ワールドカップ第5戦、雪のカルムトハウト大会はベルギーの新星トム・ムーセンがベテラン、ニイスをスプリントで下しワールドカップ初優勝を飾った。日本人選手も遠征初戦にも関わらず善戦。まだ目標には届かないが、いいスタートを切った。

現地スタッフが精力的に日本人3選手をサポート現地スタッフが精力的に日本人3選手をサポート photo:Sonoko Tanaka大会数日前から本格的な雪が降り始め、今年もシクロクロス・ワールドカップ第5戦カルムトハウト大会は真っ白な雪の中で開催された。

コースは森のなかのカーブが連続するテクニカルなもの。レースが進むにつれて路面は踏み固められ、さらに気温が下がったために一部は凍結し、とても滑りやすい状態へと変化した。

スタート前にアップする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)スタート前にアップする辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)と竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanakaスタート時にリードしたのは、フランスチャンピオンジャージを着るフランシス・ムレー(FDJ)。集団の先頭でオフロードへと入り、そのままムレーが4周回目までリードする。すぐ後ろには、ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)やスヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)、ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)など有力選手が一列棒状に続く。

4周回目でムレーが後続に吸収されると、6名に絞られた有力選手たちの攻防がヒートアップ。このなかで有利に動いたのがテレネット・フィデア勢。6人のパック内にケビン・パウエルズに加えてアンダー23カテゴリー上がり、エリート1年目のトム・ムーセン(ベルギー、テレネット・フィデア)が含まれていた。

ネイスを下したトム・ムーセン(ベルギー、テレネット・フィデア)ネイスを下したトム・ムーセン(ベルギー、テレネット・フィデア) photo:Cor Vosケビンが先行すると、トムが後続のライバルたちを抑えるようにして走る。

しびれを切らせて、トムを抜き去ったのがベルギーチャンピオン・スヴェン・ネイス。大歓声のなか先頭を走るケビンをも抜き去り、終盤で先行する。

その後ろでピッタリとマークするのはケビンとトムのテレネット・フィデアの2人。そのままの体制でゴールへと向かう。最後のカーブを抜けて、ゴールラインへ向けてスプリント勝負となった。そして両手を挙げたのはトム。ベテラン・ネイスを23歳の新星が下した。

今季、ワールドカップに初参戦した日本人選手3人。男子エリートでは辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)が45位(+4:23)、竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)が54位(+5:28)でレースを終えた。辻浦は中盤まで30番代をキープ。欧州初戦としてはまずまずの手応えを掴んだようだ。

一方の女子は、アメリカチャンピオン、キャサリン・コンプトンが後続に31秒差をつけ優勝した。日本チャンピオン豊岡英子(パナソニックレディース)はトップから5分8秒遅れの35位でフィニッシュした。

雪が降り積もる難コースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)雪が降り積もる難コースを走る辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanakaワールドカップ初戦を迎えた竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)ワールドカップ初戦を迎えた竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka35位に入った豊岡英子(パナソニックレディース)35位に入った豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka

辻浦圭一のコメント

45位に入った全日本チャンピオンの辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)45位に入った全日本チャンピオンの辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko Tanaka「ヨーロッパに着いて4日目、時差や体調を気にして控えめに行こうと思っていたけど、レースが始まってみると興奮してきて、前半はいいペースで走ることができたと思う。大きなパック内で走れて“レースをしている”という感覚があったし、久しぶりにストレスなく走れて、純粋にチャレンジしながら走る面白さを感じた。

ベルギーを拠点とするのは2年目、現地スタッフともうまくいっている。昨夜、同じホテルに泊まっていたイタリアチームが機材を盗まれるという事件があったけど、彼らは事前に危ないと思って対応してくれていた。信頼できるスタッフに感謝している。

拠点に来てみて、昨年以上に町全体が応援してくれている印象をもった。去年以上にストレスなくレースに集中できる環境がある。恩返しできるように頑張っていきたいと思う」

竹之内悠のコメント

54位で闘いを終えた竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)54位で闘いを終えた竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) photo:Sonoko Tanaka「1番うしろからのスタート。去年だったら焦って転んだりしてしまっていたと思うけど、今年は冷静に走れていた。2周回目、3周回目と順位を上げることができたと思う。去年に比べて、出し切れているし、余力をもって走れている。でもラスト2周回で脚は出し切ってしまっていた。移動後はいつもこう。来週になったら軽くなっているハズなので、そこでちゃんと走れるようになりたい」

豊岡英子のコメント

「去年はまったく走れなかったレースなので、どうなることかと思ったけど、去年とは違う感覚があり、もっと調整すれば上に行ける手応えがある。スタート位置だって、今回マリアンヌ・フォスが最後尾からスタートして、2番に入っていることを考えれば言い訳にすぎないと思う。今回の結果は満足していないけど、カラダが動いている感じがあるし、雪への怖さもなくなっている。日本では味わえない女子選手のギラギラした気迫のなか走れるのはいいこと。

この時期にヨーロッパに来るか悩んだけど、無理して来てよかったと思う。世界選手権までに2週間ほど帰国してコンディションを整える予定。初めてのことで賭だけど頑張りたいと思う」

観客が詰めかけた森の中を進む豊岡英子(パナソニックレディース)観客が詰めかけた森の中を進む豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Sonoko Tanaka

男子エリート
1位 トム・ムーセン(ベルギー、テレネット・フィデア)    1h02'21"
2位 スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)
3位 ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)    +02"
4位 フランシス・ムレー(フランス、FDJ)            +07"
5位 ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)          +30"
45位 辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)        +4'23"
54位 竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)      +5'28"

女子エリート
1位 キャサリン・コンプトン(アメリカ、プラネットバイク)   38'18"
2位 マリアンヌ・フォス(オランダ、ネーデルランド・ブロイト)  +31"
3位 カテリーナ・ナシュ(チェコ、ルナ・プロチーム)       +35"
4位 サンヌ・ファンパーセン(オランダ、ブレインウォッシュ)   +47"
5位 サンヌ・カント(ベルギー、BKCP)             +1'19"
35位 豊岡英子(パナソニックレディース)           +5'08"

text&photo:Sonoko Tanaka