。頂上ゴール3連戦の口火を切るのが、第5ステージの2級山岳レ・ジェ(登坂距離10.7km・平均勾配4.7%)頂上ゴール。ここから徐々にマイヨジョーヌ候補は絞られていく。

今大会最難関とされる第6ステージは、レ・ジェからル・コレ・ダルヴァールまでの192.5km。合計6つのカテゴリー山岳が設定されており、しかも終盤にかけて1級山岳と超級山岳が連続する。ゴール39km手前の1級山岳グラン・クシュロン峠は登坂距離が16.2kmに及ぶ難関峠。最後の超級山岳ダルヴァール峠は登坂距離11.2km・平均勾配8.4%だ。

最終日の第7ステージは117.5kmと短いが、ツールでもお馴染みの超級山岳クロワ・ド・フェール峠と1級山岳ラ・トゥッスイールは破壊力抜群。クロワ・ド・フェール峠は、平均勾配7%の登りがなんと22kmに渡って続く。そしてラ・トゥッスイールに向かう登りで最後のマイヨジョーヌ決戦が繰り広げられる。


コンタドールとシュレクを除くマイヨジョーヌ候補が集結

ツール・ド・ロマンディで総合優勝を飾ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)ツール・ド・ロマンディで総合優勝を飾ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsujiまず始めに、アルベルト・コンタドール(スペイン、サクソバンク・サンガード)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)はドーフィネに出場しない。その代わりに、その2名以外のマイヨジョーヌ候補は全員ドーフィネに顔を揃えると言っても良い。

しかし、あくまでもツールの準備レースとしてドーフィネを走る選手が多いため、実状として、全力で総合優勝を狙う選手は決して多くない。特に近年は、ドーフィネで総合優勝した選手がツールを制する例は少ない。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiそんな中でも、今年のツールでコンタドールvsシュレクの間に割って入ると予想されるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)に注目したい。エヴァンスは2007年から3年連続ドーフィネ総合2位という成績を残している。

今年ティレーノ〜アドリアティコで総合優勝を果たしたエヴァンスは、4月のトレーニング中に落車し、目標だったアルデンヌ・クラシックを棒に振った。しかしツール・ド・ロマンディでは復活の総合優勝。ツールに照準を合わすエヴァンスは、このドーフィネで調子を確認する。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji連覇が懸かったジロを欠場してまでツールに集中するイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)も出場。バッソはトレーニング中の落車で顔面に怪我を負ったが、問題なくトレーニングを続けている。昨年のマリアローザ獲得者は、イタリア人初のドーフィネ総合優勝に輝くことができるだろうか。

昨年山岳で安定した強さを見せ、総合優勝に輝いたヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、レディオシャック)はもちろん連覇を狙ってくる。

新城幸也(日本、ユーロップカー)新城幸也(日本、ユーロップカー) photo:Kei Tsujiツールの総合トップ10、もしくは総合トップ5に入るであろうロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)、アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)らも出揃う。

2009年ツールでの総合4位を機にオールラウンダーへと変貌を遂げたブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)も、虎視眈々とツールの表彰台を狙っている選手の一人だ。昨年のツールでは総合24位に沈んだが、今年はパリ〜ニースで早速総合3位に入って好調さをアピール。直前に行なわれたバイエルン・ルントファートの個人TTではファビアン・カンチェラーラ(スイス)を破っており、順調な仕上がりを見せている。個人TTで広げたリードを山岳で守ることができれば、トニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)にも勝機が有る。

日本からは、ツールへの出場が期待される新城幸也(ユーロップカー)が出場。ユキヤは自身のブログで「2つしか平坦の日がありません(笑)しっかり走って来たいと思います」と語っている。注目は第2ステージと第4ステージ。それらのステージではタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)やエドヴァルド・ボアッソン(ノルウェー、チームスカイ)らがライバルになるだろう。

text&photo:Kei Tsuji

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