ツール・ド・スイス・ウィメン最終日は、ニエウィアドマのアタックに追従したニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)がマッチスプリントを制す。自らタイム差を縮めたマーレン・ローセル(SDワークス)が母国スイスで初の総合優勝に輝いた。



地元スイスでの総合優勝に王手をかけたマーレン・ローセル(SDワークス) photo:CorVos

今年からUCIワールドツアーに昇格し、ジロ・デ・イタリア・ドンネ(6月30日〜)、ツール・ド・フランス・ファム(7月23日〜)に向けた調整レースという意味合いが強いツール・ド・スイス・ウィメン。6月20日(火)に、その最終日となる第4ステージがエーブナート・カッペルを発着地点に行われた。

コースは中盤に1級を越え、2級山岳エーブナート・カッペル(距離3km/平均6.1%)を含むコースを3周する100.8km。序盤に10名が逃げグループを形成したが、レース中盤に入るころに先頭にはエグランティーヌ・レイエ(フランス、チームDSM)とジュリー・ファンデフェルデ(ベルギー、フェニックス・ドゥクーニンク)の2名が残った。

合計3回登坂する2級山岳エーブナート・カッペル(1度目は1.4km)に入り、先頭より1分後方のメイン集団から総合4位のブローディー・チャップマン(オーストラリア、トレック・セガフレード)がアタックする。これをキッカケに総合6位のカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)が飛び出し、チームメイトのティファニー・クロムウェル(オーストラリア)が呼応。そこに抑え役としてSDワークスは22歳の若手ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、)を送り、3名による追走集団ができた。

プロトンから飛び出し、総合逆転を目指したカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)が先頭集団との差を縮めていく photo:Tour de Suisse

クロムウェルが役割を終えてプロトンに戻り、ニエウィアドマら2人は先頭集団に合流する。レース前方のペースアップにより2分差まで拡がったプロトンではアマンダ・スプラット(オーストラリア、トレック・セガフレード)の加速を、SDワークスの総合首位マーレン・ローセル(スイス)と総合2位デミ・フォレリング(オランダ)がマークした。

4名となった先頭グループはフィッシャーブラックを除く3名がローテーションを回し、プロトンとのリードを2分30秒まで拡大させる。その時点で総合2分7秒遅れのニエウィアドマがバーチャルリーダーに立ったため、総合優勝に危機感を覚えたローセルが2度目の2級山岳の下りで単独アタック。その前方ではレイエとファンデフェルデが遅れ、ニエウィアドマが先頭固定でフィニッシュを目指した。

大会2日目の個人タイムトライアルで勝利したローセルは、先頭との差を一人で37秒まで縮める脅威的な走りを披露。しかし合流には至らず、ステージ優勝の行方は先頭の2人に絞られる。そしてニエウィアドマの背後で脚を溜め続けたフィッシャーブラックがフィニッシュ直前で抜き去り、ワールドツアー初勝利を飾った。

フィニッシュ手前で横並びになるニエウィアドマとフィッシャーブラック photo:Tour de Suisse

ワールドツアー初勝利を飾ったニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス) photo:Tour de Suisse

「チームとしてはステージ勝利よりも総合優勝を目指していたので、カタジナ(ニエウィアドマ)のアタックに私が反応した。監督であるダニー・スタムは”君なら勝てる”と私を励まし続けてくれた。最後は力を温存していた差が生まれ、彼女に勝つことができた」と、22歳のフィッシャーブラックはコメントした。

そして総合優勝は37秒遅れでフィニッシュしたスイス出身のローセルの手に。「これが大きな目標だったのでとても嬉しい。母国で勝つことは夢だった。カタジナ・ニエウィアドマとの差が拡がらないようデミ・フォレリングが強力な牽引を見せてくれた。世界一のチームが私を信頼し、その期待に総合優勝という結果で答えることができた」と今年5月のイツリア・ウィメンに続き、自身2度目となるワールドツアーのステージレース制覇をローセルは喜んだ。

37秒遅れでフィニッシュし、総合優勝を決めたマーレン・ローセル(スイス、SDワークス) photo:CorVos

ツール・ド・スイス・ウィメン2023総合表彰台:2位フォレリング、1位ローセル、3位ロンゴボルギーニ photo:Tour de Suisse

今大会はアシストに徹したフォレリングが総合2位に入り、山岳賞に輝いたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)が総合3位で表彰台へ。SDワークスは3名の選手がそれぞれ区間優勝を挙げ、総合でもワンツー。またポイント賞(ローセル)とヤングライダー賞(フィッシャーブラック)、チーム総合成績でも1位と、その強さをスイスの地でも示した。
ツール・ド・スイス・ウィメン2023第4ステージ結果
1位 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス) 2:47:49
2位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)
3位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) +0:37
4位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) +1:25
5位 エグランティーヌ・レイエ(フランス、チームDSM)
個人総合成績
1位 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス) 7:53:22
2位 デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) +1:02
3位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) +1:17
4位 カタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) +1:24
5位 エリーズ・シャベイ(スイス、キャニオン・スラム) +3:35
その他の特別賞
ポイント賞 マーレン・ローセル(スイス、SDワークス)
山岳賞 エリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)
ヤングライダー賞 ニアム・フィッシャーブラック(ニュージーランド、SDワークス)
チーム総合成績 SDワークス
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos