引き続きアルバニアを舞台とするジロ・デ・イタリアの2日目は、13.7kmの個人タイムトライアル。ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がトップタイムを叩き出し、0.24秒差の区間2位だったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が総合首位に浮上した。



アルバニアの首都ティラナで行われたジロ・デ・イタリア第2ステージ photo:RCS Sport

ジロ・デ・イタリア2025第2ステージ コースプロフィール image:RCS Sport
グランツールの幕開けに相応しい、見所満載の集団スプリントで決着したジロ・デ・イタリア初日。その熱戦から一夜明け、5月10日に行われた第2ステージは13.7kmの個人タイムトライアルが行われた。

舞台となるのはアルバニアの首都ティラナで、平坦路かつ直線路が多いコースは中盤に4級山岳(残り5.7km地点)が登場。しかし難易度は低いため、TTスペシャリストがその実力を発揮できるレイアウトだ。

前日時点の総合最下位から出発する戦いは、ニクラス・メルクル(ドイツ、ピクニック・ポストNL)から順にスタートを切る。前半出走組の中で好タイムを出したのは、イギリスのロード王者であるイーサン・ヘイター(スーダル・クイックステップ)。今年イネオス・グレナディアーズからに移籍した26歳は、ミケル・ランダ(スペイン)の初日リタイアの不運を払拭するべく16分21秒の暫定トップタイムでフィニッシュした。

前半スタート組で好タイムを出したエドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

長らくホットシートに座るヘイターのタイムを、ヨーロッパTT王者であるエドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク)が8秒上回る。しかしすぐに、ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG)がトップタイムを更新。前日に落車し、左膝に包帯を巻いたヴァインは16分10秒と、怪我の影響を感じさせない快走で本来の強さを見せた。

そして後半組に入り、イギリスTT王者のジョシュア・ターリング(イネオス・グレナディアーズ)がスタートを切る。今大会の出場選手の中で2番目に若い21歳のターリングは、中間計測地点である4級山岳(残り5.7km地点)をヴァインから3秒遅れで通過。しかし「試走よりも辛かった」と語った後半に猛チャージをかけると、暫定トップとなる16分7秒、平均時速は51kmに迫る圧巻のタイムでレースを終えた。

トップタイムを叩き出したジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:RCS Sport

イギリスTT王者ジャージを纏うジョシュア・ターリング(イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

本来の走りではなかったフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

その後総合争う選手たちが続々とスタートを切り、その1人であり優勝候補のフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG)はトップから16秒遅れでフィニッシュ。22歳のチェコTT王者であるマティアス・ヴァチェク(リドル・トレック)は中間計測でトップタイムを叩き出すと、最終的に6秒遅れと好走見せる。そしていよいよ、総合優勝の筆頭であるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)が飛び出した。

東京五輪のTT金メダリストであるログリッチは、中間計測をヴァチェクと同タイムで通過。プロ通算9度目のTT勝利を目指してフィニッシュに向けて踏み続け、トップタイムである16分07秒でフィニッシュ。しかし0.24秒という僅差で、ターリングのタイムを上回ることはできなかった。

トップタイムに0.24秒及ばなかったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos

繰り下げで紫色のマリアチクラミーノ(ポイント賞)を着てスタートしたワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)。注目選手の1人であったものの、コース前半からタイムが伸びず、トップから38秒遅れ(区間34位)という結果に終わった。

そして最終出走者としてマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック)がスタートを切る。デンマーク人選手として大会史上初のマリアローザを纏ったピーダスンは、前半を抑えて入り、後半にペースアップを敢行。しかしトップから11秒遅れでフィニッシュし、ステージ7位で2日目を終えた。

38秒遅れと振るわなかったワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) photo:RCS Sport

区間7位と好走もマリアローザを失ったマッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) photo:CorVos

この結果、ステージ優勝にはターリングが輝く。「正直、信じられないよ。(グランツールでの)勝利を長い間追い求め続け、こうして掴むことができた。ホットシートで他の選手たちの走りを見るのは、決して気持ちの良い時間ではなかった。13kmのレースにしては(待つ時間が)長すぎたよ(笑)」と初出場のジロで、TTでの史上最年少勝利記録を更新したターリングは喜んだ。

プロデビューの前年である2022年に、TT世界選手権のU23王者に輝いたターリング。そして翌年にはエリートのTT欧州王者に輝くと、同年からTTイギリス選手権で2連覇を達成。今シーズンはUAEツアーの個人TTでタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)ら強豪を退け、ステージ優勝を飾っていた。

グランツールで初の区間優勝を果たしたジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

ピーダスンを1秒上回り、総合首位に立ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) photo:RCS Sport

ターリングに僅差で敗れたログリッチだが、総合でピーダスンを1秒上回り、マリアローザ着用の権利を得た。「僅差で勝つこともあれば、逆に負けることもある。重要なことは、自分が良いコンディションであることが分かったこと。マリアローザを獲得したが、明日のステージはマッズ(ピーダスン)に適したレイアウトのため、何が起きるか分からない」と、冷静なコメントを残している。

ジロ・デ・イタリア2025第2ステージ結果
1位 ジョシュア・ターリング(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 16:07
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
3位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツXRG) +0:02
4位 エドアルド・アッフィニ(イタリア、ヴィスマ・リースアバイク) +0:05
5位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) +0:06
6位 ダーン・ホーレ(オランダ、リドル・トレック) +0:07
7位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) +0:11
8位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG) +0:12
9位 イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ) +0:13
10位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +0:16
マリアローザ 個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) 3:52:32
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) +0:01
3位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) +0:05
4位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツXRG) +0:12
5位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +0:16
6位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +0:17
7位 マックス・プール(イギリス、ピクニック・ポストNL) +0:24
8位 アントニオ・ティベーリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) +0:25
9位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +0:27
10位 ジュリオ・ペリツァーリ(イタリア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +0:31
マリアチクラミーノ(ポイント賞)
1位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、リドル・トレック) 25pts
2位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 18pts
3位 マヌエーレ・トロッツィ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) 17pts
マリアアッズーラ(山岳賞)
1位 シルヴァン・モニケ(ベルギー、コフィディス) 18pts
2位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、XDSアスタナ) 10pts
3位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、リドル・トレック) 9pts
マリアビアンカ(ヤングライダー賞)
1位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) 3:52:37
2位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツXRG) +0:11
3位 イサーク・デルトロ(メキシコ、UAEチームエミレーツXRG) +0:12
チーム総合成績
1位 リドル・トレック 11:37:59
2位 UAEチームエミレーツXRG +0:07
3位 レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ +0:15
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos