ポー市街地で繰り広げられたツール・ド・フランス第5ステージのスプリント勝負でオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)が勝利。マイヨジョーヌも巻き込まれる終盤の落車が混沌を起こしたものの、総合上位勢の順位変動はなかった。



7月8日(水)第5ステージ
ランヌメザン〜ポー 走行距離158.3km獲得標高1,600m(平坦)


スプリントを狙うマイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー) photo:A.S.O.
特別な暑さには特別な対策を photo:A.S.O.


マイヨジョーヌに身を包んだトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が歓声を受ける photo:A.S.O.

ようやくピュアスプリンターたちに出番がやってきた。大会5日目まで集団スプリントが訪れなかったのは近年では2015年以来で、コース設定によるものでは1992年以来34年ぶりのこと。初日のチームタイムトライアル、モンジュイックの丘での絞り込み、そして大会初の山岳ステージでの総合争いと、連日続く体力を削り取る酷暑。誰にとっても脚を休めたいこの日は、スプリント勝負に持ち込まれた最終盤まで極めて平穏な一日となった。

ランヌメザンを出発した選手たちは、反時計回りに弧を描くようにポーを目指す。しかしすんなりとポーに向かうかというと決してそうではなく、フィニッシュ手前26.6km地点には3級山岳に設定されたコート・ド・バレイ(登坂距離1.1km/平均勾配8.8%)を含めて丘が続き、この日の獲得標高は1,600m。ピレネー山脈の勝負どころであるトゥールマレーやオービクスから程近いポーに立ち寄るのは今回で77回目。ヴェルダン広場に至る市街地コースのレイアウトやフィニッシュ地点は例年同様と、スプリンターにとってはお馴染みのコースだ。

第5ステージ ランヌメザン〜ポー image:A.S.O.

この日は前日第4ステージでタイムアウトを喫したケランド・オブライアン(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)を除く181名が出走。人生初のマイヨジョーヌを着用したトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)を先頭にランヌメザンを出発し、10分ほどのパレード走行を経てクリスティアン・プリュドム氏が旗を振るディレクターカーに導かれて0km地点を通過。するとたった一人、バティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ)が飛び出しを図った。

するすると抜け出したヴェストロフールを追いかける選手は一人も現れず、メイン集団は完全に沈黙を貫いた。第3ステージでは序盤から遅れたアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット・アンテルマルシェ)に付き添う献身的なアシストで最後尾を走ったヴェストロフールが、この日は一転、レース先頭をたった一人で逃げ続けることとなる。

低いポジションで逃げるバティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ) photo:A.S.O.

ツールの風物詩、ひまわり畑を駆け抜ける photo:A.S.O.

隊列前方で走るトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.

過酷な数日間を過ごした後の大会最初のスプリントステージ、しかも向かい風が吹く中の一人逃げという誰もが嫌がる状況で、母国最大のレース初出場を掴んだヴェストロフールが独走。トライアスロン出身というバックグラウンドがよく分かるアグレッシブなエアロポジションで、スプリンターチームがコントロールするメイン集団から3分ほどのリードを積み重ねた。

メイン集団にとっても極めてイージーな1日となったが、ステージ後半戦までに動きがあったのが113km地点の中間スプリントポイントと、その19km後に設定された3級山岳「コート・ド・バレイ」。スプリントポイントではXDSアスタナがチーム総力を挙げて発射したマックス・カンター(ドイツ)がマイヨヴェールのマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)を抑えて先着。さらに山岳ポイントではマイヨアポワを着用するアレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト)が、僅か2ポイント差のランキング2位で追うアレックス・モレナール(オランダ、カハルラル・セグロスRGA)を抑えきって貴重な1ポイントを稼ぐことに成功している。

レース前の逃げ宣言を有言実行し、残り14km地点で捕まるまで実に144kmに渡って逃げたヴェストロフール。Velonによれば逃げている最中の平均スピードは44.2km/hで、平均パワーは336w。もちろんレース後には敢闘賞がその手に渡った。「沿道のたくさんの人が僕の名前を叫んでくれて信じられない気持ちだったよ。ツール・ド・フランスに出場する機会を与えてくれたチームに心から感謝したい。世界最大のレースで、フランス人選手としてフランスの道を走ることができたのは、本当に素晴らしい経験だった。今回は敢闘賞という形だったけれど、小さい時からの夢だったツールの表彰台に上がれて本当に嬉しい」と、3時間12分に渡る単独アタックを経験したヴェストロフールは話している。

たった一人で144kmを逃げたバティスト・ヴェストロフール(フランス、ロット・アンテルマルシェ) photo:A.S.O.

スプリンターチームがメイン集団をコントロール photo:A.S.O.

山岳ポイントをきっかけに飛び出したカスパー・アスグリーン(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)たちは特に展開を作ることなく吸収され、ここから脚を休めた各スプリンターチームが一気呵成。コフィディスとウノエックス・モビリティがリードアウトトレインを並べて主導権争いを続ける中、救済措置適用外の残り5.8kmで複数名が巻き込まれる落車が発生した。

出口が1車線幅に絞られる90度右コーナーで、アウト側に位置取っていた選手数人が分離帯に押しやられ、先ほど山岳ポイントを争ったばかりのモレナールが激しく地面に叩きつけられる。トレーエンや、マイケル・マシューズ(オーストラリア、ジェイコ・アルウラー)も転倒したこのクラッシュで道が塞がれ、トレーエンやタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)、ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)ら、実に100名以上が20秒以上分断した後方グループに取り残される事態に。

早駆けしたオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)がリードを構築したまま先行 photo:CorVos

初のツール区間優勝を挙げたオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM) photo:CorVos

そんな混沌を尻目に、有力スプリンターの大多数が入った先行グループは、猛烈なペースでフィニッシュへ。カンターを含めて3名を残したXDSアスタナ先頭で残り400mを通過したが、リードアウト役のマイク・トゥーニッセン(オランダ)が外れると同時に、カンターの背後からオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM)が仕掛けた。

一気にトップスピードに乗せ、リードを奪ったコーイをカンターやピーダスンが追いかけたものの、バイクを振りながら踏むコーイは1車身以上のリードを保ったままフィニッシュ。ヴィスマ・リースアバイクからデカトロンCMA CGMに移籍してツール初出場を叶えた24歳が、ジロ・デ・イタリアでの3勝に続くグランツール4勝目を勝ち取った。

「このチャンスを得るために厳しすぎるステージを乗り越えなくてはいけなかった。シーズン序盤は思い通りにならず苦しい時期を過ごしたけれど、このレベルに戻れて嬉しい」と語るコーイ。デカトロンにとっては2023年にクールシュヴェルでフェリックス・ガル(オーストリア)が優勝して以来23回目となるツールでのステージ優勝で、スプリントでの勝利としては実に2004年以来だ。

タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)を先頭に、落車で足止めを受けた選手たちがフィニッシュ photo:CorVos

レバーが曲がったバイクでフィニッシュしたトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:CorVos
激しくクラッシュしたアレックス・モレナール(オランダ、カハルラル・セグロスRGA)がフィニッシュ。翌日出走は経過判断に委ねるという photo:CorVos



スプリンター勢の到着から14秒後、混乱を極める分断グループはポガチャルを先頭に続々とフィニッシュ。地面に投げ出されたというトレーエンらを含めてタイム差はつかず、総合順位に変動はなし。激しく落車したモレナールはなんとかフィニッシュにたどり着いたが、翌日の出走は状況経過を見て決定するという。

キャリア初のツール区間優勝を挙げたオラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを守ったトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.
ツール・ド・フランス2026第5ステージ結果
1位 オラフ・コーイ(オランダ、デカトロンCMA CGM) 3:29:07
2位 マックス・カンター(ドイツ、XDSアスタナ)
3位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
4位 フープ・アルツ(オランダ、ロット・アンテルマルシェ)
5位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・プレミアテック)
6位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム)
7位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)
8位 ミラン・フレティン(ベルギー、コフィディス)
9位 アントニー・テュルジス(フランス、トタルエネルジー)
10位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティリード)
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 トースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 16:32:07
2位 ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:28
3位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) +3:50
4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) +7:53
5位 ヨナス・ヴィンゲゴーハンセン(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)
6位 ラムセス・デブライネ(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) +8:06
7位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +8:16
8位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +8:17
9位 フアン・アユソ(スペイン、リドル・トレック) +8:20
10位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンCMA CGM) +8:41
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 143pts
2位 ビニヤム・ギルマイ(エリトリア、NSNサイクリングチーム) 79pts
3位 マックス・カンター(ドイツ、XDSアスタナ) 77pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アレックス・ボーダン(フランス、EFエデュケーション・イージーポスト) 13pts
2位 アレックス・モレナール(オランダ、カハルラル・セグロスRGA) 10pts
3位 ニコラ・プロドム(フランス、デカトロンCMA CGM) 9pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 16:35:57
2位 ラムセス・デブライネ(ベルギー、アルペシン・プレミアテック) +4:16
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +4:27
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 49:32:02
2位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +19:26
3位 UAEチームエミレーツXRG +32:47
text:So Isobe
photo:CorVos, A.S.O.

最新ニュース(全ジャンル)