先週末に幕を下ろしたツアー・ダウンアンダーは、ネクストジェネレーションの台頭を予感させる大会となった。特に若者の活躍が目立ち、ステージ優勝者と総合優勝者は全て20代の若手。その一方で、落車によってチャンスを失ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)は、アシストに徹するという側面を見せた。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード)マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsujiダウンアンダー開幕前から、カヴェンディッシュは「こんな早い時期に結果を残す必要は無い。シーズンの先に、もっと大きな目標がある」と繰り返していた。ファンはその言葉を信じず「きっとカヴはステージ何勝か飾ってくれるに違いない」という希望を持ったはず。しかしその希望は第2ステージの落車で打ち砕かれた。

チームスカイのベン・スウィフト(イギリス)が優勝を飾った第2ステージ。カヴは顔面に血を流した痛々しい状態で、3分47秒遅れでゴールした。

左目の上を切って血を流しながらゴールしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTCハイロード)左目の上を切って血を流しながらゴールしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、HTCハイロード) photo:Cor Vosあまりにも痛々しい姿を見せたため、早期リタイアを予感させた。しかしカヴはアデレード空港に直行して帰国するようなことはしなかった。カヴは出走を続け、マシュー・ゴス(オーストラリア)のアシストを勤め上げた。

第2ステージで落車した際も、カヴはゴスの発射台役だった。「チームの最優先事項は、このツアー・ダウンアンダーで優勝すること。どんな場所でも、優勝チームの一員になるのは誇らしいことだ。誰が先頭でゴールするのかは重要じゃない。チームが勝てばそれで良い。今回チームはゴスに懸けているんだ。チームメイトとして彼の勝利に貢献したい。」

連勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)連勝を飾ったマシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード) photo:Kei Tsuji結果的にゴスは僅か2秒差で総合優勝を逃した。キャメロン・マイヤー(オーストラリア)擁するガーミン・サーヴェロの壁を打ち破ることは出来なかったが、カヴは満足げだ。カヴは「落車ばっかりだったけど、充実したレースだった。初ダウンアンダーは実り多きレースだったよ」と晴れ晴れした表情で語った。

「落車はロードレースの一部。いつでもどこでも誰にでも起こりうる。それよりも温暖なおかげで良いトレーニングになったよ。実戦トレーニングは確実にコンディションを上げてくれた。確証はないけど、シーズン全体に渡って良い走りが出来そうな気がする。」

0勝に終わったカヴだが、一方でマシュー・ゴスの賞賛を勝ち取った。「いつもと違う役回りで戸惑った部分もあるけど、彼(カヴ)は立派な走りを見せてくれた。彼は威張り散らすような絶対的なエースではない。エーススプリンターとして素晴らしい成績を残しながら、アシストも務めることが出来るなんて素晴らしい。」ゴスはカヴの献身的な走りを忘れることはないだろう。

ゴスを始め、今年のダウンアンダーは20代の選手の活躍が目立つ大会だった。ここにステージ優勝者とその年齢を記してみる。

ツアー・ダウンアンダー2011ステージ優勝者
クリテリウム:マシュー・ゴス 24歳
第1ステージ:マシュー・ゴス 24歳
第2ステージ:ベン・スウィフト 23歳
第3ステージ:マイケル・マシューズ 20歳
第4ステージ:キャメロン・マイヤー 23歳
第5ステージ:フランシスコホセ・ベントソ 28歳
第6ステージ:ベン・スウィフト 23歳

ステージ2勝を飾ったベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)ステージ2勝を飾ったベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji「これは間違いない。」ステージ2勝を飾ったスウィフトは意気揚々と話す。「間違いなく若手の時代が来ている。」

スウィフトはカヴが落車した第2ステージで勝利した。チームにはクリストファー・サットン(オーストラリア)というエーススプリンターがいたが、サットンは落車で離脱。昨年大会初日のクリテリウムで優勝したグレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド)も後方に取り残されたため、チームスカイはスウィフトに勝負を託した。

最終ステージを制したベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)最終ステージを制したベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiスウィフトはその期待に応えるようにステージ2勝。最終的にマイヤーとゴスに続く総合3位でレースを終えた。

「この温暖な気候のおかげで、オーストラリア人選手たちは順調にカラダを調整してシーズン前半に挑んでいる。それを強く感じさせたよ。今年は早い時期に現地入りしたので、自分もその恩恵を受けた。」

第3ステージを制したマイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)は20歳第3ステージを制したマイケル・マシューズ(オーストラリア、ラボバンク)は20歳 photo:Kei Tsuji「若手の台頭はロードレースにとって朗報だと思う。特に若い選手はモチベーションが高くて、シーズン前半から勝ちたいと強く願っている。このダウンアンダーで何人かの若手がトップ選手の仲間入りを果たした。キャメロン(マイヤー)はアマチュア時代から競い合っていた仲で、同じ年にプロ入りして、似たようなキャリアを積んで来た。ゴシィー(マシュー・ゴス)も同様で、アマチュアレースでよく一緒に走った。」

スウィフトはチームメイトでイギリスチャンピオンのジェレイント・トーマスの存在も忘れない。

「G(トーマス)とはここ数年一緒に走っている。彼はまだ若くて才能に溢れている。他にも、チームにはピーター・ケノーがいる。Gとピーターは近い将来ロードレースで驚くような結果を出すかも知れない。」

スウィフトはトーマスとともに来月マンチェスターで開催されるトラック・ワールドカップに出場する。トラック世界選手権の代表入りを目指しており、実現すればダウンアンダー覇者マイヤーと対峙することになる。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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