日本最大のステージレース、ツアー・オブ・ジャパンを走ったバイクをゼッケン順に紹介していくシリーズ第1弾。JCL TEAM UKYO、トレンガヌ・ポリゴン、アルマティ・アスタナ・モータース、そしてキナンレーシングチームのバイクを掘り下げて紹介します。



JCL TEAM UKYO ファクター OSTRO VAM

総合優勝を決めたネイサン・アール(オーストラリア、JCL TEAM UKYO)のファクター OSTRO VAM photo:So Isobe

OSTRO VAMに純正採用されるブラックインクの一体型ハンドル。コンピュータはブライトンのRider S500だ photo:So Isobe
タイヤはヴィットリアのCORSA PRO(28c)で統一 photo:So Isobe



ネイサン・アール(オーストラリア)が総合2連覇を達成し、ベンジャミ・プラデス(スペイン)が総合4位、岡篤志が信州飯田ステージ優勝、さらにチーム総合ランキングでも首位を射止めるなど、全域に渡ってチーム力を見せつけたチーム右京。バイクは近年人気が高まるファクターで、片山右京氏がF1ドライバーだった際、後にファクター創業者となるエンジニアと共に活動していた縁でサポートを受けているという。

これまでチームはエアロロードのONE、軽量モデルのO2などを使用してきたが、同じくファクターのサポートを受けるイスラエル・プレミアテック同様、次世代モデルのOSTRO VAMがデビューして以降は統一されている。ツアー・オブ・ジャパンでも少数のO2がスペアとして用意されているのみだった。

画像はアールのバイク。シマノのスポンサードを受けるため、コンポーネントはDURA-ACE R9270 DI2で統一し、ホイールもファクター傘下のブラックインクではなくDURA-ACEを使う。チューブレスタイヤへの移行を完了しており、レースバイクは全てヴィットリアの新型モデルであるCORSA PRO(28c)で統一されていた。

ボトルケージはエリートのLeggelo Carbon photo:So Isobe
サドルやバーテープはPROで統一 photo:So Isobe



片山右京氏がF1ドライバーだった際、後にファクター創業者となるエンジニアと共に活動していた縁でサポートを受けている photo:So Isobe

ハンドルはブラックインクの一体型ハンドルで、バーテープとサドルはPRO。コンピュータはブライトンのRider S500。なお東京ステージにおいてアールのフロントギア歯数はスタンダードな54-40Tだったが、チームメイトの山本大喜は56-44Tを装備。これは一般発売されていないプロ供給専用品だ。



トレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム ポリゴン HELIOS

モハマド・ザリフ(マレーシア)のポリゴン HELIOS。ランカウイで山岳賞を獲得した記念カラーだ photo:So Isobe

昨年のランカウイでセインベヤールが新人賞を、ザリフが山岳賞を奪ったことを祝うカラー photo:So Isobe
PROの新型ステム一体ハンドルVIBE EVO CARBON photo:So Isobe



マレーシアのトレンガヌ州政府とプロアジアスポーツマネジメントが2011年に設立して以降、アジアレースを中心に長年活動しているトレンガヌ・ポリゴン・サイクリングチーム。使用するのはインドネシアブランドのポリゴンで、エアロロード「HELIOS」を全メンバーが使用した。

マレーシアのナショナルカラーに塗られたバイクのチェーンステー部分には昨年のツール・ド・ランカウイでの特別賞受賞記録が記されている。シマノがスポンサードを行い、コンポーネントやホイールは新型DURA-ACE、コックピット、サドル、ボトルケージ類は全てPROブランドで統一されている。新型のステム一体ハンドルVIBE EVO CARBONを使う選手も多いように見えた。

こちらは通常のチームカラー photo:So Isobe

ツアー・オブ・ジャパンでは全メンバーがチューブレスホイール&タイヤを運用し、タイヤはコンチネンタルのGRANDPRIX 5000S TR。モハマド・ザリフ(マレーシア)のバイクには製品版とは異なる54-40Tチェーンリングが取り付けられていた。



アルマティ・アスタナ・モータース ウィリエール Zero SLR、アルゴン18 NITROGEN

アルマティ・アスタナ・モータースのウィリエール Zero SLR photo:So Isobe

ハンドルも同色塗装。スパカズのバーテープを使う photo:So Isobe
各所には歴戦の傷跡が残る photo:So Isobe



「アスタナ」と聞いてイメージする水色ではなく、真っ黒のジャージを着るアルマティ・アスタナ・モータース。カザフスタンに3チーム存在するワールドツアーチーム直系の若手育成チームの一つであり、ツアー・オブ・ジャパンには平均年齢21歳のメンバーで臨んだ(最年長はガスプロムに所属していた26歳のアントン・クズミン)。

使用バイクはワールドチームのお下がりと思われるウィリエール Zero SLR。ハンドルまで揃いのカラーでペイントされ、バイクにのあちこちには歴戦の傷跡とタッチアップも多数確認できた。コンポーネントはだいぶ使い込まれた様子のDURA-ACE DI2(11速)で、クランクセットはULTEGRAやパワーメーター付きのFSAも混在する。ブレーキパッドはメーカー不明の製品。

チューブラーだが、リムには「チューブレスレディ」のロゴが photo:So Isobe
コンポーネントは11速。DURA-ACEやULTEGRA、FSAなど様々なグレードが混ざる photo:So Isobe


2019年のお下がりと思われるアルゴン18のNITROGENも2台確認できた photo:So Isobe

ホイールはウィリエールと同郷で関係深いミケ(SWR T50 DX)。チューブラータイヤを運用しているものの、リムには「チューブレスレディ」のロゴがあった。

なお2名、アスタナが2019年まで使用していたアルゴン18(NITROGENのディスクブレーキ仕様)を運用している選手も。こちらはコリマのチューブラーホイール(47 WS)が取り付けられていた。



キナンレーシングチーム コルナゴ V3Rs

山本元喜(キナンレーシングチーム)のコルナゴ V3Rs photo:So Isobe

コンポーネントはアルテグラが基本。クランクとチェーンリングはDURA-ACEだ photo:So Isobe
2023シーズンよりコルナゴにスイッチ。全メンバーがV3Rsを使用する photo:So Isobe



キナンレーシングチームからは、元全日本王者である山本元喜のバイクをピックアップ。今季チームはコルナゴにサプライヤーをスイッチしており、メンバー全員がオールラウンドレーシングバイクのV3Rsに乗り、来るホームレースであるツール・ド・熊野での好成績に意欲を燃やしている。

チームカラーのバイクにアッセンブルされるコンポーネントはシマノDI2。R8170 ULTEGRAをメインに、駆動性能に直結するクランクとチェーンはDURA-ACEをセット。全日本選手権までにはトライピークのセラミックベアリングを各所に投入する予定だという。

ハンドルとステムはデダのVINCI DCR。コンピュータマウントを取り付けるために右側カバーを省略 photo:So Isobe

トライピークのセラミックベアリングを今後投入予定だという photo:So Isobe
タイヤはiRC。クリンチャーのASPITE PRO S-LIGHTとチューブレスのFORMULA PRO HL S-LIGHTを併用する photo:So Isobe



バイクブランドは変わったものの、ホイールはフルクラム(SPEEDシリーズ)、ハンドルはVINCI DCRシリーズ、タイヤはiRCと継続ブランドも多い。タイヤに関してはクリンチャーのASPITE PRO S-LIGHTをメインユースしており、チューブレスのFORMULA PRO HL S-LIGHTも併用されている。タイヤサイズはどちらも28Cだ。

コンピュータはブラントンのRider S800。同社製マウントを取り付けるためにステムクランプ横のハンドルカバーは右側のみ取り付けていない。サドルはフィジークのALIANTEだ。

text&photo:So Isobe