4月12日(金)から14日(日)にかけてUCIトラックネーションズカップの第3戦がカナダにて開催される。パリ五輪の出場枠を決める最後の大会へ向け、出場する選手、そしてテクニカルディレクターのブノワ氏からコメントが届いた。以下、プレスリリースより紹介しよう。



パリ五輪の自転車競技出場枠争いが大詰め!「2024UCIトラックネーションズカップ第3戦」
4月12日(金)~4月15日(日)開催


ネイションズカップ第2戦、男子ケイリンと男子スプリントで金メダルを獲得した太田海也 (c)JKA

パリオリンピックを迎える2024年、自転車競技では各国のオリンピック出場枠を決定するオリンピックポイントを獲得するために、各大会で熾烈な順位争いが繰り広げられています。

3月17日には「2024UCIトラックネーションズカップ 第2戦」が終了し、太田海也選手がケイリン、スプリントで金メダル、チームスプリントで長迫選手・小原選手と共に銀メダルを獲得するなど、オリンピックポイントが大きく加算され、特にスプリントではUCIトラックオリンピックランキングにおいて日本が一位に浮上しました。

パリオリンピックの出場枠争いは佳境を迎え、オリンピックポイント確定までに残された大会は、4月12日から開催される「2024UCIトラックネーションズカップ 第3戦」の1大会のみとなりました。そこで、最後の大詰めとなる大会を前に、日本選手団を率いるブノワコーチより選手たちの様子やコンディション、オリンピックに向けての意気込みを語っていただきました。



日本選手団を率いるコーチから見た選手の現状とは!テクニカルディレクター・ブノワ氏が五輪に向けての意気込みを語る

自転車競技トラックチームテクニカルディレクターを務めるブノワ・べトゥ (c)JKA

Q.香港でのネーションズカップを終え、現状の日本選手のコンディションはどのように捉えていますか?
香港のネーションズカップでは、日本チームがトラック競技において世界で最強の国のひとつであることを確認できました。短距離チームは、オリンピックのメダルを目指す有力選手として太田海也と佐藤水菜を擁し、この数カ月でメダルに絡む様々な局面に顔を出すことで、もはや挑戦者ではなく、一番高いところを競うチームであることを証明しました。中距離では、すべての種目においていまだに進化し続けていることを示しました。個人種目については、梶原は内野からの刺激もあり、パリで世界最高のライダーたちと戦う準備が整ったと言っていいでしょう。内野・垣田ペアは、マディソン種目における習熟を見せ、この種目で先頭を行く各国を驚かせました。中距離男子においては、窪木がすべての種目でチームのカギとなるメンバーであることを見せつけました。

Q.他国には無い、日本チームならではの強みを教えてください。

日本チームの強みは、選手自身がメダル獲得に対して強い責任感を覚える程の力を手にしたということです。チームメンバーは、もはや大会に参加してベストを尽くすということでは満足できず、毎回メダルを獲るために大会に臨むようになりました。日本の選手たちは、まだ改善の余地があるとしても、すでに世界のトップにいるライバル国と肩を並べる力を手にしています。

Q.日本の強い部分とは反対に、課題だと感じているポイントを教えてください。

トップレベルの国々の進化はとどまるところを知りません。我々の組織力は、今の条件下では限界まで高められていますが、もし我々がトラック競技の世界を席巻したいのであれば、組織構成や人的資源、スキルはさらに上のレベルのものが必要になってくるでしょう。オリンピック出場が現実的になった今、短期的には、最も強いオリンピックチームメンバーを選んでいくという課題があります。多くの選手にチャンスがありますが、オリンピックの出場枠のシビアな割り当ての中で、非常に難しい代表選考となるでしょう。

Q.普段の練習中、選手とはどのような会話やコミュニケーションを取られるでしょうか?

それぞれの選手の性格やその時のシチュエーションによります。私の言動の多くは、コーチたちや他のスタッフに向けてのものに思われますが、実際は選手にも届くものと考えています。選手の自信を確固たるものとするために常にポジティブなエネルギーを与えられるようにしています。全ての選手やスタッフは、大事な挑戦が近づいてくると色々な疑念にさいなまれるようになるので、彼らが疑念を私と共有することで、適切な解を導き出す助けになりたいと思っています。

Q.練習中以外にもコミュニケーションを取られると思いますが、練習の合間やオフの時間などはどのような会話をされますでしょうか?

スタッフや選手とは、よく車や時計の話になります。それから昔の笑い話なども。ほとんどの場合は、そのような面白おかしい会話になりますが、時には、オリンピックに関係する真剣な話になることもあります。会話の内容は誰と話すかで多岐に渡りますが、常に選手やスタッフと感覚を共有しています。

Q. 日本がパリ五輪でメダルを獲得するために必要だと感じるポイントを教えてください。

男子7名、女子7名という枠の割り当てのなかで選手を選ぶことは我々のメダル獲得のための冒険に影響を与えることは明らかです(注:チームスプリントやチームパシュートのメンバーの中からその他の種目の選手を選ばなくてはならない縛りがあると、それぞれの種目においてベストな選手が選べないというジレンマがある)。

生理学的側面、科学技術的側面は今も我々の弱い部分として残っていますが、この部分はこれからオリンピックまでに進歩するのは難しいと考えます。ただ、これは後ろ向きなことを言っているわけではありません。フィジカル面、テクニック面ではすべての種目においてまだ進化することができることと、その進化で十分に弱い部分を補えると考えています。

Q.日本チームのテクニカルディレクターとして、パリ五輪への意気込みをお願いいたします。

私がなるべくチームの近くにいることで、そばでサポートしていることを感じてもらい、日々選手に自信を与えたいです。オリンピックのメダルは最も難しいものですので、表彰台を望む場合、パリでは完璧な状態でいる必要があります。オリンピックは他のどのレースとも違います。我々は選手たちがこの唯一のレースで全力を発揮できるように準備しなくてはなりません。現実的な目標として、パリでは2つ、もしくは3つのメダル獲得を想定しています。しかし、ポテンシャルとしてはもっと多くを狙えると思っています。

我々は昨今、多くのメダルを獲得してきましたが、過信してはならず冷静でいなくてはなりません。まだまだ最近頭角を現してきたポッと出のチームです。しかし我々の成功への野望は、そのあたりのチームとは比較にならないと確信しています。

自転車競技トラックチームテクニカルディレクター ブノワ・べトゥ プロフィール
1973年10月29日生まれフランス出身。元フランス代表選手として活躍し、引退後はフランス、ロシア、中国ナショナルチームのコーチとして指導。2016年からは東京2020オリンピックに向け「ブノワ・ジャパン」として日本ナショナルチーム短距離ヘッドコーチに就任。今日に至るまで日本のメダル獲得に大きく貢献。東京2020オリンピック後は「短距離のヘッドコーチ」から短距離・中長距離すべてをまとめる「トラックチームテクニカルディレクター」に肩書きを変え、「チームジャパン」一丸となってパリ2024オリンピックを目指す。



「2024UCIトラックネーションズカップ第3戦」概要

パリオリンピック開催に伴い、2022年7月より始まった予選期間では「ネーションズカップ」「世界選手権」「大陸選手権」が行われ、パリオリンピックに向けたオリンピックポイント獲得の対象となる大会は残すところ1大会となりました。「2024UCIトラックネーションズカップ 第3戦」は、オリンピックポイントを決定する最後の大会となり、オリンピックへの弾みをつける重要な戦いとなります。

2024UCIトラックネーションズカップ第3戦
開催地 :カナダ・ミルトン
開催日程:4月12日(金)~4月14日(日)
実施種目:短距離 ケイリン、スプリント、チームスプリント
中長距離 エリミネーション、オムニアム、マディソン、チームパシュート



「2024UCIトラックネーションズカップ第2戦」結果

太田海也
男子ケイリン 金メダル
男子スプリント 金メダル

長迫吉拓・小原佑太・太田海也
男子チームスプリント 銀メダル

兒島直樹・橋本英也・窪木一茂・松田祥位
男子チームパシュート 銀メダル

橋本英也・窪木一茂
男子マディソン 銅メダル

垣田真穂・内野艶和
女子マディソン 金メダル

梶原悠未
女子エリ三ネーション 金メダル
女子オムニアム 金メダル

内野艶和
女子オムニアム 銀メダル

池田瑞紀・梶原悠未・垣田真穂・内野艶和
女子チームパシュート 銅メダル

2024UCIトラックネーションズカップ第2戦」レース後の選手コメント

男子マディソン 銅メダルの橋本英也・窪木一茂 (c)JKA

太田海也選手
今日のコンディションは悪くなく、ケイリンで自分の想定した展開に持って行けたのが非常に良かったと思います。日本代表であるからには金メダルを絶対に持って帰るという強い意志を持って走っていました。オリンピックに向けては、これ以上ない努力をしてきたので、どのような結果になっても悔いはないですが、出場することができれば頑張って走ります。

橋本英也選手
とても嬉しいです。一時はどうなるかと思いましたが、最後まで諦めなかった結果、銅メダルが獲れて良かったです。ただ最後の最後で、もう一つ踏める足があれば金メダルを獲れたのでそこが悔やまれますが、パリでは金メダルを獲れるように仕上げていきます。

窪木一茂選手
まさにチャンスが回ってきたので思いっきりアタックしました。まだまだより強くならなければならないですが、前回よりも今の方が強くなれているのでこのまま日本の勢いに乗ってさらに強くなりたいです。

内野艶和選手
やはりニュージーランドとオランダは強いチームだったのでアタックされないように気を付けました。最後まで2人で(垣田選手と)コミュニケーションを取りながら協力して勝ち取れた1位だったのでとても嬉しいです。今までで1番いいレースだったのでこの調子でオリンピックまで仕上げていきます。

女子マディソン 金メダルの垣田真穂・内野艶和 (c)JKA


「2024UCIトラックネーションズカップ第2戦」を控えた現在の日本のランキング
パリオリンピックでは6種目のトラック競技が実施され、6種目で合計180名(男女それぞれ90名ずつ)の出場枠が設けられています。また、各国の最大出場枠は原則として男女各7名ずつの14名であり、それぞれの種目で上限が設定されています。

たとえば、チームスプリントではオリンピックランキング上位8位の国に対し、1チーム分(3名)の出場枠が与えられます。また、スプリント・ケイリンでは、チームスプリントの出場枠を持つ8ヵ国から両種目に2名ずつ、加えてチームスプリントの出場枠を獲得した国を除くオリンピックランキング上位7位の国に対して1名ずつの出場枠が与えられます。

【各国が獲得できる最大出場枠数】
・チームスプリント:男女各1チーム(3名)
・スプリント:男女各2名
・ケイリン:男女各2名
・チームパシュート:男女各1チーム(4名)
・マディソン:男女各1チーム(2名)
・オムニアム:男女各1名

男子ケイリン
1位:オーストラリア
2位:日本
3位:マレーシア

女子ケイリン
1位:ドイツ
2位:日本
3位:ニュージーランド

男子スプリント
1位:日本オランダ
2位:オーストラリア
3位:オランダ

女子スプリント
1位:イギリス
2位:ドイツ
3位:フランス
5位:日本

男子チームスプリント
1位:オーストラリア
2位:日本
3位:オランダ