レオパード・トレックのジャージはスポンサー名が目立たないデザインだ。バイクサプライヤーのトレック社のロゴが両脇に入っているが、それ以外のスポンサーロゴは胸元に小さく施されているだけ。その背景にはチームのパトロン(後ろ盾)である資産家フラヴィオ・ベッカ氏の存在がある。

チームの中心人物ファビアン・カンチェラーラ(スイス)、フランク・シュレク(ルクセンブルク)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク)チームの中心人物ファビアン・カンチェラーラ(スイス)、フランク・シュレク(ルクセンブルク)、アンディ・シュレク(ルクセンブルク) photo:Cor Vosベッカ氏は年間1500万ユーロ(約16億5000万円)というチーム予算を4年間に渡って保証している。その豊潤な資金源のおかげで、アンディ・シュレク(ルクセンブルク)はツール・ド・フランス制覇、ファビアン・カンチェラーラ(スイス)はモニュメント制覇に没頭出来る。

ルクセンブルクの48歳の資産家がチームに傾倒する理由。それはロードレースへの愛情と、シュレク一家との親交にある。

レオパード・トレック ジャージキットレオパード・トレック ジャージキット photo:www.leopardtrek.lu「シュレク兄弟と彼らの父親とは古い付き合いだ。昔から一緒にハンティングに出かけたものだ。彼らが新たな組織を立ち上げるという話を聞き、これはチャンスだと思って力添えすることにした」。ベッカ氏はガゼッタ・デッロ・スポルト紙のインタビューにそう語っている。

「ロードレースを愛している。1978年に世界選手権がドイツのニュルブルクリンクで開催されたとき、自走で観にいったことをよく覚えている。自分のアイドルだった(フランチェスコ)モゼールが(ヘリー)クネットマンに数インチ差で負けた時は思わず泣いてしまった。単なるビジネス目的ではなく、ルクセンブルクのロードレースの発展に貢献したいという気持ちが前々からあった」

レオパード・トレックのキム・アンデルセン監督とブライアン・ニガードGMレオパード・トレックのキム・アンデルセン監督とブライアン・ニガードGM photo:Cor Vos建設業界出身のベッカ氏は、不動産の世界で巨万の富を得た。現在は、ヨーロッパ全土で展開するファーストフードチェーンの「クイック」や、スーパーマーケットの「オーシャン」も手がけている。2社ともレオパード・トレックのスポンサー候補に挙がった企業だ。

シンプルでシックなチームジャージは、ブライアン・ニガードGMとキム・アンデルセン監督、そして25名のチームメンバーとともにチームプレゼンテーションで華々しく披露された。

「チーム作りのファーストステップとして、ツール・ド・スイス参戦中のキム・アンデルセンと新チームの構想について話し合ったんだ。裏でコソコソ話し合うのではなく、リース監督に状況を説明するようアンデルセンに言っていた。彼がチームを解雇されたと聞いたときは心が痛んだよ」

ベッカ氏が注目しているのは「北の地獄」パリ〜ルーベ。2010年と2006年の優勝者カンチェラーラと、2007年の優勝者スチュアート・オグレディ(オーストラリア)はレオパード・トレック所属だ。「パリ〜ルーベは最後の最後まで息の詰まる熱戦が繰り広げられる。カンチェラーラは優勝争いに加わるはずだ。それ以外にも多くのレースで我々のチームは力を発揮するだろう」

「努力なしに成功は有り得ない」それがベッカ氏の座右の銘。強靭なチーム力に驕ることなく、新チームはシーズン開幕に向けてトレーニングを続けている。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji

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