ジロ史上最高に厳しいと言われるドロミテ3連戦を走り終えた別府史之(レディオシャック)。2回目の休息日を迎え、ドロミテの山々に囲まれたホテルでリラックスするフミにインタビューを行なった。

39分59秒遅れでゴールした別府史之(日本、レディオシャック)39分59秒遅れでゴールした別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji改めて昨日の厳しいレースを振り返って?

自分の人生の中で一日合計6,000m以上を登ったのは初めての経験でした。しかも230kmという長いステージで、レース時間は8時間オーバー。そんな日に限って調子を落としていたので、なおさら厳しかった。想像を絶する一日でした。

下山準備完了の別府史之(日本、レディオシャック)下山準備完了の別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsujiトラブルなく最後まで走り切れた?

前半から調子が悪くて、しかも後半にかけてハンガーノック気味になってしまったんです。しっかり補給を取っていたつもりだったのに、エネルギーが足らなくなった。230kmという距離は分かっていたけど、レース時間が8時間を超えることは頭に入っていなかった。最後の1時間半がすごく長く感じました。

手脚が痺れてしまって、力が全然入らない。踏んでも踏んでも進まない。手のひらや指先の感覚もなくなった。そこでエキモフ監督がボトルやエネルギーバーを持ってきてくれたんです。その補給食が無かったら、ゴールまで辿り着けなかったかもしれない。

第14ステージ 12分07秒遅れでゾンコランの頂上にやってきた別府史之(日本、レディオシャック)第14ステージ 12分07秒遅れでゾンコランの頂上にやってきた別府史之(日本、レディオシャック) photo:Kei Tsuji一番キツかったポイントは?

最後から2つ目の1級山岳フェダイア峠の頂上手前数キロがとにかくキツくて、ハンドルに掴まって何とかクリアしました。ギアの問題ではなくて、脚が足らなかった。あんなにキツイ思いをした登りは初めてです。

ポルトを含む25人ぐらいのグループでフェダイア峠を越えて、そのグループ内でダウンヒル。最後の登りが始まったところで少し力が戻って、ようやくダンシングできるようになったんです。ラスト3kmのアーチが見えたところで安心して脚の力を弱めました。遅れているのは分かっていたけど、周りに大勢いたし、これでタイムアウトになるとプロトンの半分がレースを去ってしまう。だからそこまで遅れは気にしていなかったです。

ゴール後の疲労感は相当なものだったと?

ホテルに着いたのは夜の8時半。どうやってホテルに着いたのかあまり覚えていません。他の選手も「辛い辛い」と言っていたけど、そこまで疲れているようではなかった。特に僕だけ疲労困憊で、夕飯もあまり喉を通らなかった。その前の2日間は調子が良かったのに、突然こんな(調子の悪い)日がやってくるとは。

今日ローラー台に乗った感触は?

前回の休息日同様、今日もローラー台で1時間ほど心拍を上げて走りました。昨晩はゆっくりとよく寝れたし、昨日よりも確実に元気になっています。脚も良く回った。ツールに出場した時も、バルセロナのゴールの日が“バッドデー”で、ガクンと調子を落としてしまった。でも翌日になったら回復していました。

残るステージが少なくなってきましたが?

明日の山岳個人TTと2つの頂上ゴール、そして最終日のミラノ個人TTを除くと、残るチャンスは第17ステージと第18ステージだけ。山場を越えたので、あとは自由に走ることができます。

第17ステージは登りの難易度が低く、ゴール前に平坦路があるので、集団スプリントに持ち込まれる可能性が高いと予想しています。あくまでも山岳で脚が残っているという前提ですけど、スプリンターの3人(マキュアン、ハンター、カルドソ)がすでにリタイアしているので、スプリントを狙うとすれば自分。
第18ステージは序盤から逃げたい。でも他の選手も同じことを考えているはずなので、激しいアタック合戦になるはず。でもそれに食らいついていきたい。

明日のネヴェガル山岳個人TTへの抱負は?

山岳個人TTは実は危険なんです。タイムカットだけには気をつけないといけない。後半のキツイ登りでは、追い込んでもタイムがあまり変わらない。だから前半の平坦区間でタイムを伸ばして、後はダンシングで登りをクリアしたい。全開で行きますよ。

text&photo:Kei Tsuji in Belluno, Italy