7日間に渡るボルタ・ア・カタルーニャが閉幕。最終日をレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が制し、勝利を譲ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が自身初となる総合優勝者に輝いた。



カタルーニャ最終日はスペイン第2の都市バルセロナを巡る photo:Volta Ciclista a Catalunya

1週間続いたボルタ・ア・カタルーニャ(UCIワールドツアー)も最終日。スペイン第2の都市バルセロナを巡る第7ステージは序盤に2級山岳を越え、長い平坦路を経てバルセロナ市街地の8kmコースを5周する。その周回コースの中盤に設定された2級山岳モンジュイックの丘(距離2.7km/平均4.7%)がレースの難易度を上げた。

昨年はクライマーによる集団スプリントに持ち込まれたカタルーニャ最終日は、山岳賞ランキングで上位につけるギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)やイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)など強力な9名が逃げを打った。

それをメイン集団の先頭で追いかけたのはスーダル・クイックステップ。総合首位プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)と連日激しい戦いを繰り広げ、10秒差の逆転を狙うレムコ・エヴェネプール(ベルギー)のためにチームはハイペースでバルセロナ市街地の周回コースに突入した。

ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)など強力なメンバーが揃った逃げ集団 photo:CorVos

総合逆転を目指し、ハイペースに持ち込んだスーダル・クイックステップ photo:CorVos

周回を重ねる逃げ集団はヘイターの脱落から徐々に人数を減らしていく。そして残り3周の直前で最後まで粘ったデラクルスを飲み込んだプロトンから、エヴェネプールが加速。それにログリッチが反応し、遅れて合流したマルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ)を含む3名の先頭グループが出来上がった。

ボーラ・ハンスグローエが牽引するプロトンに対し、先頭集団は10〜20秒のリードを得る。そのきっかけを作ったエヴェネプールがログリッチとソレルに先頭交代を要求するものの、後方に控えるチームメイトが合流した方が有利と判断した2人はそれを拒否。しかしエヴェネプールが先頭固定であってもメイン集団との差は拡がりつづけ、この日最後のモンジュイックの丘でエヴェネプールの加速にソレルが脱落した。

エヴェネプールのアタックに追従したログリッチとソレル photo:CorVos

最後のモンジュイックの丘でエヴェネプールアタックし、ソレルが脱落する photo:CorVos

追走集団ではジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ)やエステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)、ソレルの遅れを聞いたジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)がアタックするものの、先頭2人には追いつかない。逃げ切りが濃厚となり、ログリッチもローテーションに加わるようになると更に2人のリードは拡大した。

そして、最後は約28kmに渡ってほぼ1人でリードを築いたエヴェネプールに対し、ログリッチが勝利を譲る形で総合トップの2人がフィニッシュラインを通過。エヴェネプールが今大会区間2勝目を挙げ、ログリッチが自身初となる総合優勝に輝いた。

最終ストレートを前に、ほぼ確定した総合優勝を喜ぶプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

カタルーニャ最終日を勝利したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

「この大会には区間優勝と総合表彰台を目指しやってきた。だからそれ以上の結果が得られてとても嬉しい。チーム全体でレースを厳しくできたことを誇りに思う。世界最高峰の選手(ログリッチ)を相手にすることは困難だと分かっていた。だがベストを尽くし、モンジュイックの丘で何度もアタックを繰り返した。あと少しで総合優勝に手が届きそうだったことは、僕のコンディションが良い証拠になるよ」と、エヴェネプールは喜びながら大会を振り返った。

そしてティレーノ~アドリアティコに続く、今季2度目の総合優勝を手に入れたログリッチは「スリルのある最終日となった。カタルーニャの総合優勝は喜びと共に誇りに感じる」とコメント。「レムコが今日も仕掛けることは明らかで、幸運にも彼についていく脚があった。素晴らしい1週間となり、(昨年の肩の手術から)これ以上ない前進となった。数週間後に来るレースでもこのコンディションが保てると最高だね」と、ジロ・デ・イタリアという次なる目標に向けて意気込みを語った。

フィニッシュ直後、互いの健闘を称え合うログリッチとエヴェネプール photo:CorVos

ボルタ・ア・カタルーニャ2023表彰台:2位エヴェネプール、1位ログリッチ、3位アルメイダ photo:CorVos

今シーズン開幕戦を終えた新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

ログリッチとエヴェネプールは共に高地でのトレーニング合宿を挟み、5月6日に開幕するジロにて再び直接対決することになる。そしてミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)の総合5位入賞に尽力した新城幸也は、最終ステージで途中棄権となったものの、笑顔で今シーズン初戦となるボルタ・ア・カタルーニャを終えている。

ボルタ・ア・カタルーニャ2023第7ステージ
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 2:59:24
2位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
3位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:53
4位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:58
5位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード)
6位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー)
7位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)
8位 ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)
9位 クーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
10位 オスカー・オンレー(イギリス、チームDSM)
個人総合成績
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 28:19:10
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:06
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +2:11
4位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +2:49
5位 ミケル・ランダ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) +2:59
6位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) +3:03
7位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、トレック・セガフレード) +3:06
8位 ジャイ・ヒンドレー(オーストラリア、ボーラ・ハンスグローエ) +3:11
9位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +3:32
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) +3:53
その他の特別賞
ポイント賞 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
山岳賞 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
ヤングライダー賞 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
チーム総合成績 UAEチームエミレーツ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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