アンカーは多岐多様なモデルと細かなカスタマイズオーダーが可能な、数少ないナショナルブランドだ。中でもレーシングモデルは、国内有数のレースチーム「ブリヂストンアンカー」を擁しているだけあって、その数も充実している。そんなアンカーが「アルミ素材で満喫する、ロードバイクの醍醐味」と謳うのが今回のテストバイク、RCS6エキップだ。

アンカー RCS6エキップアンカー RCS6エキップ (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

RCS6は、アンカーのフラグシップレーサー「RMZ」やハイエンドレーサー「RHM9」の普及モデルとして位置づけされている。そのためアルミ素材をメインに使うことで普及価格帯に抑え、レーシーな味付けを達成するための努力がなされている。

トップチューブもダウンチューブも複雑なチュービングがされている。トップチューブもダウンチューブも複雑なチュービングがされている。 アンカーの特徴でもある美しいグラフィックが車体を引き締めるアンカーの特徴でもある美しいグラフィックが車体を引き締める


まず注目は、アルミフレーム特有のシャープな加速を最大限に引き出すため、従来のアルミモデルに比べて多くの改善が施されている点だ。それはチューブ形状の変更からはじまっているという、力の入った仕上がりになっている。

フルカーボンストレートフォークは軽量化もさることながらコントロール性も高められた。フルカーボンストレートフォークは軽量化もさることながらコントロール性も高められた。 ヘッド部は下側口径を大きくして剛性を高めている。ヘッド部は下側口径を大きくして剛性を高めている。 アルミ素材で上位カーボンモデルと同じデザインのシートチューブ成形。技術力の高さを示している。アルミ素材で上位カーボンモデルと同じデザインのシートチューブ成形。技術力の高さを示している。


高度なハイドロフォーミング技術を用いて成型されたフレームは、ペダリング時のたわみの抑制を目指し、ダウンチューブはヘッド側を角断面に、ハンガー部に向かうにつれて三角断面へと変形させている。そしてハンガー部の横剛性を増すことで、前モデル「RCS5」に比べ、よりペダリングによるダイレクト感の向上へと繋げている。

各所接合部はキレイな盛りがされており、応力集中を避ける配慮を伺わせる。各所接合部はキレイな盛りがされており、応力集中を避ける配慮を伺わせる。 プレーンなチェーンステーとは対照的に力強い形状のシートチューブプレーンなチェーンステーとは対照的に力強い形状のシートチューブ


ほかには下部を1-1/4径に拡大させたヘッドチューブと、新設計の軽量フルカーボンフォークはフロント周りの剛性強化と軽量化を同時に目指し、コーナリングやブレーキング精度を高めている。

さらには振動吸収性を高めるため、カーボンフォークのほかにカーボンのシートステーを用いることで、アルミ素材の高剛性によるネガティブになりがちな点をフォロー。スタイルの面でもフラグシップモデル「RMZ」譲りのシートチューブ形状を、ハイドロフォーミングを使ったチュービングにより再現。カーボンではなくアルミ素材で成形することで、性能の向上を狙っている。

グラフィックの塗りははみ出しなどもなく、美しく塗装されている。グラフィックの塗りははみ出しなどもなく、美しく塗装されている。 トップチューブのシート側はより複雑なチューブ成型になっている。トップチューブのシート側はより複雑なチューブ成型になっている。 バックカーボンはどの配色を選んでもカーボン色になる。バックカーボンはどの配色を選んでもカーボン色になる。


フルカーボンバイクの人気が高い現在、アルミモデルの新規開発は多くのブランドが見合わせる。アルミ&カーボンバックのバイクは以前に比べるとその数は減少傾向にある。しかし、一時は「猫も杓子もアルミ&カーボンバック」と言われたぐらい、ロードバイクの主流をなしたフレーム構成だ。高剛性と振動吸収性のバランスが取りやすい素材構成として広く受け入れられたのは紛れもない事実だ。

そして、あえて今登場した「RCS6」は、アンカーの掲げるロードバイクの醍醐味を味わわせてくれるのだろうか? さっそくインプレッションに入ろう。




―インプレッション

「ロードバイク入門モデルとして適した1台」流郷克也「ロードバイク入門モデルとして適した1台」流郷克也 「ロードバイク入門モデルとして適した1台」
流郷克也(ユーキャン)


この「RCS6エキップ」は、これまでにアンカーがリリースしてきたアルミモデルと比べても、質の良い“しなやかさ”を感じる。バックカーボンがどのようにしてこれに寄与しているかは、メインフレームがほぼ同じのフルアルミの下位モデル「RA6」に乗ってみないと何とも言えない。しかし、“しなやかさ”はバイク全体から感じることができた。

これまでアンカーのアルミモデルというと「非常にレーシーな味付けだけれども、その分身体には疲労も溜まりやすい」というイメージだったが、それがうまく払拭された印象だ。もちろん剛性不足などはなく、踏み込めばカチッとした剛性を感じる。

これからレースを始めたい人、特に金銭的にあまり余裕のない高校生には、価格的にもピッタリな自転車だろう。さらに“しなやかさ”が加わった分、ペダル入力パワーのあまり高くない人や、本格的なレース以外で使いたい人であっても十分楽しめるバイクになっている。

「レースにも使えて、レースで使わずとも十分楽しく乗ることができる」この絶妙な味付けを、この低価格帯で作り上げていることには驚く。

上りや平地での反応は、各社のトップグレードバイクと比べればわずかに鈍い点は否めないが、価格が2倍以上違うのだから当然。むしろ走りではそういった高級モデルと比べられるレベルで仕上がっている。その辺のことを感じられるライダーならば「RCS6」に「乗せられる」だけではなく「乗りこなせる」だろう。

また荒れた路面での走行や下りでの安定感は必要十分な性能を持っている。下りでのカーブも安心して突っ込めるハンドリングで、何ら問題ない。コンポ、ホイールなどパーツアッセンブリに関しても、この価格帯は各社多くのモデルを投入しているが、それらに引けを取らないアッセンブルと言えるだろう。完成車で購入してそのまま使っても問題ない。

さらに言うと、あと5万円もだせば低価格なフルカーボンバイクも購入できるのだが、初めてのロードバイクならば、なおさらこの「RCS6」と、残りの予算でウェアやヘルメット、シューズなどに良い物を買って「良い状態」で自転車に乗る時間を作ることを勧めたい。それだけこのバイクは魅力がある1台だ。


「レース系イベントで大活躍してくれるバイク」
若生正剛(なるしまフレンド)


「レース系イベントで大活躍してくれるバイク」若生正剛「レース系イベントで大活躍してくれるバイク」若生正剛 全体的にレーシーな印象のバイクだ。ただしガチガチに硬いというワケではない。しなやかさとしっかりした芯を併せ持っている、といった感覚だ。

アルミフレームということで先入観としては「硬さが気になるか?」とも思ったが、これには良い意味で裏切られた。カーボンバックとカーボンフォークが下からの突き上げを抑えて、アルミのネガティブな側面をカバーしてくれている。

そのうえで平坦・上り・下りと、シーンを選ばずに安定感のある走りを見せてくれる。このバイクの乗り方としては、カーボンバックのおかげかペダリング時の跳ね返りや路面からの衝撃が抑制、減衰されるためか、積極的に踏み込むよりもしなやかさを活かす乗り方のほうがこのバイクには合っているだろう。

またインストールされているストレートカーボンフォークは、前モデルからボリュームアップされており、衝撃吸収以外の効果もはっきりでている。
高速域での安定感はこのフロントフォークに依るところが大きい。同時に下りでの安定したコントロール性能も獲得しており、安心感のあるものになっている。

「RCS6」はレーシーな上に乗りやすい乗り味のアルミバイクとしてバランスの良い仕上がりになっている。レース系のイベントとロングライドなどを1台で両立させたい人にはお勧めの1台だ。特にそのハイコストパフォーマンスは、高校生や大学生といった学生ライダーには訴求力があるだろう。

また、最初の1台として考えると、カーボンバイクを買うのもいいが、「RCS6」ならば、カーボン車のみの予算でウェアやヘルメット、シューズなどを買うこともできる。イベントのエントリフィーに充てることも可能だ。

さらに「RCS6」はアンカーということで複数色のレーシングカラー以外にも、単色で32種類ものカラーが用意されている。自分好みのカラーリングが手に入るのもユーザーにとって価値が高い。このような付加価値を考えるとトータルで満足感の高い自転車ライフを送ることができる1台になってくれるだろう。

アンカー RCS6エキップアンカー RCS6エキップ (c)Makoto.AYANO/cyclowired.jp

アンカー RCS6エキップ

フレーム SQ-SHAPE Aluminum+Carbon A7005
フォーク カーボンモノコック ストレート形状 スーパーオーバーサイズ
ホイール シマノWH-R500
タイヤ ブリヂストン EXTENZA PR-2X 700X23C
コンポ シマノ 105
カラー レッド、ブルー、ブラック、ダークシルバー、ゴールド(レーシングカラー)
    シングルカラー32種
サイズ 460S,460,490,520,550
完成車重量 8.7kg(490mm)
希望小売価格(税込み) 195,000円(完成車)105,000円(フレーム)






インプレライダーのプロフィール

流郷克哉流郷克哉 流郷克哉(ユーキャン)

東京、神奈川、静岡、山梨で展開するサイクルショップ「YOU CAN(ユーキャン)」の多摩境店店長。選手時代は脱サラ後、複数チームを経て30歳で日本鋪道と契約。生涯成績は国内でジャパンカップアマチュア部門優勝、ツールド東北ステージ優勝など。フランスに単身渡仏後、1シーズンで60弱のロードレースに参戦。エリート4勝、ほか1勝を挙げるほか、10位以内フィニッシュが20レースを越えた。2004年に引退し、現在ユーキャン多摩境店にて店長をしながら高校生ら若手育成に努めている。

YOU CAN



若生正剛若生正剛 若生正剛(なるしまフレンド)

自転車店「なるしまフレンド」店員。昭和第一学園在籍時に競技を始める。トラック競技で2年生時に初めてインターハイ出場を果たした。同じく3年生時は選抜、インターハイと大きな大会を連続出場。卒業後、自転車の楽しさを伝えたいと思い立ち、なるしまフレンドに入社。現在3年目を迎える。プロ選手としての経験が無いものの、ショップ店員としてはそれを逆手に一般自転車乗りの感覚を共有できることを強みにして接客している。

なるしまフレンド

ウェア協力:B・EMME(フォーチュン) 


photo:Makoto.Ayano
text:Kiichi.Gotoda

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