107年目の伝統戦、注目度はナンバーワン

リエージュ名物の急勾配サンロシュリエージュ名物の急勾配サンロシュ photo:Cor Vos第1回大会が開催されたのは、なんと今から107年前の1892年。大戦で歴史に空白が空きながらも、今年で開催95回目を迎える。「Doyenne(ドワイエンヌ=最古参)」は納得のネーミングだ。「モニュメント」と呼ばれる5大クラシック(サンレモ、ロンド、パリ〜ルーベ、リエージュ、ロンバルディア)の一つとして数えられており、アルデンヌ3連戦の中ではその存在感が際立って大きい。

レースの舞台となるのは、ベルギー南部ワロン地域、リエージュの南に広がる丘陵地帯。コースはレース名の通りリエージュとバストーニュの往復で、アルデンヌの丘陵地帯を逆回りに8の字を描き、リエージュ近郊の街アンスにゴールする。

「アップダウンを繰り返し、最後は短い坂を駆け上がってゴール」というコースの特徴は、他の2レース(アムステルとフレーシュ)と一緒。しかし上り一つ一つの距離が長く、レース全長も261kmと一番長い。難易度、距離、格式はアルデンヌナンバーワンだ。
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュコースプロフィールリエージュ〜バストーニュ〜リエージュコースプロフィール photo:www.letour.fr
登場する11の上り坂のうち、最も勾配のある「サンロシュ(平均12%)」は中盤の128km地点で登場。ラスト100kmを切ってからは断続的に上り坂が襲いかかり、中でも226km地点に設定された「ラ・ルドゥット(平均8.4%)」は長さが2.1kmで、最大勾配も17%まで跳ね上がる。フィリップ・ジルベール(ベルギー)の出身地近くのこの上りで、本格化なアタック合戦のゴングが鳴る。

昨年導入された「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(平均9.9%)」は今年もゴールの19.5km手前に鎮座。このフォーコン通過後14km先には、最後の難関「サンニコラ(平均11.1%)」が待ち構えている。連続するこれらの上りではアタック合戦が必至だ。

ゴール地点は「カウベルグ」や「ユイ」ほど厳しくはなく、ラスト2kmから緩斜面がダラダラと続く。上りでアタックを成功させた選手が独走するか、それともこう配の緩い最終ストレートで小集団スプリント勝負に持ち込まれるか。上りの厳しい長距離サバイバルレースがいま始まる。

登場する11の上り坂
1 57.5km地点 Cote de Ny 長さ1.8km 平均勾配5.7%
2 82km地点 Cote de la Roche-en-Ardenne 長さ2.8km 平均勾配4.9%
3 128km地点 Cote de Saint Roch 長さ0.8km 平均勾配12%
4 172km地点 Cote de Wanne 長さ2.7km 平均勾配7%
5 178.5km地点 Cote de Stockeu 長さ1.1km 平均勾配10.5%
6 184km地点 Cote de la Haute-Levee 長さ3.4km 平均勾配6%
7 196.5km地点 Cote du Rosier 長さ4.0km 平均勾配5.9%
8 209km地点 Cote de la Vecquee 長さ3.1km 平均勾配5.9%
9 226.5km地点 Cote de la Redoute 長さ2.1km 平均勾配8.4%
10 241.5km地点 Cote de la Roche aux Faucons 長さ1.5km 平均勾配9.9%
11 255.5km地点 Cote de Saint-Nicolas 長さ1.0km 平均勾配11.1%


連覇狙いのバルベルデを中心に、有力選手がズラリ

連覇を狙うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ)連覇を狙うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、ケースデパーニュ) photo:Cor Vos先のアムステルとフレーシュを前哨戦と捉え、「すべてはリエージュのため」と語る選手も数多い。過去の優勝者リストを見てみると、アタック力&スプリント力のあるオールラウンダーが名を連ねている。

過去3年間欠かさず表彰台('06年優勝・'07年2位・'08年優勝)に上り、2年連続3度目の優勝を狙うのが、リエージュ唯一のスペイン人優勝経験者アレハンドロ・バルベルデ(ケースデパーニュ)だ。今シーズンはアムステル21位、フレーシュ7位。最も得意とするリエージュでドーピング嫌疑を振り払う快勝を飾れるか。少人数のスプリントに持ち込めれば勝算はグッと上がる。

フレーシュ・ワロンヌで競り合うダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)フレーシュ・ワロンヌで競り合うダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)とアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosフレーシュで「自身でもビックリ」の勝利を飾ったダヴィデ・レベッリン(イタリア、ディキジョヴァンニ)は、先週体調を崩しながらも日々調子を上げている。リエージュではフレーシュ以上に好調な姿を見せてくれるだろう。ミケーレ・スカルポーニ(イタリア)のサポートを得て、37歳レベッリンが2004年に続く2度目の勝利を狙う。

2007年優勝者のダニーロ・ディルーカ(イタリア、LPRブレークス)は、出場チーム不招待のため欠場。世界選手権ロードレースのイタリア選抜チームで、エースを担うと期待されるダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)のリエージュにかける想いは強い。

リエージュ初制覇を狙うフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)リエージュ初制覇を狙うフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)とダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ) photo:Cor Vosクネゴはシーズン前半の目標にこのアルデンヌ3連戦を掲げており、ここまでアムステル5位、フレーシュ3位と安定した成績を残している。リエージュでは2006年に表彰台に上っているが、優勝経験は無い。

2年連続3位のフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)は、アムステルでの落車で奇跡的に大怪我を免れ、リエージュのスタートラインに立つ。Fシュレクはアルデンヌ最終戦で、弟アンディ・シュレク(ルクセンブルク)やアレクサンドル・コロブネフ(ロシア)らとともに花道を飾れるか。サクソバンクは相変わらずの選手層の厚さだ。

フレーシュ・ワロンヌを143位で完走した土井雪広(スキル・シマノ)フレーシュ・ワロンヌを143位で完走した土井雪広(スキル・シマノ) photo:Chiho Iwasa積極的に走りながらも、今シーズン2勝とどこか空回りなのがサイレンス・ロット。グランツールレーサーのカデル・エヴァンス(オーストラリア)を軸に、リエージュの経験豊かなフィリップ・ジルベール(ベルギー)とトーマス・デッケル(オランダ)を揃えているが振るわない。何とかここで奮起したいところ。

他にもアムステル覇者のセルゲイ・イワノフ(ロシア)とクリスティアン・ファンバーガー(オーストリア)擁するカチューシャ、北京五輪ロードレース金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)mキルシェンに代わってチームコロンビアを率いるトーマス・ロヴクヴィスト(スウェーデン)、リクイガスの若頭ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)ら、鼻息荒くリエージュ制覇を狙う選手は多い。

アルデンヌ全戦出場が決まった新城幸也(Bboxブイグテレコム)アルデンヌ全戦出場が決まった新城幸也(Bboxブイグテレコム) photo:Chiho Iwasaそして日本からは、土井雪広(スキル・シマノ)と新城幸也(Bboxブイグテレコム)がフレーシュに続く連戦出場。「次は行けると思う」と語る土井はこのリエージュを目標にトレーニングを続けてきた。

アムステルで新城幸也が逃げ、フレーシュで別府史之(スキル・シマノ)が逃げ、次は土井?そんな期待が周囲では膨らんでいるが、気負いせず、力を思う存分発揮して、本来の走りでレースに挑んで欲しい。