栃木県の大田原から那須エリアにかけてを巡るツール・ド・大那。そこで、パナソニックの子供向けE-BIKEを使って、大満足の親子ライドを楽しんだレポートが絹代さんから届きました。



大田原市を舞台に初めて開催されたツール・ド・大那  (c)M-WAVE写真事務所

子供が小さい頃は「もうちょっと大きくなったら一緒に走れるね」とよく言われていたけれど、子供が小学生になり、自分で自転車に乗るようになると、実は、親はサイクリングイベントに参加しにくくなるとわかった。

子供用の自転車は重量もあり、ギアも少ないのが一般的。当然、乗る子供たちの多くはアップダウンをこなすのが困難で、軽いギアのみが付いている場合は、ぐんぐん進むことはないため、かなりの低速になる。体力的にも、長い距離を走るのは難しく、子供と一緒に走るなら、平坦基調の短いコースに限られ、それまで走っていた多くのライドは断念せざるを得なくなる。

ママ友の小森ひろかさんと一緒に、ファミリーで参加 (c)M-WAVE写真事務所

そんな悩みを払拭してくれるバイクに出会った。パナソニックから子供用のe-bikeが発売されたのだ。

子供が操作することを想定して設計されており、身長135cmくらいから乗ることができるという。バッテリーは同シリーズの大人用のe-bikeと同じものを搭載しており、ロングライドにも、バッチリ対応してくれるだろう。

パナソニックサイクルテックから発売された子供用e-bike XEALT SJF

今回は同じような悩みを持つママ友と共に、ご縁あってこのバイクを拝借し、お互いの子供たちと、大田原の丘をめぐる「ツール・ド・大那」を走ってきた。

「ツール・ド・大那」は、今年初開催のライドイベント。この「大那」とは、大田原の「大」、那珂川・那須・那須塩原の「那」を組み合わせたもの。那須や大田原市は全日本選手権の開催実績もあり、いずれも多くの自転車愛好家が走っている地域だ。

ツール・ド・大那はブラーゼンサイクリング倶楽部のメンバーがサポート (c)M-WAVE写真事務所

大田原の「丘ポタ」や那須の「那須高原ロングライド」など、人気のイベントの運営に慣れたスタッフが企画運営しており、エイドを含め、ライドの中身は保証されると言っていいだろう。メインのDAINA75コースは、距離が74.3km、獲得標高が813m。丘陵と田園、那珂川を楽しむ走りごたえ(+食べごたえ)のあるプロフィールになっているようだ。

我々は、唯一小学生の参加が許される40kmコースにエントリー。コースは厳しくはないが、丘が多い地域であるため、そこそこの登坂が含まれており、獲得標高は423m。普段であれば、私の娘には厳しいプロフィールである。そもそも、普通の小学生にとって、40kmは短い距離ではない。

小学3年、5年の二人がXEALT SJFで、ママはXEALTにチャイルドトレーラーを接続して走る

共に走る小森家は、ママ・ひろかさんが大人用XEALTに乗り、末っ子の將太郎くんの乗ったトレーラーを引き、3年生のひのかちゃんがXEALT SJF、5年生の將汰くんが自前のロードバイクで走る。

私の娘は身長146cmで問題ないものの、ひのかちゃんは身長128cmと適正身長には届かない。だが、日頃スポーツバイクを乗っている勘のよさもあり、事前の試走で安全に乗れることを確認した上で、この日を迎えた。

バイクは前輪がクイックで外せるようになっているため、普通車に搭載し、運ぶことができた。スタート会場で、バイクを車から降ろし、前輪を装着して準備完了。私たちのスタートには、スタッフの増子さんが付いてくれて、他の2家族とともに走ることになった。いざ、出発!

いきなりの登坂だったが、ひろかさんはトレーラーを引いて難なく登っていく

スタート直後に10%超えの上りが待っており、ここが少し心配だった。子供たちにとっては慣れないはずのe-bikeであるが、一般車の電動アシストとスポーツ用e-bikeの両方の特徴を持たせて設計されているそうで、子供たちでも難なくアシストを効かせながら、冒頭の登坂もスムースにこなすことができた。

ひろかさんも、トレーラーを引きつつ、アシストを使いこなし、スルスルと坂を上っていく。

子供たちも順調。ひのかちゃんはダンシングでさっそうと登っていた

この坂を越えると、わずか1キロあまりで最初のエイド「威徳院七福神」が登場した。この地域で親しまれる八溝七福神の寿老尊が祀られているという。

「もうエイド?」と、一行は嬉しくも困惑気味だったが、敷地に入ると、テーブルの上に大きな梨が用意されているのが見え、歓声が上がった。

テーブルに用意された大きな梨
さっそく大きな口でかぶりつく
くるみの砂糖菓子もゲット!



子供たちは、もどかしく自転車を停め、梨に向かって走って行き、梨にかぶりつく。「おいしい!!」「甘い!」歓喜の声があがり、笑顔がこぼれた。大ぶりの梨は、おどろくほどジューシーで甘かった。この地域の梨園が作っている梨らしい。

スタートするまではなんとなく緊張感があった子供たちも、一気に笑顔になり、ワクワク感いっぱいの様子に。クルミや甘納豆にミルクの糖衣をかけたお菓子もいただき、元気をチャージして、ライドに再出発!

元気いっぱいにエイドを後にする

再スタート後も順調に走る

気持ちのいい田園風景の中を走る。遠方にはエメラルドグリーンの山々が見え、見晴らしがよく、空の広さに、心が晴れ晴れする。

ひろかさんと、「こういう時間って大切ですね」としみじみ話し合う。お互い、仕事をしながら、子育てをする身。全く余裕のない日々を回していくのが平常だけれど、心のストレッチをするような時間が持てることは、「自分」を保つ上で、とても重要だと感じる。

増子さんが先導してくださり、隊列を組んで進む

快調に走るひろかさん

ルートは交通量の少ないルートを中心に組まれているようで、時には畑の間の道も抜けていく。

曲がり角には、立哨の方が立っていて、にこやかに誘導してくれる。多くの方が那須ブラーゼンのジャージ姿で、横には自転車を携えていた。この日の立哨スタッフは皆自転車乗りとのことだが、自転車に乗る方だから指示が的確で、よく響く。

交通量の少ない道を組み合わせ、ルートが作られている。親切でフレンドリー立哨スタッフが随所に立っている

全国でも、こんなに優秀で心地よいスタッフが運営しているイベントは稀ではないだろうか。黄色いジャージ姿のスタッフの皆さんのいでたちや振る舞いには、地域への愛とプライドを感じた。

私の娘は上りが特に苦手で、軽い上りでも大いに苦戦するため、いつもは、勾配がきつくなるたびにヒヤヒヤするのだが、今日の彼女は、多少の勾配変化にはまったく動じない。

快調に走り抜けていく参加者たち

坂が現れると、e-bikeの2名と、ロードバイクに乗る兄、將汰くんは、競い合うように前方で登坂を越えて行く。ひのかちゃんに関しては、車体はやや大きめなのだが、ダンシングしてさらなるスピードアップを図っていた。

市街地を抜け、田園風景の中を抜け、道の駅「与一の里」に到着!次のエイドだ。ここでは、温かいスープと、冷やし焼きイモが提供された。イモは、冷たくても、しっかり甘い。

二番目のエイドに到着!ふるまいをいただく

おイモを受け取り嬉しそうな將太郎くん
スタッフの方のアドバイスを実践、イモをスープに入れて食べてみる



大人気だった冷やしイモ。甘くてスイーツみたいだった

これが子供たちに大ヒット。イモを一心不乱に食べる姿を見て、スタッフの方々が、道中のお土産にと小さな袋に入れて、子供たちに配ってくれた。桃太郎のきびだんごのように、冷やしイモを身につけてスタート。

ペダリングとハンドル操作、さらには初めての道での判断を、いっぺんに行うのは、子供たちにとっては、なかなか簡単なことではない。だがこの日はペダルを回すことに余裕があるため、ハンドル操作や周りへの判断も安定するようで、先頭を行く増子さんの動きに合わせて落ち着いて動けており、道路への合流もスムース。子ども用e-bikeを使えば、こんなに不安なく、親もストレスなく走れるのかと、感動した。

坂道が現れても動じず、スルスルと駆け上がっていく二人

時には速く登坂をこなしたい子供たちを先行させるなど、ペースが異なる全体を見ながら、柔軟に参加者の要望に合わせ、絶妙な先導をしてくれた増子さん

当然、グループにはノーマルバイクで走るお子さんもおられ、e-bikeで走る子供との混走で心苦しくも思ったが、パパたちと息を合わせ、着実にアップダウンをこなす姿がかっこよくて、家族でチャレンジができることもすてきだなと感じた。

スペースがあったため、いったん停止し、休憩となった。ここで子供たちは早くも先ほどのおイモを頬張り始める。イモ登場の早さに笑ってしまった。

ブラーゼンジャージ姿の立哨スタッフが誘導

おイモ休憩

眺めの良い橋を渡ると、今日イチの上りが登場した。少しカーブを描きながら一気に上がり、そのままキツめの上りが続く。e-bikeの二人は飛ぶように駆け上がって行き、ノーマルバイクに乗る私ごときの足ではまったく歯も立たない。あっという間に背中が小さくなって、見送るしかなかった。

緑の中をえっちらおっちら上がっていくと、美しい芝生の向こうに城のような建物がそびえ立つ施設が見えて来た。「大田原市ふれあいの丘シャトー・エスポワール」2015年の全日本ロード選手権のタイムトライアルでも使用された場所がこの日3つ目のエイドとなる。

登りに差し掛かると、e-bike組は本領発揮。まったく追えず、撮影できません!

登ってきた参加者を拍手で出迎えるスタッフたち

ひのかちゃんは、いつもはうなだれて家族の最後尾を走っているそうなのだが、この日はハードな登坂を先頭でクリア。ロードバイクに乗ったお兄ちゃんに勝ち誇っている姿がかわいらしかった。

ここで登場したのは、なんとパフェ!見た目もメルヘンなパフェが全員に配られ、皆テンションアップ。パフェを大切そうに抱え、嬉しそうに芝生の上で頬張るこどもたちの姿にほっこりする。

パフェ登場!

パフェをゲット!満面の笑みに!

芝生の上に座り、戦利品のパフェを味わう

このパフェを参加者全員分仕込んでくれたのかと考えると、頭の下がる思いであるが、ありがたくこの幸福感満点のパフェをいただいた。キツい上りの後に出てくる、このタイミングも嬉しい。

少し休憩した後で、再度スタート。ここで各スポットの立哨が合流し、隊列を作って出発することになった。長めの下りに差し掛かる。ここまでの疲労を考えると、子供たちの下りは心配なところだが、子供の使用を想定したブレーキが付いており、ペースのコントロールにも問題はなかったようだ。

トレーラーに接続したバイクの写真を撮っていたら、乗り手も特別出演で入ってきた
安定して走る子供たち

競い合うように前に出ていく子供たちと、ケアしてくださるスタッフの皆さん
のんびりした道を走っていく



美しい川面を眺めながら走る

ここからはアップダウンを抜けるダイナミックな道だったが、登坂は自信に満ちたキッズたちが先頭で飛ばして行き、ママ勢はマイペースで走って行った。娘が上りで私を置き去りにして先行するなんて、普段だったらありえない話だ。笑顔で走れていて、本当にありがたい。

アップダウンを抜けると、統一したシックなブラウンの看板が掲げられ、日本家屋が並ぶ風情ある街並みに突入した。色づき始めた木々が並ぶ神社を眺め、先へ。再び川を渡れば、最後のエイドだ。

映える景観をバックに、一緒に走った皆で記念撮影!お騒がせしました…

最後のエイドは「なかがわ水遊園」。このエイドにはたくさんのふるまいが並んでおり、終盤で疲れも出始めていた子供たちの雰囲気ががらりと変わった。

ブッフェスタイルで並んだフードをいただいていく。ポンデケージョ(チーズ入りのブラジルのもちもちパン)や、おみくじおかき、カムカムのグミ、絵付きのクッキー、ジャーキー、まんじゅう、とジャンルの幅も広く、遊び心のあるラインナップ。中でも、モチモチのポンデケージョが絶品で「もうひとつ欲しい!」という声が上がるほど。

もちもちで「おかわり」切望の声が上がったポンデケージョ
神妙な表情で「おみくじおかき」に臨む



好評だったイノシシ肉の「ししまるジャーキー」
「おみくじ」の中身でまた盛り上がる



あまりにもおいしいので、不思議に思って聞いてみたところ、展示する魚の生息地である南米地域をイメージしたレストランがあり、そこで提供している本場仕込みのポンデケージョ、とのことで、合点がいった。今回のエイド、どこもクオリティーが高すぎる。ゆったり休憩して、最終パートへ。あとはゴールを目指すのみだ。

幸い、皆の疲労も出ず、最後は気持ちよく走り抜けて、フィニッシュ!たっぷり楽しみすぎてしまい、どうやら最後尾のフィニッシュだったようだ。

最後の上りも元気いっぱいにクリア!

ゴールではうなぎが乗ったおにぎり「うなぎり」と豚汁がふるまわれた。「うなぎり」は、コメもタレも、うなぎもうまい。思わずコメも買って帰りたくなるレベルだ。

さらに豚汁は驚異のクオリティー。こんなに味わい豊かな豚汁を飲んだことがない。この味の秘密は、味噌なのか、他にあるのか?豚汁を作り、自らふるまっていた男性に聞いてみたところ「地域のたくさんの野菜を大鍋で仕込んだからですかねぇ?」とのこと。大鍋の汁物はこれまでもたくさん飲んできたのだが、この味はピカイチだっだ。ひとつひとつの食材の持つポテンシャルの高さから来る味なのだろうか。

豚汁を作られた方。腕前に脱帽です

美味しすぎた豚汁。私はこっそりおかわりした
ゴール後にふるまわれた「うなぎり」



この日最後の企画、抽選会は、参加者全員に賞品があるという豪華すぎる設定。それぞれの戦利品を手に、皆、満足な笑顔でイベントを終えたのだった。

この大会は、地元の資金・サポートのみで、工夫を凝らして成立させたイベント。「たとえ中身はどうであってもよい」と思いつつ、参加表明をしていたのだが、正直、こんなにクオリティーの高いライドだとは思っていなかった。親子ともども、たっぷり楽しませていただいた。

最後は抽選会。遅れたけれど進行をお手伝いしました (c)M-WAVE写真事務所

ゲストの西尾勇人選手(セブンイレブンロードバイクフィリピン)が賞品を手渡してくれた (c)M-WAVE写真事務所

娘も、サイクリングを楽しむことができ、e-bikeでも、走行していることに変わりはなく「がんばって走った体感」は残り、達成感も味わえている様子。「自分は走れる」という自信も持つことができたと思う。こんな体験をさせてくださったパナソニックサイクルテックさんにも感謝したい。

我々は40km走ったのみであるが、ロングコースになれば、もっと走りごたえがあり、さらに多くのエイドも楽しめたようだ。みなさんの話を聞けば、心尽くしのエイドが、参加者の皆さんのお腹と心を満たした様子。紅葉も美しい時期で、この大会は、これから2回3回と続いていけば、きっと人気イベントになっていくことだろう。

1日をフルに楽しませてもらった。この日を実現させてくれた皆さんに感謝

XEALT SJFを積み込み、名残惜しく小森家とお別れし、会場を後にした。今年は家族でショートコースを楽しませてもらったが、いつか、ロングコースも走ってみたい。

柔軟に対応し、先導してくださった増子さん、大会の発起人であり、開催を実現させた前田さんはじめ、スタッフの皆さま、一緒に走ってくださった皆さま、本当にありがとうございました!

text:Kiinuyo
photo:ツール・ド・大那実行委員会、M-WAVE写真事務所、Kinuyo

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