超級山岳ゴールで争われたブエルタ・ア・エスパーニャ2010第20ステージは総合2位のエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)が制した。1秒遅れにまとめたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)が総合優勝に王手をかけた。

山岳賞を確定させたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)山岳賞を確定させたダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス) photo:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2010最大の山場になると見られた第20ステージ。超級山岳ボラ・デル・ムンドの頂上ゴールに挑む総合リーダーのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)と2位のエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)との差は50秒。充分に逆転がありうる差に、ファンはスペクタクルを期待した。

レースは15km地点で、フィリップ・ジルベール(ベルギー、オメガファーマ・ロット)、ジャンクリストフ・ペロー(フランス、オメガファーマ・ロット)、ダビ・アローヨ(スペイン、ケスデパーニュ)、ダニーロ・ホンド(ドイツ、ランプレ・ファルネーゼヴィーニ)らを含む18名の逃げが決まる。

63km地点の1級山岳レオン峠を先頭で通過したのは昨日の優勝者ジルベール。コンディションの良さを見せつける。一時は5分近くあった差も、107km地点で1分40秒まで減少。続く120km地点の1級山岳ナバセラーダ峠で逃げグループは再編成。集団から飛び出した選手が加わり、新たに20名弱のグループが形成された。


ニーバリを突き放し、独走するエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)ニーバリを突き放し、独走するエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Unipublicここには山岳賞ジャージを着るダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)、アレクサンドル・コロブネフ(ロシア、カチューシャ)、アメツ・チュルカ(スペイン、エウスカルテル)、ヨハン・チョップ(スイス、Bboxブイグテレコム)、ルーベン・プラサ(スペイン、ケスデパーニュ)らが入った。

ナバセラーダ峠を先頭で通過したのはプラサ。それにチョップが続き、しばらく2人での走行となるが、やがてウラディミール・グセフ(ロシア、カチューシャ)、ビエル・カドリ(フランス、アージェードゥーゼル)、イニーゴ・クエスタ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)が加わった。

一方のメイン集団ではシャコベオ・ガリシアがまるでスプリントステージのような高速牽引を見せる。総合2位につけるモスケラが勝つためには、ステージ優勝時のボーナスタイム20秒を得ることは必須。そのために逃げる選手を吸収することと、ライバルたちを早い段階で疲弊させることが目的の走りだ。

前を行くモスケラを懸命に追うヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)前を行くモスケラを懸命に追うヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス) photo:Unipublic最後の超級山岳ボラ・デル・ムンドに差しかかると、逃げグループの選手たちの差はみるみる削り取られていく。最後まで粘ったカドリは残り9kmまで独走を見せたが、ダビド・ガルシア(スペイン、シャコベオ・ガリシア)、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス・ドイモ)がペースを作る集団に吸収されてしまった。

ここでレミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)がカウンターアタックで飛び出すも、残り7kmで吸収。その間、総合上位陣はお互いに警戒し、動きを見せない。マイヨロホのニーバリはモスケラをぴったりとマークし続ける。

残り4.5kmで口火を切ったのはフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)のアタック。これは成功しなかったが、続いて総合2位のモスケラが勝負をかけてアタック。強力なアタックに反応できたのはニーバリだけだが、そのニーバリもついていくことができない。

急勾配の区間を軽快に登るモスケラと、シッティングで力強いペダリングで対抗するニーバリとの差は一時15秒まで開く。このままモスケラが差を広げ続けるかと思われたが、ニーバリも粘りの走りで最終局面に差を挽回。なんと残り100mでニーバリがモスケラに追いついた。

ニーバリはそのままモスケラをかわそうとするが、ここはモスケラが意地を見せて前を譲らない。モスケラが先頭のままゴールに飛び込み、ステージ優勝を遂げた。ニーバリは1秒遅れでまとめ、ブエルタ総合優勝に王手をかけた。

ニーバリを振り切ってゴールするエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)ニーバリを振り切ってゴールするエセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア) photo:Unipublic

3位には追い上げたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が21秒遅れで入った。総合上位陣の成績に大きな変動は無かった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2010は翌第21ステージで幕を下ろす。首都マドリッドでマイヨ・ロホを着るのは25歳のニーバリということになるだろう。総合は決着がついたが、スプリント賞争いは加熱している。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア)かタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)か、そちらのバトルにも注目だ。


ブエルタ・ア・エスパーニャ2010第20ステージ結果
1位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)   4h45'30"
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       +1"
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         +21"
4位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)       +35"
5位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)    +39"
6位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)    +42"
7位 ミケル・ニエベ(スペイン、エウスカルテル)           +50"
8位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTCコロンビア)     +52"
9位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー)    +55"
10位 レミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)    +1'00"

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       85h16'05"
2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)        +41"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、チームHTC・コロンビア)      +3'02"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)           +4'20"
5位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)        +4'43"
6位 シャビエル・トンド(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +4'52"
7位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、アージェードゥーゼル)     +5'03"
8位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)     +6'06"    
9位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)    +6'09"
10位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)      +7'35"

ポイント賞(プントス)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームHTC・コロンビア) 136pts
2位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)   124pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       119pts

山岳賞(モンターニャ)
1位 ダヴィ・モンクティエ(フランス、コフィディス)        51pts
2位 セラフィン・マルティネス(スペイン、シャコベオ・ガリシア)  43pts
3位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)    36pts

複合賞(コンビナーダ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)       9pts
2位 エセキエル・モスケラ(スペイン、シャコベオ・ガリシア)     11pts
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)         12pts

チーム総合成績
1位 カチューシャ         255h40'44"
2位 ケースデパーニュ           +27"
3位 シャコベオ・ガリシア       +12'13"


text:Yufta Omata
photo:Cor Vos, Unipublic