2009年3月28日から2日間、3ステージで行なわれたクリテリウム・アンテルナシオナル(UCI2.HC)。山岳と個人TTでリードを広げたイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)が3年連続、5回目の総合優勝に輝いた。3年連続出場の土井雪広(日本、スキル・シマノ)は総合77位に。

今年で開催78回を迎えるクリテリウム・アンテルナシオナルは、2日間に3ステージが行なわれる超短期ステージレース。「クリテリウム」の名を冠しているが、実際は初日に190kmのロードレース、2日目午前に98.5kmのロードレース、午後に8.3kmの個人タイムトライアルが行なわれる。

主催はツール・ド・フランスと同じASO(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)で、プロツアー11チームと、スキル・シマノを始めとするプロコンチネンタル7チームが出場。土井雪広は3年連続出場だ。


3月28日 第1ステージ
モントワ〜シャルルヴィル・メジエール 190km
第1ステージ・コースプロフィール第1ステージ・コースプロフィール photo:www.letour.fr3つの山岳ポイントが設定された第1ステージは、アルノー・コワイオ(フランス、ケースデパーニュ)、クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)、ティモシー・ダッガン(アメリカ、ガーミン)、ダヴィ・ルレイ(フランス、アグリチュベル)の4名がエスケープ。最大9分35秒のリードを得た。

今大会の王者フォイクト擁するサクソバンクが集団コントロールを担い、レース後半にかけてタイム差は縮小。ゴール13km手前に設定された山岳ポイントの下りでルレイ以外の逃げメンバーは吸収。諦めずに逃げるルレイもラスト10kmで吸収された。

集団スプリントを制したジミー・カスペール(フランス、ベッソンショスール)集団スプリントを制したジミー・カスペール(フランス、ベッソンショスール) photo:www.letour.frスプリンターチームがスプリント勝負の体制を整える中、ゴール5km手前で落車が発生し、メイン集団は大きく二つに分断される。パリ〜ニース総合8位のジョナタン・イヴェール(フランス、スキル・シマノ)が後方集団に取り残されたため、土井雪広らが追撃を試みたが届かず、先頭は50名ほどの集団によるスプリント勝負へ。

最後はヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)やシリル・ルモワンヌ(フランス、スキル・シマノ)を破ったジミー・カスペール(フランス、ベッソンショスール)が勝利。ディフェンディングチャンピオンのフォイクトは同タイムの16位でゴールした。

エトワール・ド・ベセージュでステージ2連勝を飾ったカスペールにとって、これはシーズン3勝目。ユニベット時代の2007年ヘント〜ウェベルヘムで大怪我を負い、アグリチュベルで復活した2008年ツール・ド・フランスでは喘息薬の過剰摂取によりドーピング陽性。困難な時期を経験したカスペールは「今シーズンはゼロからのスタートだった。チームを招待してくれた(ASOの)クリスティアン・プリュドム氏に感謝したい」とコメントしている。

第1ステージ結果
1位 ジミー・カスペール(フランス、ベッソンショスール)4h42'15"
2位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、フランセーズデジュー)
3位 シリル・ルモワンヌ(フランス、スキル・シマノ)
4位 マーク・レンショー(オーストラリア、チームコロンビア)
5位 ベン・スウィフト(イギリス、カチューシャ)
78位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+34"
総合首位 ジミー・カスペール(フランス、ベッソンショスール)


3月29日 第2ステージ
レ・ヴィエイユ・フォルジュ〜モンテルメ 98.5km
第2ステージ・コースプロフィール第2ステージ・コースプロフィール photo:www.letour.fr距離は100kmに満たないが、8つの山岳ポイントが登場する第2ステージ。スタート直後に始まる山岳ポイントからレースは動き、レミ・ディグレゴリオ(フランス、フランセーズデジュー)が早速アタックを仕掛けて飛び出した。

下りでダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)、クレモン・ローテレリ(フランス、ヴァカンソレイユ)、アラン・ペレス(スペイン、エウスカルテル)、フォイクトの4名が先頭ディグレゴリオに合流。遅れてサンディ・カザール(フランス、フランセーズデジュー)もこれに加わった。

逃げ続けるイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)とダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ)逃げ続けるイェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)とダニエル・ナバーロ(スペイン、アスタナ) photo:www.letour.fr総合優勝の最有力候補であるフォイクトが入っている逃げを、ライバルチームは易々と先行させるわけにはいかない。メイン集団はスキル・シマノを中心に追撃体制がとられ、タイム差は最大2分をキープ。エースのルモワンヌ(前日3位)のために、土井雪広は献身的に集団を牽引した。

やがて先頭グループからは脱落者が多発し、ゴールまで20kmを残して先頭はフォイクトとナバーロの2名に。タイム差が30秒を推移したままレースは終盤へと進み、集団からクリストフ・モロー(フランス、アグリチュベル)がカウンターアタックを仕掛けるが失敗。
メイン集団を牽引する土井雪広(日本、スキル・シマノ)メイン集団を牽引する土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:www.letour.frゴールに向かう上りでフォイクトはナバーロを振るい落として独走を開始する。ナバーロが追走に飲み込まれる中、フォイクトがゴールまで逃げ切って優勝。7秒遅れでダニー・ペイト(アメリカ、ガーミン)、9秒遅れでスプリンターのロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)が入った。

フォイクトは5回目の総合優勝に王手をかけた。短期間ステージレースのスペシャリストであるフォイクトは「今日のコースは熟知していた。早めに仕掛けて強い選手と逃げたかった。後ろから集団が迫ってきた時は逃げ切れるか不安だったけど、何とか勝利に手が届いたよ。でもまだリードは少なく、総合優勝の行方はわからない」とコメント。午後のタイムトライアルで総合争いは決する。

集団牽引に尽力した土井雪広は6分24秒遅れのグルペットでゴール。しかしその働きが実を結び、12秒遅れのステージ9位に入ったルモワンヌが総合3位をキープしている。

第2ステージ結果
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)2h30'22"
2位 ダニー・ペイト(アメリカ、ガーミン)+07"
3位 ロメン・フェイユ(フランス、アグリチュベル)+09"
4位 ジェローム・コッペル(フランス、フランセーズデジュー)
5位 マッテーオ・カラーラ(イタリア、ヴァカンソレイユ)+12"
79位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+6'24"
総合首位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)


3月29日 第3ステージ
シャルルヴィル・メジエール 8.3km(個人TT)
第3ステージ・コースプロフィール第3ステージ・コースプロフィール photo:www.letour.fr最終決戦は8.3km(高低差50m)の短距離個人タイムトライアル。パリ〜ニースで山岳賞を獲得したトニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)が、ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)を6秒上回る10分05秒をマーク。昨年のステージ2位から順位を一つ上げ、プロレース5勝目を飾った。

最終走者のフォイクトは、午前の疲れを感じさせない安定した走りで18秒遅れの5位。ステージ2位のフランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)を総合2秒差で下し、1999年、2004年、2005年、2008年に続く5度目の総合優勝に輝いた。これはレイモン・プリドールに肩を並べる大記録だ。

表彰台、左から3位ダニー・ペイト(アメリカ、ガーミン)、優勝イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、2位フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)、新人賞ジェローム・コッペル(フランス、フランセーズデジュー)表彰台、左から3位ダニー・ペイト(アメリカ、ガーミン)、優勝イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)、2位フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)、新人賞ジェローム・コッペル(フランス、フランセーズデジュー) photo:www.letour.frアームストロングと同世代の37歳フォイクトは、ポイント賞と山岳賞でもトップに立ち、表彰台ではイエロージャージを含め3つのジャージを受け取った。まさに完勝。チーム総合成績でもサクソバンクはトップに輝いている。

総合優勝に僅か2秒届かなかったラボンは総合2位。しかしチームコロンビアは、ステージ優勝のマルティンを含め、トップ6に4名を送り込む大活躍を見せた。グランツールではその厚い選手層は大きな武器になるだろう。

スキル・シマノ勢はルモワンヌが28秒遅れのステージ12位。総合3位から5位にダウンし、惜しくも表彰台を逃した。土井雪広は91位のタイムでゴールし、総合77位に。過去最高位でアシストの仕事を終えた。

第3ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア)10'05"
2位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+06"
3位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)+08"
4位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+18"
5位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)
91位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+1'36"

個人総合成績
1位 イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)7h23'00"
2位 フランティセク・ラボン(チェコ、チームコロンビア)+02"
3位 ダニー・ペイト(アメリカ、ガーミン)+09"
4位 マキシム・モンフォール(ベルギー、チームコロンビア)+12"
5位 シリル・ルモワンヌ(フランス、スキル・シマノ)+18"
77位 土井雪広(日本、スキル・シマノ)+8'16"

ポイント賞
イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)

山岳賞
イェンス・フォイクト(ドイツ、サクソバンク)

新人賞
ジェローム・コッペル(フランス、フランセーズデジュー)

チーム総合成績
サクソバンク

レース展開、およびコメントはレース公式サイトより。