雨のツール・ド・熊野山岳ステージで2名が逃げ切り。イギリスのトラック長距離メンバーとしてパリ五輪を走ったマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)がステージと総合首位浮上を叶えた。



総合首位、今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)らを先頭に勝負の第3ステージがスタート photo:Satoru Kato

和歌山県と三重県を舞台にするツール・ド・熊野(UCI2.2)もいよいよ佳境。2級山岳に設定された名物の丸山千枚田を通過し、17.2 kmの周回を4周=合計107.7kmを走る第3ステージの「熊野山岳コース」で総合成績争いが繰り広げられた。

小雨降る中、昨日の第2ステージで単独逃げ切りを決めてリーダージャージに袖を通した今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ)たちを先頭にスタート。ニュートラル走行を経てスタートが切られるとすぐ、ニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京)らが積極的に逃げを狙うアタックに打って出た。

しかし、唯一のUCIプロチームとして参加するソリューションテック・ヴィーニファンティーニは、今村から3秒遅れの総合2位につけるドゥシャン・ラヨビッチ(セルビア)を6.9km地点にある中間スプリントポイントで1位通過(ボーナスタイム-3秒)させるべくコントロール。ラヨビッチはゴールスプリントさながらの牽引から狙い通り先頭通過を果たし、2番手通過した今村との差をバーチャルで2秒まで詰めることに成功している。

ホストチームのキナンレーシングがハイペース牽引。集団を絞り込んでいく photo:Satoru Kato

千枚田の登りで遅れた今村駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ) photo:Satoru Kato
遅れたドゥシャン・ラヨビッチ(セルビア)のアシストを務める新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru Kato


キナンに代わってトレンガヌサイクリングチームが先頭牽き。さらに人数を絞り込む photo:Satoru Kato

続く1回目の丸山千枚田からコントロールを担ったのはホストチームであるキナンレーシングのレイン・タラマエ(エストニア)だった。元ワールドツアー選手のペースメイクで集団は一気にバラけ、頂上手前ではガリッポが抜け出してポイント獲得。引き続きタラマエやトレンガヌが牽く集団からは今村が、そしてラヨビッチも千切れていった。

2023年まで1級山岳に指定されていた札立峠が無くなったとは言え、登りと下りを繰り返す雨のタフステージ。アタックも頻発し、3回目の大山千枚田ではトレンガヌのハイペースによって集団は15名以下まで絞られる。この日4回登る丸山千枚田の頂上は全てガリッポが先着し、鎌田晃輝(JCLチーム右京)から山岳賞のチーム内移動と受賞確定に成功している。

4回のKOMを全て先頭通過したニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京) photo:Satoru Kato

トレンガヌのペーシングで集団は見るまに縮小の一途を辿った photo:Satoru Kato

集団を飛び立ったマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)とマティアス・ブレグノイ(デンマーク、トレンガヌサイクリングチーム) photo:Satoru Kato

最後の山岳を終えて勝負はフィニッシュへと続くアップダウン区間へ。昨年のこのステージを制したVC FUKUOKAのベンジャミ・プラデスとジェラルド・レデスマ(共にスペイン)が繰り返し仕掛けたものの引き戻される。そのカウンターでマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)とマティアス・ブレグノイ(デンマーク、トレンガヌサイクリングチーム)が飛び出した。

トレンガヌのアシスト勢が集団を足止めしたことも加わって、逃げる2人は一気に30秒リードを確保し、さらにローテーションが回らない集団との差は残り5km地点で1分15秒まで拡大。逃げ切りを決めた2人は牽制を繰り返しながら、緩やかに登るフィニッシュ前へ。タイミングを見計らって、先行するブレグノイを追い抜いたスチュワートが大きく両手を広げた。

先行するブレグノイをマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)が抜き去る photo:Satoru Kato

トラック仕込みのスピードで勝利したマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru Kato

45秒遅れの集団ではニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京)が先着 photo:Satoru Kato

トラック競技で活躍し、パリ五輪のイギリス長距離メンバーとしてチームパシュートに参戦し、銀メダル獲得に貢献したスチュワートにとってはキャリア2回目のロードレース優勝に。遅れた総合上位勢に代わり、ブレグノイに4秒差で黄色いリーダージャージも獲得している。

総合首位浮上を叶えたマーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Satoru Kato

山岳賞を決めたニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京) photo:Satoru Kato
ドゥシャン・ラヨビッチ(セルビア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)はポイント賞首位に浮上 photo:Satoru Kato


ツール・ド・熊野2025 第3ステージ
1位 マーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) 2:46:29
2位 マティアス・ブレグノイ(デンマーク、トレンガヌサイクリングチーム)
3位 ニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京) +0:45
4位 ベンジャミ・プラデス(スペイン、VC FUKUOKA)
5位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン)
6位 ダヴィデ・バルダッチーニ(イタリア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
7位 ヴァディム・プロンスキー(カザフスタン、トレンガヌ・サイクリングチーム)
8位 小石祐馬(JCLチーム右京)
9位 橋川丈(愛三工業レーシングチーム)
10位 ケイエ・ソーレン(オランダ、ワンティ・NIPPO・リユーズ)
個人総合成績
1位 マーク・スチュワート(イギリス、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) 8:38:12
2位 マティアス・ブレグノイ(デンマーク、トレンガヌサイクリングチーム) +0:04
3位 岡篤志(宇都宮ブリッツェン) +0:47
4位 ベンジャミ・プラデス(スペイン、VC福岡) +0:51
5位 ソーレン・ケイエ(オランダ、ワンティ・NIPPO・リユーズ)
6位 小石祐馬(JCLチーム右京) +0:52
7位 バッサイカン・テグシュバヤール (モンゴル、ルージャイ・インシュランス) +0:54
8位 ヴァディム・プロンスキー(カザフスタン、トレンガヌ・サイクリングチーム) +0:55
9位 織田聖(マトリックスパワータグ)
10位 橋川丈(愛三工業レーシングチーム)
その他の特別賞
ポイント賞 ドゥシャン・ラヨビッチ(セルビア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)
山岳賞 ニコロ・ガリッボ(イタリア、JCLチーム右京)
チーム総合成績 トレンガヌ・サイクリングチーム
photo:Satoru Kato