TOJ東京ステージの直前、大井埠頭で繰り広げられた全日本学生選手権クリテ。すでにプロチームやナショナルチームで活動する未来のスター候補が表彰台に上がった。その男女1-3位の選手のキャラクターと、機材にフォーカスを当てました。まずは男子編から。



TOJ東京ステージの直前に行われる学生クリテ。華やかなスピードバトルの舞台だ photo:So Isobe

日本最大のステージレース「ツアー・オブ・ジャパン(TOJ)」。その最終日となった東京ステージの直前、同じ大井埠頭の公道コースを舞台に開催されたのが「第28回全日本学生選手権クリテリウム大会」だ。

しかし、このクリテリウムを「前座レース」と侮ってはいけない。特に1周ごとに先頭通過した選手がポイントを獲得していく形式で争われる男子レース(女子レースはフィニッシュラインでの勝負)は平均スピードが47km/hに達し、スプリントだけに留まらないアタック合戦が目の前で繰り広げられる。展開の激しさはその後のプロレースからも全く引けをとっていなかった。

第28回全日本学生選手権クリテリウム男子表彰台:2位柚木伸元、1位佐藤后嶺、3位峠龍之介 photo:So Isobe

すでにナショナルチームや国内トッププロチームのジャージを纏って国内外で活動する「未来のスター候補」たちも含まれる超アグレッシブなレース。今回は、そんな激戦の男女表彰台を射止めた上位3名ずつ、計6名の若きタレントをピックアップ。彼ら、彼女たちの今後の目標、そしてその走りを支えるこだわりの愛車を一挙に紹介したいと思います。



男子クリテリウム1位:佐藤后嶺(中央大学)

男子クリテリウム1位:佐藤后嶺(中央大学) photo:So Isobe

「最初のスプリントの時点で"今日は勝てるな"という確信を持つことができました」と自信たっぷりに言うのは、1周目と2周目、そして最後のスプリントを獲る圧倒的な走りで優勝した佐藤后嶺(中央大学)。3年前のニセコクラシックで高校生ながら150kmクラスを制し、中央大学進学後もJCLチーム右京を経て、2025年からシマノレーシングにも籍を置く20歳だ。

「去年前半は上手く成績が出せなかったんですが、後半はインカレで優勝できた。今年も序盤戦がダメでしたが全日本に向けてピーキングができている。それを今日確認できたので良かったです」とレースを振り返る佐藤の目標は、得意コースである全日本選手権U23の優勝とインカレ2連覇。「大学卒業までの2年間、もっと目立つ結果を出して、世界を含めた自転車キャリアに繋げていきたい」と将来を見据えている(佐藤は翌週開催されたJBCFの石川クリテリウムでも3位表彰台に立った)。

PROPEL ADVANCED SLはシマノレーシングのチームバイク。「めちゃくちゃ良く走ってくれますね」と評価する photo:So Isobe
スプリンターながらDI2の追加スイッチ無し。「ハンドルを握り替える時に手に当たってしまうから」とのこと photo:So Isobe



佐藤が駆るのはシマノレーシングのチームバイク。ジャイアントのPROPEL ADVANCED SL(先代モデル)で、もちろんDURA-ACEのフルセットとPROのパーツでアッセンブル。ハンドル周りのセッティングにはこだわりがあるようで、スプリンターながらDI2の追加スイッチを使っていないことを聞くと「握る位置を変えながら走るので、スイッチがあると邪魔になってしまうんです。フィーリングが好きなので、あえて別体式ハンドルを使っているのもポイントですね」とのこと。「今年中には新型PROPELが届く予定なので楽しみです」と笑顔を見せてくれた。



男子クリテリウム2位:柚木伸元(日本大学)

男子クリテリウム2位:柚木伸元(日本大学) photo:So Isobe

「前半は様子見と思っていましたが、(優勝した)后嶺に2回先着されたのでこれはヤバいと感じて、そこから積極的に逃げも潰し、スプリントに絡むように頑張りました」と言うのは、5周目のスプリントを奪って2位となった柚木伸元(日本大学)。BMX仕込みのテクニックを武器にシクロクロスで2024年のU23全日本王者に輝くなど戦績を伸ばし、世界選手権には4年連続出場。ロードでもKINAN Racing Teamを経て今年からシマノレーシングに加入している。

順風満帆に見えるキャリアだが、昨年には外腸骨動脈の繊維化症を患い、全く足に力が入らない症状に悩まされ、3ヶ月ほど自転車に乗れない期間が続いていたという。「正直辛かったですが、慈恵会医科大学付属病院の方々にお世話になり、手術もうまくいったので、なんとかロードシーズンも含めて良い形になりそうです」と全回復に向けて希望を見出しているという。目指すのはもちろん全日本選手権やインカレの好リザルトと、シマノレーシングとして出場するレースでの良い走り。「全く得意ではない」と笑う平坦コースでの2位は上向きの証拠と言えそうだ。

究極にシンプルなネームシール photo:So Isobe
OverDrive Aero対応の純正ステムとPROのVIBE スーパーライトハンドルバーを組み合わせる photo:So Isobe


(加速の)掛かりと巡行性能のバランスが良いと(DURA-ACEの)C50を選択 photo:So Isobe

飄々と「学連とシマノレーシング、それにシクロクロスととにかく忙しいんですが、それでも好きな自転車に乗れているのは幸せなこと。ポジティブに捉えて、やるからには上を目指したい」と語る柚木のバイクもまた、シマノレーシングのジャイアント PROPEL ADVANCED SL(先代モデル)だ。

「めちゃくちゃ気に入っていますね。空力性能が優れているのに軽くて登りコースでも全然踏めますから。スプリントも掛かるので今日のようなコースは特に良いですね」と評価する。特に機材へのこだわりは無いそうだが、肩幅に合わせてSTIレバーを内側に倒し、無理のないポジションにしているのがポイント。ホイールはよりディープなC60も選べるが「掛かりと巡行性能のバランスから、今日のような平坦コースでもC50が良いですね」と実戦的なチョイスだ。



男子クリテリウム3位:峠龍之介(日本大学)

男子クリテリウム3位:峠龍之介(日本大学) photo:So Isobe

「結果的には悔しいですね。去年は1点も獲れなかったのでとりあえず1点とフィニッシュを狙っていました。今週は練習しすぎて調子は良くなかったんですが、意外と脚は動いてくれた。それだけに悔しいです」表彰台に上りながらも、開口一番に悔しさをにじませたのは3位に入った峠(たお)龍之介(日本大学)。トラック競技を大得意とする峠にとって、大井埠頭のハイスピードバトルは得意分野だ。

「自転車競技の魅力は、この圧倒的なスピード感。そして集団内で選手同士がコミュニケーションを取り合う面白さにあると思っています」という言葉通り、トラックレースの「ジャパントラックカップ」ではエリミネーションで9位に食い込むなど実力を証明済みだ。今後の目標は「先輩たちが作り上げた4kmチームパシュート(団体追い抜き)の学連記録を、自分たちの代で塗り替えたい」と、大学のプライドを胸にさらなる高みを目指している。

S-WORKS TARMAC SL8カデックスのULTRA 50ホイールを組み合わせる photo:So Isobe

日大ロゴ入りのネームシールは自身でオーダーしたもの photo:So Isobe
ハンドルとバーテープ(バドミントン用グリップ)はずっと使い続けているこだわりアイテム photo:So Isobe



峠の相棒は、スペシャライズドのS-WORKS TARMAC SL8。「強い先輩や速い選手たちがみんなS-WORKSに乗っていて、それに強く憧れて手に入れました。S-WORKS信者ですね」と照れくさそうに笑う。ホイールはカデックスのULTRA 50と、Tarmacに合わせるにはやや外し技と言えるチョイスだが、「硬いホイールが好みなので、カーボンスポークのカデックスは脚に合っている感じがします」とお気に入りの様子。

ドロップハンドルに巻かれているのは自転車用ではなく、「競技を始めた当初から、ハンドルも含めてこの仕様です。薄いので全力でスプリントできるんです」というヨネックス製のバドミントン用グリップ。トップチューブに貼られた日大の象徴である「N.」ロゴ入りのネームステッカーは、シーズデザインワークスへ自身でオーダーしたもの。各所に思い入れが宿る、こだわりの一台でした。



女子選手編に続きます。

text:So Isobe