全日本選手権トラック最終日の4日目は、個人パーシュートとポイントレース、タイムトライアル種目、パラサイクリングの個人パーシュートが行われた。女子エリート3km個人パーシュートでは、内野艶和(チーム楽天Kドリームス)が予選、決勝共に日本記録を上回るタイムを出して優勝。500mタイムトライアルでは佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)が日本記録を更新して優勝した。



大会期間中の雨もベロドロームの屋根のおかげで影響なし photo:Satoru Kato

4日間に渡り伊豆ベロドロームで開催されてきた全日本選手権トラック。最終日は平日の月曜日とあって観客の数はかなり減ったもの、2つの日本新記録が誕生するハイレベルな戦いが繰り広げられた。



個人パーシュート

女子エリートIPP 日本新記録で優勝した内野艶和(チーム楽天Kドリームス) photo:Satoru Kato

女子エリート・パーシュート 日本新記録で優勝して喜ぶ内野艶和(チーム楽天Kドリームス) photo:Satoru Kato
女子エリート個人パーシュート 表彰式 photo:Satoru Kato


女子エリート3kmでは、予選で内野艶和(チーム楽天Kドリームス)が3分33秒466を出して1位。2019年に梶原悠未が出した3分33秒740の日本記録を上回った。内野はさらに、決勝では予選タイムを約3秒縮めて3分30秒台にのせるハイペースの走りで優勝を決めた。

男子エリート・4km個人パーシュート決勝 松田祥位が窪木一茂に追いついて勝負を決める photo:Satoru Kato

男子エリート4kmでは、昨年日本記録を出した窪木一茂が予選1位、松田祥位が2位となってチームブリヂストンサイクリング同士の決勝戦へ。「大先輩を相手にビビっていた」と言う松田だが、ペースの上がらない窪木に2km過ぎで追いついて勝負を決めた。

男子エリート・4km個人パーシュート 表彰式 photo:Satoru Kato

松田祥位コメント
「タイムは振るわなかったけれど、窪木先輩と戦えて良かった。得意種目なので本当は記録更新と行きたかったけれど、ぶっつけ本番になってしまい、予選はギアが足りなくて下方修正することになってしまった。疲れが残ってる中、自分ではよく走れたと思う。意気込んだらとんでもない走りをする窪木さんを相手に、自分らしく安定した走りが出来て良かった。

個人パーシュートで記録更新し、世界との差をもっと縮めていくことが今後の目標。パリ五輪に向けては順調にポイントを重ねられていると思うので、8月の世界選手権で全てが決まると思う。全日本は終わったけれど、これからギアをもう1段階上げて練習して、最高のパフォーマンスが出せるように頑張っていきたい」

男子ジュニア・3km個人パーシュート優勝 三浦一真(湘南工科大学附属高校) photo:Satoru Kato
女子ジュニア・2km個人パーシュート優勝 岡本美咲(北桑田高校) photo:Satoru Kato





女子500mタイムトライアル 男子1kmタイムトライアル

女子エリート500mTT 日本記録を更新する34秒467で優勝した佐藤水菜 photo:Satoru Kato

女子エリート500mTT 日本記録で優勝して喜ぶ佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス) photo:Satoru Kato
女子500mTT 表彰式 photo:Satoru Kato


女子500mタイムトライアルでは、酒井亜樹(HPCJC)が34秒708、佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス)が34秒467と、日本記録を上回るタイムを出した。この種目の日本記録更新は2013年に前田佳代乃が34秒882を出して以来約10年ぶりとなる。佐藤はこれで三冠達成。2位の酒井は初日にエキシビジョンのチームスプリントで1走を務めて日本新記録を出し、ナショナルチームの新戦力として期待がかかる。

男子エリート・1kmTT優勝 市田龍生都(中央大学) photo:Satoru Kato

男子1kmタイムトライアルでは、市田龍生都(中央大学)が優勝。インカレ連覇中の市田だが、エリートでの全日本選手権は初優勝。「タイムは1分を切りたかったが、全日本チャンピオンは嬉しい」と表彰式でコメントした。

男子ジュニア1kmTT優勝 杉浦颯太(千歳高校) photo:Satoru Kato
女子ジュニア500mTT優勝 北岡マリア(内灘高等学校) photo:Satoru Kato




ポイントレース

男子エリート・ポイントレースは20名が出走 photo:Satoru Kato

男子エリート・ポイントレース終盤 ポイントを獲りに行く兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato

男子エリートは120周30kmのレースに20名が出走。前半に松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が2度のラップ(集団を周回遅れにすること)を成功させて40ポイントを獲得。大きくリードを広げるも、直後に失速して逆に1周遅れを取られてしまいマイナス20ポイント。これで兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)との差が縮まると、後半は兒島が攻勢に出てポイントを連取し逆転。松田も対抗するものの兒島が逃げ切り、昨年に続き連覇を決めた。中盤以降のチームブリヂストンサイクリング勢のペースアップにより、完走は半数以下の8名となるサバイバルレースとなった。

男子エリート・ポイントレース ガッツポーズでフィニッシュする兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング) photo:Satoru Kato

兒島直樹コメント
「昨年も優勝していて、ポイントレースは得意種目でもあるので、絶対に勝ちたいと思って臨んだ。それが結果に結びついて嬉しい。昨日のオムニアムは調子は良かったけれど、最後の詰めの甘さが出てしまったので、今日は最後まで諦めないように頑張った。松田選手は個人パーシュートを走った後であの強さだったので、それが無ければどうなっていたのか分からない。タラレバになってしまうが、そのチャンスを掴めたと思う」

男子エリート・ポイントレース 表彰式 photo:Satoru Kato

「全日本選手権は海外のレースと違ってチームブリヂストンサイクリング同士の戦いになるけれど、チームメイトは海外で戦ってきているメンバーなのでその中で勝てることは世界への切符が得られる大会だと自分の中で位置付けている。

パリ五輪はチームパーシュートで出ることがチーム全体の目標。その上で自分がメンバーに入り、個人種目でも出場できるようにしていきたい。五輪はスポーツ選手にとって憧れの大会であり、僕のゴールでもある。それに向けて一歩一歩前進して行きたい」

女子エリート・ポイントレース アジアチャンピオンの内野艶和(チーム楽天Kドリームス)を先頭に一列の集団 photo:Satoru Kato

女子エリート・ポイントレース 大外から一気に加速してポイントを獲りに行く梶原悠未(TEAM Yumi) photo:Satoru Kato

女子エリートは80周20km。チーム楽天Kドリームスの垣田真穂、池田瑞紀、内野艶和らが次々と攻撃に出てポイントを取るも、要所を締めるようにレースを展開する梶原悠未(TEAM Yumi)のリードを奪えず。フィニッシュは内野に譲ったものの、梶原のポイントリーダーの座は揺るがず優勝。今大会五冠を達成した。

女子エリート・ポイントレース 表彰式 photo:Satoru Kato

男子ジュニア・ポイントレース 金井健翔(松山学院高等学校)が優勝 photo:Satoru Kato
女子ジュニア・ポイントレース 水谷彩奈(松山学院高等学校)が優勝 photo:Satoru Kato


男子ジュニアは60周15km。ポイントの取り合いとなったレースはフィニッシュ1位で10ポイントを獲得した金井健翔(松山学院高等学校)が優勝した。女子ジュニアは水谷彩奈(松山学院高等学校)がフィニッシュで岡本美咲(北桑田高校)を逆転して優勝した。



パラサイクリング

パラサイクリング3km個人パーシュート優勝 杉浦佳子(TEAM EMMA Cycling/総合メディカル) photo:Satoru Kato

パラサイクリング・個人パーシュートMC2-3 大会新記録で優勝した川本翔太(大和産業株式会社) photo:Satoru Kato
パラサイクリング4km個人パーシュート優勝 福冨伸彦(NTT東日本/NTI) photo:Satoru Kato


個人パーシュート 結果
男子エリート4km
1位 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング) 4分24秒690(予選時)
2位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 4分22秒578(予選時)
3位 安達光伸(朝日大学) 4分25秒051
4位 伊藤 恭(中央大学) 4分30秒931
女子エリート
1位 内野艶和(チーム楽天Kドリームス) 3分30秒486(日本新)
2位 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学) 3分35秒067
3位 池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学) 3分37秒126
4位 古山稀絵(チーム楽天Kドリームス) 3分43秒789
男子ジュニア
1位 三浦一真(湘南工科大学附属高校) 3分23秒963
2位 望月 蓮(山梨県立吉田高校) 3分26秒199
3位 金井健翔(松山学院高等学校) 3分28秒702
4位 廣田汰也(崇徳高校) 3分32秒345
女子ジュニア
1位 岡本美咲(北桑田高校) 2分27秒060
2位 室谷榎音(青森商業高校) 2分33秒863
3位 水谷彩奈(松山学院高等学校) 2分30秒776
4位 近田ちひろ(松山学院高等学校) 2分32秒047
女子500mタイムトライアル 結果
エリート
1位 佐藤水菜(チーム楽天Kドリームス) 34秒467(日本新)
2位 酒井亜樹(HPCJC) 34秒708(日本新)
3位 梅川風子(チーム楽天Kドリームス) 35秒172
4位 久米 詩(JPCA) 36秒453
5位 小原乃亜(八戸学院大学) 36秒806
6位 中西美央(鹿屋体育大学) 37秒164
ジュニア
1位 北岡マリア(内灘高等学校) 36秒804
2位 濱 彩春(法政大学) 38秒056
3位 相見涼花(倉吉西高校) 38秒109
4位 伊藤來未(日出総合高校) 38秒827
5位 齊藤 萌(別府翔青高校) 39秒382
6位 松崎光優(松山学院高等学校) 39秒530
男子1kmタイムトライアル 結果
男子エリート
1位 市田龍生都(中央大学) 1分1秒040
2位 中石 湊(北海道自転車競技連盟) 1分1秒307
3位 新山響平(チームブリヂストンサイクリング) 1分2秒454
4位 村田祐樹(JPCA) 1分2秒766
5位 伊藤京介(日本大学) 1分2秒863
6位 三神遼矢(日本大学) 1分3秒155
男子ジュニア
1位 杉浦颯太(千歳高校) 1分4秒464
2位 丸山留依(静岡北高校) 1分5秒069
3位 大塚 城(静岡星稜高校) 1分5秒232
4位 山下翔太郎(石川県立内灘高等学校) 1分5秒550
5位 福田海響(八王子実践高等学校) 1分6秒107
6位 金子 颯(東北高校) 1分6秒378
ポイントレース 結果
<男子エリート
1位 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング) 45p
2位 松田祥位(チームブリヂストンサイクリング) 40p
3位 橋本英也(チームブリヂストンサイクリング) 38p
4位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング) 22p
5位 矢萩悠也(京都産業大学) 13p
6位 佐藤 健(Team SSP/愛三工業) 10p
女子エリート
1位 梶原悠未(TEAM Yumi) 31p
2位 垣田真穂(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学) 25p
3位 池田瑞紀(チーム楽天Kドリームス/早稲田大学) 20p
4位 内野艶和(チーム楽天Kドリームス) 20p
男子ジュニア
1位 金井健翔(松山学院高等学校) 17p
2位 広瀬徳近(石田高校) 9p
3位 森田叶夢(京都産業大学) 8p
4位 奥村圭志(千原台高等学校) 7p
女子ジュニア(10km)
1位 水谷彩奈(松山学院高等学校) 19p
2位 岡本美咲(北桑田高校) 16p
3位 近田ちひろ(松山学院高等学校) 13p
4位 室谷榎音(青森商業高校) -14p
パラサイクリング3km個人パーシュート 結果
WC2-3 タイム 係数タイム
1位 杉浦佳子(TEAM EMMA Cycling/総合メディカル) 4分0秒471 4分0秒471
2位 藤井美穂(楽天ソシオビジネス株式会社) 4分31秒890 4分11秒362
3位 中道穂香(テレビ愛媛) 6分2秒418 5分35秒055
MC2-3 タイム 係数タイム
1位 川本翔太(大和産業株式会社) 3分37秒050 3分23秒940(大会新)
2位 藤田征樹(藤建設株式会社) 3分40秒353 3分40秒353
パラサイクリング4km個人パーシュート 結果
MC5
1位 福冨伸彦(NTT東日本/NTI) 5分44秒825
2位 沼野康仁(usp lab.VC SPLENDOR) 6分22秒147

text&photo:Satoru Kato