今年のブエルタ・ア・エスパーニャを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)は、名実共にリクイガス・キャノンデールのエースだ。来シーズンは母国最大のレース、ジロ・デ・イタリアでキャプテンを担う。イヴァン・バッソ(イタリア)が手にしたジロのトロフィーを受け継ぎたいと宣言した。

ブエルタを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)ブエルタを制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Cor Vosサルデーニャ島で行なわれていたチームキャンプに参加したニーバリは「僕はイタリア人だ。だからジロ・デ・イタリアは自分にとって大きな存在。特に来年のジロに出場する意味は大きい」と気持ちを新たに宣言する。

今シーズン、ニーバリのスケジュールは、当初の予定より大きく異なるものになった。だが、結果的にそれが好成績に結びついたと本人も自負している。

マリアローザを3日間着用したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がシャンパンファイトマリアローザを3日間着用したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)がシャンパンファイト photo:Kei Tsujiジロの直前、UCIのバイオロジカルパスポートによってレース出場が拒まれたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)の代役として、急遽ジロ出場が決まったニーバリ。食べていたジェラートを放り出したニーバリは、大急ぎでアムステルダム行きのフライトに搭乗した。そこでニーバリは献身的なアシストぶりを発揮し、バッソのマリアローザ獲得をサポート。自身もステージ優勝を飾り、3日間マリアローザを着用する活躍だった。

その代償として、ニーバリは前年度総合7位のツール・ド・フランスをスキップし、代わりにブエルタ・ア・エスパーニャをスケジュールに追加した。ジロでの経験が、ブエルタでの自信溢れる走りに繋がったのは言うまでもない。1990年のマルコ・ジョヴァネッティ以来、実に20年ぶりにイタリア人ブエルタ覇者が誕生した。

サンペッレグリーノのチームキャンプに参加したイヴァン・バッソ(イタリア)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)サンペッレグリーノのチームキャンプに参加したイヴァン・バッソ(イタリア)とヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア) photo:Cor Vosイタリア最大級の規模を誇るリクイガス・キャノンデールは、ジロでニーバリを、ツールでバッソをキャプテンに任命する予定だ。ニーバリにとって、こんな早い時期にキャプテンの座を確約されるのは初めて。

ニーバリのトレーナーを務めるパオロ・スロンゴ氏は「今年のブエルタは最初からリーダーとして総合優勝を狙っていたわけじゃなかった。このチームは、グランツールで2人のリーダーを出場させるのが定石。そうすることで調子の良い選手を選び出せ、更にプレッシャーを分割できる。でも来年は違う。彼が唯一無比のリーダーだ。ジロへの精神的なモチベーションは違うはず」と語る。

チームキャンプでチェスに興じるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)とイヴァン・バッソ(イタリア)チームキャンプでチェスに興じるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)とイヴァン・バッソ(イタリア) photo:Cor Vosニーバリ本人は、初めての試みにも平静を保っている。「大きなプレッシャーを抱えてレースに挑むことになる。そんな経験は初めてだ。でも周りに経験豊かな指導者がいるので、落ち着いて準備に取りかかりたい」

23歳で2008年のツールに挑んだニーバリは総合20位という成績を残した。昨年は順位を総合7位まで上げることに成功している。アルベルト・コンタドール(スペイン)やアンディ・シュレク(ルクセンブルク)と対等に闘う自信を見せているが、来年はフランスレースの野望をバッソに託す。

「ツールにも出場するかも知れない。出場するなら、そこでイヴァンをサポートする。でもジロとツールを連戦するなら、ブエルタ連覇の夢は断たれる。とにかくジロは何としても取りたいタイトル。ツールは国際的に重要度が高いけど、ジロも同等にイタリア人にとって重要なレース。どっちが好きとかいう問題じゃない」

ニーバリはシチリア島のメッシーナで両親とクリスマスを迎える。注目のエトナ火山ステージのスタート地点だ。バッソに電話して「ブオンナターレ(メリークリスマス)」を伝えるとともに、来シーズンの目標について語り合うという。リクイガス・キャノンデールは翌年1月10日にミラノで開催するプレゼンテーションでレーススケジュールを公表する予定だ。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji