2011年3月9日、パリ〜ニース(UCIワールドツアー)第4ステージで再び逃げ切りが決まった。7つの山岳を含む191kmコースで逃げたトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)が、迫り来る集団を振り切って優勝。ボーナスタイムを獲得したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が総合首位に返り咲いた。

フランス中部の田園風景の中を走るメイン集団フランス中部の田園風景の中を走るメイン集団 photo:Cor Vosパリ〜ニースはこの第4ステージから徐々に山岳の厳しさを増していく。第4ステージの191kmには、カテゴリー2級と3級の山岳が合計7つ登場。前日まで活躍したスプリンターたちの苦戦が予想された。

レースは開始後すぐに5名が飛び出す展開。逃げたのはヴォクレール、レミ・ポリオル(フランス、FDJ)、レミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)、フランシス・デグレーフ(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、そして前日の第3ステージでリーダージャージを奪われたデヘント。

レース序盤から逃げるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)レース序盤から逃げるトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)やトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos総合首位マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)から僅か2秒差の総合2位につけるデヘントは、82.5km地点のスプリントポイントでボーナスタイム3秒を獲得。暫定的に総合リードを奪い返すと、その後も果敢に逃げ続けた。

積極的に山岳ポイントを加算したのは、今年コフィディスからFDJに移籍したポリオル。7つのカテゴリー山岳のうち、6つの山岳を先頭で通過したポリオルは、合計35ポイント獲得で断トツ山岳賞トップに躍り出た。

終盤にかけてメイン集団をコントロールするラボバンク終盤にかけてメイン集団をコントロールするラボバンク photo:Cor VosHTC・ハイロードがコントロールするメイン集団に対し、デヘントを含む逃げグループは最大5分15秒のリード。ゴール35km手前に位置するこの日最後の3級山岳フォンマルタン峠に差し掛かる頃には、タイム差は1分30秒まで縮小する。

しかしここから先頭5名は粘りを見せた。スプリンターの力を温存するため、メイン集団が山岳で無理にペースを上げなかった影響でタイム差は縮まらず。ゴールまで30kmを残してタイム差は1分20秒。積極的にメイン集団を牽引するスプリンターチームは現れず、先頭グループは1分のリードを得たままラスト10kmのアーチに達した。

先頭からはやがてデグレーフが脱落。生き残ったデヘント、ヴォクレール、ポリオル、ディグレゴリオの4名は、懸命にローテーションしてハイスピードを維持。メイン集団はラボバンクやリクイガス・キャノンデールが牽引したが、最後までスピードが上がり切らない。結局メイン集団は4名に逃げ切りを許してしまった。

リーダージャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)リーダージャージを着るマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Cor Vosポイント賞ジャージを着るハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)ポイント賞ジャージを着るハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ) photo:Cor Vos総合での走りが期待されるトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード)総合での走りが期待されるトニ・マルティン(ドイツ、HTC・ハイロード) photo:Cor Vos

トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が積極的に逃げグループを牽くトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)が積極的に逃げグループを牽く photo:Cor Vos総合リードを広げたいデヘントが引き続けた逃げグループから、ラスト150mでスプリントで飛び出したフランスチャンピオン。他の追随を許さない走りでヴォクレールがステージ優勝を手にした。

これまでツール・ド・フランスのステージ2勝を含め、フランスレースで多くの勝利を手にしているヴォクレール。しかしこれが自身初のパリ〜ニースステージ優勝。逃げのスペシャリストとして本領を発揮した。

逃げグループ内でのスプリントを制したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)逃げグループ内でのスプリントを制したトマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー) photo:Cor Vos「2003年以降、ずっとこの勝利を待ち続けていた。過去にはステージ2位を2回経験しているんだ。昨日トライしてみたけど失敗したから、今日は早い段階で勝負に出た。逃げのメンバーが強かったので最後まで逃げ切れたんだ」。

ヴォクレールは総合2位にジャンプアップ。しかし総合成績には興味を示さず、更なるステージ優勝を狙いたい考え。「2004年のツール・ド・フランスでは、フランスチャンピオンジャージの上にマイヨジョーヌを重ね着することができたけど、金曜日に個人TTが設定されているので、このパリ〜ニースでは難しいと思う。とにかく今はこの勝利をチームにもたらすことができて満足だ。またステージ優勝を狙って走りたい。」

リーダージャージを奪回したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)リーダージャージを奪回したトーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM) photo:Cor Vosそしてもう一人の主役は、逃げ切りに大きく貢献したデヘントだ。デヘントはメイン集団とのタイム差13秒と、スプリントポイントでのボーナスタイム合計6秒、更にゴール地点でのボーナスタイム4秒を獲得。見事にゴスからリーダージャージを奪い返した。

「ゴスが動かなければリーダージャージは取り返せると思い、最初からスプリントポイントでのボーナスタイムを狙った。協力して逃げていると、最後まで集団が追いついてこなかったんだ。調子の良さを感じていたので、前方でレースを展開したいと思っていたけど、ここまでいい成果に結びつくとは想像していなかった。リーダージャージだけを狙っていたので、仮にステージ優勝を狙うならば、もっとスマートな走りをするべきだった。」

デヘントは翌日から総合リードを守る立場。ここまでのステージで鮮烈な走りを披露しているが、山岳での走りは未知数。デヘントは「明日は厳しいステージが待っている。総合争いにおいて、ピュアスプリンターたちとのタイム差は約30秒。それが充分なのかどうかわからない」と語っている。

翌第5ステージは2つの1級山岳を含む難関山岳ステージ。ラスト9km地点に、パリ〜ニース初登場の1級山岳ミュール峠が待ち構えている。平均勾配8.3%が7.6kmに渡って続くこの本格山岳で、総合争いが本格化する。

選手コメントはチーム公式サイトより。

パリ〜ニース2011第4ステージ結果
1位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)           5h04'20"
2位 レミ・ポリオル(フランス、FDJ)
3位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)
4位 レミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)
5位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)   +13"
6位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)
7位 ロメン・フェイユ(フランス、ヴァカンソレイユ・DCM)
8位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)
9位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ランプレ・ISD)
10位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシングチーム)

個人総合成績
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)       19h26'46"
2位 トマ・ヴォクレール(フランス、ユーロップカー)              +10"
3位 レミ・ポリオル(フランス、FDJ)                     +16"
4位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)            +21"
5位 レミ・ディグレゴリオ(フランス、アスタナ)                +24"
6位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)    +27"
7位 ジェレミー・ロワ(フランス、FDJ)                    +30"
8位 トニー・ギャロパン(フランス、コフィディス)               +31"
9位 シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)               +32"
10位 イェンス・フォイクト(ドイツ、レオパード・トレック)          +35"

ポイント賞
ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、ガーミン・サーヴェロ)

山岳賞
レミ・ポリオル(フランス、FDJ)

新人賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ヴァカンソレイユ・DCM)

チーム総合成績
ヴァカンソレイユ・DCM

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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