PROの名品サドル「Stealth(ステルス)」シリーズに加わった「Stealth 3D」をインプレッション。3Dプリントサドルならではの圧倒的な快適性を維持しつつ、ペダリングパフォーマンスを犠牲にしない絶妙なコシの強さが秀逸。まさに「走るため」のレーシングサドルを紹介する。



PROからリリースされたStealth 3D サドル。名シリーズの最新版であり、PRO初の3Dプリントサドルだ photo:Gakuto Fujiwara

隠れた名サドル、プロ(PRO)の「Stealth(ステルス)」シリーズをご存知だろうか。

派手なイメージこそないけれど、シマノのパーツブランドであるPROの製品群は、質実剛健で、高い機能性を持つことが特徴だ。DURA-ACEを筆頭にするコンポーネントと同じく高い安心感を備え、「迷ったらこれを選べば間違いない」と思わせる信頼性の高いラインナップが特徴。シマノがスポンサードするプロ選手からの信頼感も厚く、レース現場で愛されているブランドだ。

PROにあって、昨今のトレンドであるショートノーズサドルの先駆けとして、目の肥えたロードレーサーから支持を集めてきたのがStealthシリーズだ。初代モデルが2017年にデビューし、2021年には現行型に代替わり。以降、レールとベースをワンピース化した超軽量モデルの「Superlight」や、グラベルやMTBユースに向けた「OFFROAD」を追加するなど、着実にラインナップの拡充を遂げてきた。

そんなStealthシリーズに、サドル界ですでに一般的となった3Dプリントパッドを融合させた最新作が、2026年はじめにデビューした「Stealth 3Dサドル」。PROブランド初となる3Dプリントパッド採用モデルであり、Stealthシリーズの特徴であるペダリング効率向上を最大限引き上げた意欲作だ。

サドル後部は乗り心地と軽さを両立するために、セルの間隔を広げて柔らかく作られている photo:Gakuto Fujiwara

サドル後部にはアクセサリーを取り付けできるボルトを用意 photo:Gakuto Fujiwara
レールはカーボンもしくは金属の2種類。写真ははカーボンモデルだ photo:Gakuto Fujiwara



Stealth 3Dの大部分は薄い表皮(と表現しておきたい)に覆われ、一見した時の「3Dサドル感」こそ薄め。しかしシマノが持つ膨大なバイクフィッティング時の圧力マッピングデータや、テストライダーのフィードバックをもとに、サドル前方から後方にかけて、段階的に柔らかさを増すよう設計されていることなど、極めて「3Dプリントサドル」らしい特徴を持つ。

硬めに仕上げたノーズ部分は高密度で、シマノによれば前傾のアグレッシブなエアロポジションでも快適性を保ちつつ、Stealthシリーズ特有の広いアナトミックフィットカットアウトを合わせることで、坐骨間の軟部組織への圧迫を減らす構造。度を抑えた中央部は坐骨全体に効果的に荷重を分散して局所の圧迫を防ぎ、サドル後方は低密度のハニカム構造パッドを採用してサドル全体の軽量化を図った。ラティス(格子)形状の一つ一つを緻密に設計し、素材を変えることなく、一体品ながら、各部に求められる性能を担保できるのは3Dプリントならではのメリットだ。

Stealth 3Dはフルカーボンベース+レールモデルの上級モデル「TEAM」とINOXレール(金属)を採用した「Performance」の2種類を用意する。どちらも142mmと152mmと2種類の幅を揃えており、今回取り上げたTEAMの重量は224g(実測値は213g/142mm幅モデル)。Performanceの重量は260gだ。

実測重量は213g。カタログ重量(224g)よりも軽い photo:Gakuto Fujiwara

シマノが「PRO史上最も快適なStealthサドル」とアピールするサドルは、実際にどのような乗り味で、どのようなメリットがあるのだろうか。今回はStealth 3Dをはじめ、Stealthシリーズを乗り込んでいるシマノスポンサードのプロMTBライダー、永田隼也に話を聞いた。



永田隼也:「フカフカしないのに、快適。ペダリングを支えてくれるお気に入りサドル」

プロMTBライダーとしてのキャリアを築く永田隼也。現在はグラベルレースにも積極的に取り組んでいる photo:Makoto AYANO

プロMTBライダーとして長年活躍し、肩を骨折したことをきっかけに、2年前からグラベルレースにも精力的に挑戦している永田隼也。身体と直接触れるサドルに対して人一倍神経質だそうで「これだ!」というサドルに巡り会うまでは文字通り“沼”にハマってきたという。そんな彼が「久々に気に入ったサドル」と評価するのがこのStealth 3Dだ。

きっかけは、昨年のアンバウンド・グラベルでノーマル版のStealthを使用し、好印象を抱いたことだった。そこから派生モデルである3Dプリント仕様へとステップアップし、Stealthの各モデルを使い分けているという。

3Dサドルのイメージを覆す「コシの強さ」と「パワー伝達」

「ロード乗りとしては比較的体重が重く、パワーをかける乗り方をする自分にとって、実はこれまですべての3Dプリントサドルが良いわけではありませんでした。他社製の実作をいくつも試してきましたが、どれも自分には柔らかすぎたんです。まるでソファに座っているかのようで、ペダリングのパワーが逃げていくイメージが強く、正直なところ良い印象を持っていませんでした。

「硬さと柔らかさのバランスが絶妙で、快適なのにパワーがしっかりペダルに伝わる」と評価する photo:Makoto AYANO

でも、このStealth 3Dは乗ってみたら非常に感触が良かった。3Dプリントサドル特有の乗り味はありつつも、簡単に言えばもう少し硬くてコシがある。その硬さと柔らかさの絶妙なバランスのおかげで、ペダルを踏み込んだときに力が逃げる感覚が一切ありません。「今までの3Dサドルとは違うな、これはいい感じだぞ」と直感しました。

ノーマルのStealthと比較すると、ざっくり言えばこちらのほうが柔らかいのですが、細かく表現するなら乗り味の「カドが取れている」という感覚です。だからこそ、前乗乗りをしたときの安定感が強く、腰が落ち着く感覚が非常に大きい。ノーマルのStealthだと自分の場合は痛みが出たり、サドルの上で滑りやすかったりする印象がありました。でも、Stealth 3Dは良い塩梅。それがすごく好印象につながっています。」

もともと機材には神経質で、特にサドルはこだわりが強い。だからこそ、お気に入りが見つからないとすぐに沼ってしまう(笑)。これまで愛用していたとあるサドルが廃盤になってしまい、「またサドル探しの旅に出なければいけないのか……」と途方に暮れていたときに出会ったのがStealthだったんです。

サドルの表皮部分は、座り替える時にもパンツが引っかからない。長距離を走っても使いやすい、と言う photo:Makoto AYANO

サドルの好みは人それぞれですが、今の僕のロードバイクにはStealth 3Dが収まっています。個人的にはサドル幅が細身で、サイド部分がなだらかに落ちている形状が好きなのですが、Stealth 3Dはややサイドが張っている形状。それなのに不思議と嫌な感じがありません。これも適材適所で潰れ方を変えられる3Dプリントパッドの恩恵なのかなと感じています。

それと、機能的によく考えられているなと思うのがサドルの前部分です。メッシュ構造の一番外側に「表皮」があしらわれているのですが、これがサドル上でお尻を前後に移動させるときにすごく良い仕事をしています。全面が3Dメッシュ剥き出しだと、汗をかいたときにレーサーパンツが引っかかって動きづらい。表皮を設けることで、サドルの前後で役割と硬さをしっかりと変えているのだと思います。

総じて、このサドルは「パワーがしっかり伝わるレーシングサドル」という印象が強いです。単にふかふかで快適なサドルを目指しているなら別の選択肢がありますが、普通のウレタンパッドでは出せない、3Dプリントならではのクッション性もしっかり備わっている。本当にちょうど良い塩梅で、よくできたサドル。レースやトレーニングでしっかり乗り込む人で、ある程度のコシがある硬さと、3Dサドル特有の突き上げの無さ、その両方のちょうど良い中間のキャラクターを探している人には、間違いなく良い選択肢になります。

ロードでSTEALTH 3Dを実戦投入しているのが愛三工業レーシングチームの留目夕陽。ツアー・オブ・ジャパンでもその様子を確認できた photo:So Isobe

ちなみに、今年のアンバウンド・グラベルでは雨と泥が予想されていたため、サドルの中に泥が入り込むリスクを避けて、Stealth 3Dではなく「Stealth Curved」を選びました。さらに遠征から帰ってきた現在は、超軽量モデルの「Stealth Superlight」を使い始めています。これは本当に重量が軽くて、ダンシング時のバイクの振りが劇的に軽くなるのが魅力です。それら一体成型モデルの軽さと比較してしまうと、このStealth 3Dはやや重量があるという点が、唯一のデメリットと言えるかもしれません。」



PRO Stealth 3D Performanceサドル
カーボンレール: STEALTH 3D TEAM 48,400円(税込)
金属レール:STEALTH 3D PERFORMANCE 39,600円(税込)
幅:142mm/幅152mm

text:So Isobe

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