実質的に選手活動を停止していたクリス・フルーム(イギリス)が正式に引退を表明した。昨年8月の大事故からの復帰はならず、41歳のツール・ド・フランス元チャンピオンがプロトンを去ることとなった。



2017年大会で、4度目のマイヨジョーヌを手にしたクリストファー・フルーム(イギリス、当時チームスカイ) photo:Makoto.AYANO

ツール・ド・フランスを4度制したクリス・フルーム(イギリス)が、プロサイクリストとしての現役生活を完全に終えたことを正式に認めた。複数ソースによれば、ツール開幕の地バルセロナで自身がアンバサダーを務める自動車ブランド「シュコダ」のイベントに出席したフルームは、報道陣からの問いに対し、引退を明確に答えたという。

フルームの去就をめぐっては数ヶ月にわたり不透明な状態が続いていた。2025年末をもってイスラエル・プレミアテックとの契約が満了する状態で、その8月には南仏でのトレーニング中に自動車と衝突。肋骨5本の骨折、脊椎の骨折、肺虚脱、さらには心臓を包む心嚢(しんのう)の破裂という、命を落としかねない大怪我を負った。ヘリコプターで病院へ緊急搬送され、複数回に及ぶ手術とリハビリを続けていたが、結果としてキャリアの終着点となった。

2023年にはジャパンカップに初出場を果たした photo:Makoto AYANO

「残念ながら、去年の夏にあの落車があった。このような形で現役生活を終えたくはなかったけれど、あの瞬間、自分の中ですべてが終わったことは分かっていた」と振り返っている。

ケニア、ナイロビ生まれのフルームはバルロワールドでプロデビューを飾り、2010年に設立初年度のチーム・スカイ(現イネオス・グレナディアーズ)に加入してから絶対的エースに君臨。圧倒的な登坂能力とタイムトライアルでのスピード、さらにはダウンヒルを含めたアグレッシブな戦略によって2013年、2015年、2016年、2017年と4度のツール・ド・フランス総合優勝を達成するなどプロトンを支配した。

さらに2011年と2017年のブエルタ・ア・エスパーニャ、そして2018年のジロ・デ・イタリアを制覇。史上わずか数人しか存在しない「全3大グランツール制覇」の偉業を成し遂げた。なかでも2018年ジロの第19ステージ、コッレ・デッレ・フィネストレで見せた「80kmの独走劇」は、サイクルロードレース史に刻まれる伝説の逆転劇として今もファンの記憶に新しい。

クリストファー・フルーム(イギリス、当時チームスカイ) photo:Kei Tsuji / TDWsport

2019年のクリテリウム・デュ・ドーフィネでの大落車により右大腿骨などを骨折して以降は、かつての圧倒的な強さを取り戻すことはできなかった。それでもイスラエルに移籍後、2022年のツール・ド・フランス第12ステージ(ラルプ・デュエズ)ではステージ3位に。昨年もワールドツアーレースを転戦していたものの、落車で戦線離脱する前のツール・ド・ポローニュが現役最終レースとなった。

フルームは今回のツール・ド・フランスでは、選手としてではなく、大会を支えるアンバサダーとして全行程に帯同する予定だという。

text:So Isobe