ピンクのマリアローザとともに、イタリアを彩る3色のジャージがある。スプリンターに与えられる赤色のマリアロッソ・パッシオーネ。山岳王に与えられる緑色のマリアヴェルデ、そしてフレッシュな若手選手を対象にした白色のマリアビアンカ。赤・白・緑というイタリア国旗カラーが揃った。

マリアロッサ・パッシオーネ(ポイント賞)

2年ぶりにジロに出場するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)2年ぶりにジロに出場するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Cor Vosステージレースに花を添えるのが、華々しい集団スプリントだ。その迫力あるスプリントバトルを体現するかのように、昨年からジャージが真っ赤なデザインに変更された。

他のジャージに倣ってシンプルに「マリアロッサ(赤色ジャージ)」とも呼ばれるが、正式名称は「マリアロッサ・パッシオーネ」。直訳すると情熱の赤色ジャージだ。

アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vos主催者が発表したステージリストを見ると、今年のジロには7つの平坦ステージが設定されている。しかしゴール直前に登りが加えられていたり、ゴールが登り基調であったりと、完全にスプリンター向きのステージは少ない。

そして今年のジロは山岳が厳しい。仮にスプリントで無敵を誇ったとしても、最終日のミラノに辿り着かない限り、ポイント賞は獲得出来ない。終着地ミラノでマリアロッサ・パッシオーネに袖を通すためには、厳しい山岳を越えなければならないのだ。

昨年のジロでステージ2勝を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)昨年のジロでステージ2勝を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ) photo:Kei Tsujiステージ上位入賞者の獲得ポイントは1位25ポイント、2位20ポイント、3位16ポイント・・・15位1ポイント。中間スプリントポイントは1位8ポイント・・・6位1ポイント。スプリンターが太刀打ち出来ない山岳ステージでも同ポイントが与えられるため、総合上位のオールラウンダーがポイント賞に輝く可能性もある。実際、過去2年間はスプリンターではなく総合上位のオールラウンダーがポイント賞を獲得している。

そんなスプリントの舞台に、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)が帰ってくる。ツール・ド・フランスでステージ通算15勝、ジロ・デ・イタリアで通算5勝、ブエルタ・ア・エスパーニャで通算3勝を飾っているカヴは、間違いなく現在最速のスプリンターだ。

カヴは2008年大会に初出場し、ステージ2勝&総合132位。2009年大会ではステージ3勝(チームTTを含めると4勝)を飾り、マリアローザを2日着用した(第14ステージDNS)。

開幕前々日の記者会見でカヴは「できるだけ多くのステージで勝ちたい。でも、ツールでは平坦ステージで多くのポイントを獲得できるけど、ジロは山岳ステージでも同ポイント。だからジャージは難しい」とコメント。発射台役のマーク・レンショー(オーストラリア)はもちろんのこと、スプリント力のあるアレックス・ラスムッセン(デンマーク)らがカヴのためにトレインを組む。

HTCトレインを迎え撃つのが、地元のイタリアンスプリンターたち。最大の対抗馬は「アレ=ジェット」ことアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ・ISD)だろう。ペタッキは37歳になった今もトップスプリンターとしての地位を維持。ジロではステージ通算21勝を飾っている。ダニーロ・ホンド(ドイツ)とのタッグでHTCに挑む。

注目のダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、レオパード・トレック)は直前のツール・ド・ロマンディで落車し、鎖骨と肋骨の骨折で戦線を離脱。フランチェスコ・キッキ(クイックステップ)やダニーロ・ナポリターノ(アックア・エ・サポーネ)、サーシャ・モードロ(コルナゴ・CSFイノックス)らがイタリアの期待を背負ってスプリントに挑む。

昨年大会で唯一ステージ2勝を飾ったタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・サーヴェロ)も出場。ファラーはカヴとならんで近年目覚ましい活躍を見せている若手スプリンターであり、今年もステージ上位に絡む走りを見せるだろう。

オーストラリアからはロビー・マキュアン(レディオシャック)やグレーム・ブラウン(ラボバンク)が出場する。ジロでステージ通算12勝を飾っているマキュアンは、ロバート・ハンター(南アフリカ)やマヌエル・カルドソ(ポルトガル)を引き連れての出場。チームメイトの別府史之もマキュアンのスプリント勝利をサポートするはずだ。

歴代ポイント賞受賞者
2010年 カデル・エヴァンス(オーストラリア)
2009年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2008年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2007年 ダニーロ・ディルーカ(イタリア)
2006年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2005年 パオロ・ベッティーニ(イタリア)
2004年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2003年 ジルベルト・シモーニ(イタリア)
2002年 マリオ・チポッリーニ(イタリア)
2001年 マッシモ・ストラッツェール(イタリア)
2000年 ディミトリ・コニシェフ(ロシア)

マリアヴェルデ(山岳賞)

エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ)エマヌエーレ・セッラ(イタリア、アンドローニ・ジョカトリ) photo:Riccardo Scanferlaグランツールの中で最も山岳の難易度が高いジロ・デ・イタリア。特に今年の山岳の厳しさは超一級。それだけに、山岳王の証マリア・ヴェルデには大きな価値がある。

獲得ポイントが最も大きいのはチーマ・コッピ(ジャウ峠)で、先頭で通過した選手には20ポイントが付与。以下、山頂フィニッシュ(第7、第9、第14、第15、第19、第20ステージ)が15ポイント、1級山岳10ポイント、2級山岳5ポイント、3級山岳3ポイントが与えられる。山岳ステージで活躍する総合上位陣が、必然的に山岳賞上位に名を連ねるだろう。

ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)ファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC) photo:Sonoko.TANAKA昨年は第5ステージで逃げ切り勝利を飾り、その後も着実に獲得ポイントを積み重ねたマシュー・ロイド(オーストラリア)が山岳賞を獲得。オーストラリア人として初めて最終日にグリーンジャージを受け取った。しかし今年に入ってオメガファーマ・ロットはロイドの契約を解除。ロイドの山岳賞連覇の道は断たれた。

毎年山岳コースで存在感を見せるのが、サヴィオ監督率いるアンドローニ・ジョカトリ。2008年の山岳王エマヌエーレ・セッラ(イタリア)、2005年の山岳王ホセ・ルハノ(ベネズエラ)、そしてツール・ド・ランカウイの名所ゲンティン・ハイランドを3度制しているホセ・セルパ(コロンビア)を揃える。

小柄なクライマーのドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、コルナゴ・CSFイノックス)や、ジロ・デル・トレンティーノの山岳ステージを制した若手急先鋒のファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)にも注目。

昨年ガヴィア峠のステージを制したヨハン・チョップ(スイス、BMCレーシングチーム)、そして2009年ツールの超級山岳アンドラ頂上ゴールを制したブリース・フェイユ(フランス、レオパード・トレック)も山岳ステージで動きを見せるだろう。2009年のTOJ(ツアー・オブ・ジャパン)富士山ステージで40分21秒のコースレコードを叩き出し、総合優勝したセルヒオ・パルディージャ(スペイン、モビスター)も出場する。

歴代山岳賞受賞者
2010年 マシュー・ロイド(オーストラリア)
2009年 ステファノ・ガルゼッリ(イタリア)
2008年 エマヌエーレ・セッラ(イタリア)
2007年 レオナルド・ピエポリ(イタリア)
2006年 フアンマヌエル・ガラーテ(スペイン)
2005年 ホセ・ルハノ(ベネズエラ)
2004年 ファビアン・ウェーグマン(ドイツ)
2003年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2002年 フリオ・ペレスクアピオ(メキシコ)
2001年 フレディ・ゴンザレス(コロンビア)
2000年 フランチェスコ・カーザグランデ(イタリア)

マリアビアンカ(新人賞)

ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)ロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ) photo:Sonoko.TANAKA若手選手を対象とした新人賞。トップの選手には純白のホワイトジャージが与えられる。長らくブルーの複合賞ジャージに座を奪われていたが、4年前に復活した。対象となるのは誕生日が1986年1月1日以降の選手だ。

総合優勝候補の一人でもあるロマン・クロイツィゲル(チェコ、アスタナ)は1986年5月6日生まれの25歳。つまり新人賞対象選手だ。マリアローザを狙って走るうちに、自然とマリアビアンカが手元になってくるだろう。

クロイツィゲルのチームメイトで、誕生日が一日違い(1986年5月5日生まれ)のフランチェスコ・マシャレッリ(イタリア)も対象選手。2007年のTOJ覇者はクロイツィゲルをアシストする。

前述のファビオアンドレス・ドゥアルテ(コロンビア、ジェオックス・TMC)も24歳と若い。2008年のU23世界チャンピオンであり、将来を嘱望されるクライマー。初出場のグランツールで存在感ある走りを見せることができるだろうか?

歴代新人賞受賞者
2010年 リッチー・ポルト(オーストラリア)
2009年 ケヴィン・シールドライヤース(ベルギー)
2008年 リカルド・リッコ(イタリア)
2007年 アンディ・シュレク(ルクセンブルク)
1995年〜2006年 ジャージ設定されず


text:Kei Tsuji in Torino, Italy