冬を迎えシクロクロスが盛り上がっている。9月頃から始まった2010~2011シーズンだが、シーズン終盤、1月末に開催される世界選手権に向けていよいよ本格的な“旬”を迎えようとしている。今年はストリーミング配信などもあり、日本にいながらビッグレースが観戦可能となった。魅力たっぷりのシクロクロスの観戦のポイントを紹介しよう。

雪解けの泥との闘い雪解けの泥との闘い (c)CorVosレースの種類

欧州では10月~2月のシーズン中、世界チャンピオンクラスの選手が参戦するビッグレースが毎週末、年末年始にいたっては毎日のように開催されている。レースの種類は、もっとも名誉ある世界選手権(2011年1月29日にドイツ・セントウェンデルで開催)、UCIが開催するワールドカップ(全8戦)、合わせて人気のシリーズ戦、GVAトロフィー(全8戦)とスーパープレスティージュ(全8戦)が核となる。その他、日本でも開催されているUCI公認レースや、ナショナルレースと言われる小さなレースが各地で頻繁に行われている。

GVAトロフィーやスーパープレスティージュでは、UCIポイントが得られるほか、シリーズランキングも争われている。また多くの観客が集まってテレビでも生中継されるので、ワールドカップ同等の盛り上がりをみせる。これらは賞金もとても高額だ。

トップ選手はワールドカップや各シリーズ戦に出ることで調子を上げていき、最終的には世界選手権でアルカンシェルをめざすのがシーズンの流れになる。


世界トップ4強の熱いバトルに注目

エリートレースでの出走人数は約70人~100人弱。ロードレースと比較すると少ない。したがって、トップ選手も限られてくる。今季注目するべき選手を紹介していこう。

アルカンシェルを着るゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア)アルカンシェルを着るゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア) (c)CorVos現世界チャンピオン 
ゼネク・スティバル(チェコ、テレネット・フィデア)


昨シーズン自国チェコで開催された世界選手権で初優勝し、アルカンシェルを身につける25歳のチェコ人。開幕緒戦で圧勝するなど今季も好調に走り出したが、悪コンディションのレースやオーバートレーニングにより左膝を痛め、現在戦線離脱中。しかし、すでにトレーニングを開始し、クリスマス~年末頃のレースで復帰をめざしている。





ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP) (c)CorVos2009年世界チャンピオン
ニールス・アルベール(ベルギー、BKCP)


昨シーズン23歳の若さで世界チャンピオンを獲得したベルギー期待の新星。BMXレースからシクロクロスに転向している。今シーズン、序盤から膝のケガに悩まされたが、すでに回復。現在ワールドカップで2連勝しており、アルカンシェル奪還をめざす。甘いルックスが印象的だ。





スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット) (c)CorVosベルギーチャンピオン
スヴェン・ネイス(ベルギー、ランドバウクレジット)


欧州一のシクロクロス熱を誇るベルギーで、圧倒的支持を集める34歳のベルギー人選手。すでに“レジェンド”との呼び声も高く、これまで獲得したタイトルはベルギーチャンピオン7回、世界選手権(2004-2005)1回。今季はまだワールドカップでの勝ち星はないが、調子は上向き。年明けに開催されるベルギー選手権と、近年2位以下に甘んじている世界選手権での優勝を狙う。




ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア) (c)CorVosスティバルの僚友
ケビン・パウエルズ(ベルギー、テレネット・フィデア)


安定した成績ながら、今季好調ぶりが伺える26歳のベルギー人。物静かな性格の背後には、2004年に自転車選手だった兄を事故で亡くしているというエピソードがある。チームのエース、スティバルが不調の今シーズン、チームの期待を背負って走りに磨きをかける。ツアー・オブ・ジャパンでの来日経験もある。







しばしば設けられる担ぎセクションしばしば設けられる担ぎセクション (c)CorVosレースのルール

国際的な大会のルールは、日本の大会(UCI公認レースなど)とほぼ同じ。男子エリートの競技時間は60分。3キロ前後の周回コースを使って争われ、最初の周回でのタイムを計測し、60分間での周回数が決定する。規定周回数で最初にゴールした選手が優勝者となる。

選手はロードレース同様に“チーム”に入っているが、チームの出走人数などは決められず、チームプレイはロードレースほど存在しない。少人数のパック(集団)内でのライバルとの駆け引きはあるが、シクロクロスはほぼ個人競技と言ってしまってもいいだろう。

コースレイアウトは大会によってさまざまだ。どこのコースも必ず乗車不可能な障害物が設けられるが、砂地のコースや森のコース、BMX用のコースを組み込んだり、鉄骨で大きな階段や立体交差が作られるコースもある。各大会、個性的なコースも観戦のポイントだろう。

また、どんな悪天候でもシクロクロスレースはまず中止にならない。雨が降れば泥、雪が降って気温が下がれば氷上でのレースとなる。ヨーロッパの厳しい天候もシクロクロスレース攻略のカギとなってくるだろう。

雪が降ろうが欧州のファンが大挙してシクロクロス観戦に駆けつける雪が降ろうが欧州のファンが大挙してシクロクロス観戦に駆けつける (c)CorVosシクロクロスワールドカップ戦の表彰式 シクロクロスワールドカップ戦の表彰式  (c)CorVos


日本人選手の欧州遠征もスタート! 辻浦ら4人が転戦生活

日本チャンピオン辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)と豊岡英子(パナソニックレディース)日本チャンピオン辻浦圭一(ブリヂストンアンカー)と豊岡英子(パナソニックレディース) (c)Sonoko.TANAKA竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス) (c)Sonoko.TANAKA小坂光(宇都宮ブリッツェン)小坂光(宇都宮ブリッツェン) (c)Sonoko.TANAKA


欧州のスーパーで食材を買出しする辻浦圭一欧州のスーパーで食材を買出しする辻浦圭一 (c)Sonoko.TANAKA12月12日の全日本選手権を終えて、今年も国内トップ選手の欧州遠征が始まった。
渡欧メンバーは日本チャンピオン・辻浦圭一(チームブリヂストン・アンカー)、全日本2位・竹之内悠(チームユーラシア・ムセウバイクス)、女子日本チャンピオン・豊岡英子(パナソニックレディース)に、翌週から小坂光(宇都宮ブリッツェン)が合流予定。ワールドカップやGVAトロフィー、スーパープレスティージュなどを転戦する。

ハードなレース展開に加えて、雪や寒さなど日本人選手には慣れていない環境で世界に挑戦する彼らを応援したい。




日本チームの合宿所の様子 日本チームの合宿所の様子  (c)Sonoko.TANAKA

text:Sonoko.TANAKA
photo:CorVos,Sonoko.TANAKA


現地レポートにご期待ください

シクロワイアードでは、これから世界選手権まで、ワールドカップをはじめ欧州の主要レースを転戦する日本チームに帯同取材するフォトジャーナリストの田中苑子のレポートにより現地の様子を随時詳細にお伝えしていきます。ご期待ください。

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