4月19~20日に長野県で開催された「アルプスあづみのセンチュリーライド」。通称「AACR」として親しまれている人気イベントをCW編集部の高木が取材し、その模様を前編と後編で紹介していく。後編は鹿島槍からゴールまでをレポート。(前編はこちらから)



前編ではAACR名物の「伝説のねぎ味噌おにぎり」がある第三エイドの青木湖までやってきた photo:Michinari TAKAGI

4月19~20日の日程で開催された「桜のアルプスあづみのセンチュリーライド」。イベントレポート前編では160kmコースのスタート地点である梓水苑からAACR名物の「伝説のねぎ味噌おにぎり」が振舞われる第三エイドがある青木湖までをレポートした。

さて、それでは早速続きをお届けしていこう。第三エイドの「鹿島槍エイド」は標高864mと、AACRのコース最高地点となっている。つまり、青木湖から先は往路も復路もしばらく平坦もしく下り基調になる。

トンネルの区間があるため、要項にあるようにライトは必須 photo:Michinari TAKAGI

次の目的地は「白馬エイド」だ。スタートから81km地点にあり、桜のAACRの折り返し地点でもある。仁科三湖の青木湖周辺は穏やかな平地基調で軽快に走れ、澄んだ空気が気持ち良い。ここまで緩やかな登り基調であった分、自然と平均速度も上がっていく。

この先には「佐野坂トンネル」があるため、前後のライトの点灯は忘れずに。ライトを装着していても充電忘れということもあるので、緑のAACRに参加する方はその辺りもお気をつけあれ。また、トンネル以外でもデイライトを点灯しているサイクリストも多く、AACR参加者の安全意識の高さが感じられた。

長い下りを下っていくと山の隙間から、微かに白馬村が見えてくる photo:Michinari TAKAGI

白馬エイドを出発した復路の参加者とすれ違う photo:Michinari TAKAGI

青木湖を離れて山間をしばらく走り、長い下りを下っていくと山の隙間から微かに白馬の街が見えてくる。そして、前編でも走っていた安曇野アートラインに再合流し、山に囲まれた平野を駆け抜けていく。

ちなみに、安曇野アートライン安曇野市や池田町、松川村、大町市、白馬村にある17カ所の美術館と博物館などを結ぶ、まさにアートを繋ぐ道路なのだ。アートラインの終点が近づくにつれ、雪化粧の白馬岳とスキージャンプ台が見えてきた。

T字路の交差点を左折すれば、安曇野アートラインに再合流 photo:Michinari TAKAGI

雪化粧の白馬岳とスキージャンプ台が見えてきた photo:Michinari TAKAGI

白馬村にある白馬ジャンプ競技場は、1998年に開催された長野五輪のスキージャンプとノルディック複合ジャンプの競技会場。スキー選手たちには聖地としても知名度が高く、東京五輪個人タイムトライアルの金メダリストかつ元スキージャンパー、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)も「憧れの地」と語る場所だ。

ジャンプ台を遠目に眺めつつ、大糸線の白馬駅前を通過。今回の桜のAACRでは設定されていないが、5月開催の緑のAACRでは白馬駅から帰路につくサイクルトレインコースが用意されているため、100km超のライドでも初心者が参加しやすくなっている。

除雪車を見かけると雪国に来ていることを実感する photo:Michinari TAKAGI

雪化粧をした白馬岳を背景に参加者が下っていく photo:Michinari TAKAGI

AACRでは4か所ほど踏切を渡る区間があるが、鉄道好きとしては踏切に引っかかりたいと期待してしまう。残念ながら白馬駅を過ぎた後に現れる踏切はスムーズに通過し、松川の下流に向かって下っていく。景色の良いポイントでカメラを構えていると、みんな笑顔で楽しそうに駆け抜けていく。

しばらく下っていくと松川に架かる松川大橋が近づいてくる。橋の上には多くの参加者が立ち止まっていた。松川の上流方面を見上げると、雪化粧をした白馬岳、ゴツゴツとした河原の真ん中を流れる松川が織りなす景色は絶景だった。

雪化粧をした白馬岳と松川、そして愛車で一枚 photo:Michinari TAKAGI

美しい景色を背景に記念写真を photo:Michinari TAKAGI

更に、松川大橋から1kmほど上流に進むと、次なる撮影ポイントが現れる。こちらも北アルプスと松川が一望できるポイント。こちらは背後が開けた広場となっており、大勢が集まって撮影できるため、居合わせた方で集合写真を一枚。緑のAACRに参加する方は是非、こちらで一枚記念写真を撮ってほしい。

そんなこんなで見所に溢れたコースを堪能していると、桜のAACRの折り返し地点となる第四エイドである白馬エイドに到着した。この日の白馬村の最高気温は21℃とまさにサイクリング日和。用意されたバイクラックにずらっと参加者のバイクが並んでいる。美しい白馬の光景にそれぞれの愛車が映えること間違いなし。

白馬エイドまであと少し!ファイト―! photo:Michinari TAKAGI

白馬市街地に入る
長野五輪のスキージャンプ競技会場が目と鼻の先


桜のAACRの折り返し地点となる第四エイドである白馬エイドに到着
ワコーズのブースがあるため、バイクトラブルがあっても安心だ


白馬エイドにはケミカルブランドであるワコーズのブースも設置されており、自転車に不具合を感じた参加者がメンテナンスを受けていた。折り返し地点ということもあり、気になることがあればスタッフに相談してみると安心できるハズ。

大量に並んだ参加者の皆さんの愛車を眺めて近年のバイクトレンドを探っていると、穏やかな風に乗って美味しそうな香りがしてきた。この白馬エイドでは「伝説のねぎ味噌おにぎり」と並んでAACR名物である焼きたての「石窯ピザ」と「コンソメ冷製スープ」が用意されている。数多くのキャンプチェアーが用意され、ゆったりくつろぎながら絶品グルメを頂いていると、まるでグランピングリゾートに来たかと錯覚してしまいそうになる。
AACR名物である焼きたての「石窯ピザ」 photo:Michinari TAKAGI

白馬エイドを出発し、鹿島槍へ向かう photo:Michinari TAKAGI

次の目的地の第五エイドは、実は第三エイドで訪れた鹿島槍エイドが再び登場することに。白馬エイドを出発し、しばらく平坦で走りやすい安曇野アートラインを走っていく。

往路では下り基調のち平坦だったが、復路ではその逆になり、平坦のち登りが参加者を待ち受けていた。フラットな区間を終えて登り始めると、左手に再び長野オリンピックの聖地である「白馬クロスカントリー競技場」が見えてくる。

残雪の北アルプスがとても綺麗 photo:Michinari TAKAGI

長野オリンピックでクロスカントリースキー競技会場として使用された全長13.4kmのクロスカントリーコースは、現在もクロスカントリースキーやスノーウォーキングで活用されているという。

オリンピックレガシーを横目に、段々畑のように急勾配と緩斜が交互にやってくる登りをこなしていく。勾配変化が激しい区間でも、一定のパワーでペースを乱さず登っていくのが攻略のコツだ。こういった時にパワーメーターは頼もしい存在でもある。

後半戦の試練となる登り区間をクリアしていく参加者の皆さん photo:Michinari TAKAGI

セーフティーサポートライダーが交通整理をしてくれていた
長野県大町市の佐野坂トンネルまで戻ってきた


後半戦に差し掛かり、疲労が蓄積した頃合いに現れる登りとあって、苦戦している参加者の姿もちらほら。バイクを降りて押したり、軽いギアで淡々と登っていく参加者も。この登りを突破しないとゴールまでたどり着けないため、撮影しながらエールを送る。

そして、冒頭でも登場した桜のAACRで唯一のトンネル区間、長野県大町市の佐野坂トンネルまで戻ってきた。トンネルを抜ければ、再び青木湖が見えてくる。湖畔は平坦基調であるため、軽く流して登り区間で疲れた脚を回復させていくのがおすすめだ。なぜなら、また難所が近づいているから……。

ネコミミお姉さんが声援を送ってくれるため、頑張れた参加者も多かったはず photo:Michinari TAKAGI

軽快なダンシングでクリア! photo:Michinari TAKAGI

信濃おやき幸庵の「おやき」と「わらび餅」
笑顔で長野グルメを頂きます


第五エイドまで残り200mほどの地点で、往路と同じく再び激坂が立ちはだかる。もう一度これを登るのか、と心が折れそうになった瞬間、ボクの前に天使が舞い降りた。なんとネコミミお姉さんが声援を送ってくれている。あまりの疲労に幻覚を見ているのではないか、と一瞬不安になったけれど、その姿にはどこか見覚えがある。そうだ、第二エイドで素敵な笑顔を向けてくれたお姉さんだ!

ネコミミ天使は既に存在する。AACRに。

天使からのバフをもらって、やっと辿りついた鹿島槍エイドでは、信濃おやき幸庵の「おやき」と「わらび餅」が用意されていた。もちもちの生地の中に甘辛い野沢菜が包まれた野沢菜は、後半の補給にぴったり。適度なカロリーと腹持ち感、そしてピリッと来る辛味がやる気を再び高めてくれる。わらび餅はほのかに甘く、味覚そして、お腹が満たされていく。

JR東日本大糸線の稲生駅のところまで下ってきた photo:Michinari TAKAGI

木崎湖まで下るとしばらく平坦な道が続く photo:Michinari TAKAGI

ここから第六エイドまでは34kmも離れており、エイド間の距離としては最長区間となっている。しかし、最高標高地点であるため鹿島槍エイドからは下って、平坦を走っていくだけ。そう考えれば足取りも軽くなる。

鹿島槍エイドからは国道148号線で木崎湖まで向かっていく。ここは下り基調で脚を止めた状態でも30~40km/hほど速度が出るため、体力を温存しながら進んでいける。しばしのダウンヒルを楽しんでいるとJR東日本大糸線の稲生駅前へ到着。

風速4m前後の強い向かい風の中、突き進んでいく photo:Michinari TAKAGI

稲生駅は1960年(昭和35年)に日本国有鉄道の駅として開業した駅で、木崎湖と同様にアニメの聖地として訪れる観光客が多いスポット。ここで線路を渡って木崎湖の右岸を進み、温泉街を走り抜けていく。

大町市から松川村に入ると水田が広がり、視界を遮るものが少なくなってきた。すると、懸念していた風速4m前後の強い南風が吹いてきた。すでに100km以上を走ってきたこともあり、自分も含め参加者にとっても大きな試練となる向かい風だ。姿勢を低くして前方投影面積を減らし、進んでいく。仲間と参加しているのであれば、適度に先頭交代しながら走っていくと良いだろう。

E127系100番台が通過していく
高瀬川に架かる宮本橋に到着


高瀬川の土手上のルートを南下していく photo:Michinari TAKAGI

そして安曇野市に再び戻り、第二エイドに訪れた「国営アルプスあづみの公園」付近を通過して高瀬川方面に向かっていく。再びここで踏切チャンス!なんと今回はラッキーなことに遮断機が下りている。ワクワクしながら待っていると、E127系100番台がやってきた。1995年にデビューした車両で、鉄道マニアの私にとっては取材先の踏切待ちも目の保養になるのだ。

E127系100番台を見送り、1kmほど進むと高瀬川に架かる宮本橋に到着した。高瀬川は長野県の大町市や安曇野市を流れる信濃川水系の一級河川である。そして、高瀬川の土手上のルートを南下していくが、ここも引き続き向かい風。遮るものの全くない河川敷道路での向かい風は、もはや峠と変わらない。しかし、協力しながら先頭を引く参加者たちの姿は、新たな絆の芽生えを感じさせてくれた。ちなみに私はタダ乗りです。

安曇野エイドまではあと少し
安曇野エイドがある碌山公園に到着


「信州・安曇野のりんごジュース」と「赤飯饅頭」、「シンシュウエナジー」、「わさびチーズ」と長野グルメが用意されていた photo:Michinari TAKAGI

AACR最後のエイドステーション、安曇野エイドがある碌山公園に到着した。様々な施設が立ち並ぶ大規模な公園の広大な芝生広場に、最終エイドは設置されている。ちなみに、筆者が碌山公園に到着したのは13時40分。スタート時間が6時だったので、7時間以上が経過したことになる。疲労もかなり蓄積されてくる頃合いで、芝生広場でゆったりと休憩している参加者が多かった。

安曇野エイドでは「信州・安曇野のりんごジュース」と「赤飯饅頭」、「わさびチーズ」、そして「シンシュウエナジー」と長野グルメが用意されていた。信州・安曇野のりんごジュースは冷えていて美味しく、信州産りんご果汁やパラチノース、ぶどう糖などが入った「シンシュウエナジー」はロングライドにぴったりな補給食だった。

リンゴ畑の間を駆け抜ける photo:Michinari TAKAGI

チームの仲間と共にゴール photo:Michinari TAKAGI

ここまでくれば、長かったAACRもあと少し。19km先にあるゴール地点の「梓水苑」を目指していく。最終エイドから10分くらいの登りが登場するものの、ここさえクリアしてしまえば長い登りはもうない。

安曇野市に入れば、リンゴ畑の間を駆け抜ける区間へ。アップダウンが続くコースではあるが、朝とは違う表情を見せる長野の景色を楽しみながら走っていればあっという間だ。空気も澄んでいて、自然豊かなコースであるため、疲れさえも浄化されていくよう。

AACRの終盤にお会いしたトムさんもガッツポーズでフィニッシュ
応援に駆け付けた家族で一枚!お疲れ様でした!


小学六年生の心理君もガッツポーズしながらゴール photo:Michinari TAKAGI

最後の平坦区間に入ると半日前に見た景色が広がる。ゴール地点の「梓水苑」が見えてくると、残りは1kmくらい。最終コーナーを曲がるとリドレーやコンチネンタル、SMPなどのバナーが両サイドを彩るフィニッシュストレートへ。

AACRのエアアーチもあいまって、まるでロードレースのゴール前のような演出。160kmを走破した達成感と高揚感と共にガッツポーズをしながら、ゴールラインを通過した。

信州銘菓「初恋の林檎パイ」
160km完走、お疲れ様でした!


79歳の参加者さん。親子で参加し、無事に完走しました photo:Michinari TAKAGI

ゴール後には「160kmコース完走、お疲れ様でした!」とスタッフさんから信州銘菓「初恋の林檎パイ」を受け取った。160kmのライドの中で、走り抜けてきたたくさんのリンゴ畑で収穫された林檎が使われているのかも、と思うとよりおいしく感じる。

最後まで長野のグルメを堪能し、再びゴールでカメラを構えていると、クラブやカップル、家族が笑顔でガッツポーズをしながら次々とフィニッシュしていく。ゴール後に仲間同士で今日一日を振り返る様子はとても楽しそうで、とても良いライドになったはず。一人で取材に来ていると、こういった時にふと寂しさを感じてしまう。

筆者である私、CW編集部員の高木も160kmを楽しく完走できました! photo:Michinari TAKAGI

達成感に満ち溢れた良い笑顔 photo:Michinari TAKAGI

米軍の仲間で参戦し、全員完走しました photo:Michinari TAKAGI

AACRとコンチネンタル、リドレーのロゴでドレスアップしたフォトストップには、完走した参加者が行列をなしていた。ピースをしたり、肩を組んだり、愛車と一緒に撮ったりと、各々のポーズで思い出を残していた。

今回も無事にイベントが終了した「桜のAACR」。そこで、「アルプスあづみのセンチュリーライド」イベントをプロデュースしている鈴木雷太さんにお話を伺った。



「アルプスあづみのセンチュリーライド」イベントプロデューサーの鈴木雷太さんのインタビュー

「アルプスあづみのセンチュリーライド」をプロデュースしている鈴木雷太さん photo:Michinari TAKAGI

■桜のAACRの参加者が増加したと聞きました

今年の参加者は約1,300人で、昨年より参加者が増えました。どの年代が特別多い、ということもなく老若男女問わずに増加したという印象です。息子の心理が小学六年生で12歳ですが、同年代の参加者も多く見かけました。

事故はありませんでしたし、セーフティーサポートライダーやAEDサポートライダーのおかげで、バイクトラブルなどにもすぐに駆け付けることができました。

■緑のAACRに向けて、どうですか?

コロナ明けで参加者の層が大きく変わってきて、純粋にサイクリングを楽しんでいる方が多かったです。インバウンドで海外からの参加者も多くて、国籍や老若男女問わず大会になってきてよいことだと思います。

リピーターも多いイベントなのですが、今回は30%が新たに参加してくださった方でした。新しい風が吹き込んでくれるのは嬉しいですね。AACRのファンになってくれて、ずっと参加してくれている参加者の方もいますし、良いシナジーが出来ればと思います。

無事完走した鈴木雷太さんと息子さんの心理くん、辻浦圭一さん photo:Michinari TAKAGI

■緑のAACRの参加者に向けて一言よろしくお願いします!

今年は雪が多かったですし、鹿島槍周辺からは残雪もあって、例年とは少し違った光景でしたね。今回は晴れではなく曇りだったので、ベストコンディションではありませんでしたが、5月は天候も良くなるかなと思うので、よりAACRを楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。緑のAACRはまだエントリーできるので、皆様の参加をお待ちしております!

緑のAACRは申込受付中。5月7日まで!
季節外れの雪のおかげで、いつもとは少し違った風景が広がり、リピーターにとっても新鮮な体験となったであろう今年の桜のAACR。今月末に行われる緑のAACRでは、また違った風景が楽しめるハズ。そんな緑のAACRの申込はまだ受付中!5月7日と締め切りはまもなくだ。エントリーはコチラから!

text&photo:Michinari TAKAGI