與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)が出場したUCIワールドツアー第3戦&初開催のUAEツアー・ウィメン。初日スプリントで、昨年までロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス)のリードアウトを務めたシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)がウィーベスを下した。



初開催されたUAEツアー・ウィメン photo:CorVos

オセアニアのオーストラリアで開幕した2023年UCIウィメンズワールドツアーは欧州を目指し中東へ。アラブ首長国連邦を舞台とするUAEツアーが開催5年目で女子レースを初開催した。

首都アブダビを中心に争われるUAEツアー・ウィメンは全4ステージで行われ、3日目を除き平坦ステージが続く。そのためトップスプリンターが集結し、なかでもチームDSMから今年SDワークスに移籍したロレーナ・ウィーベス(オランダ)や、スポンサーにアピールしたいキアラ・コンソンニ(イタリア、UAEチームADQ)、昨年までウィーベスの最終発射台を担っていたシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)らが注目株だ。

一方、UAEツアーの名物フィニッシュ「ジュベルハフィート」で決する総合成績を狙うのは、ツアー・ダウンアンダーを制したグレース・ブラウン(オーストラリア)とマルタ・カヴァッリ(イタリア)を揃えるFDJ・スエズ。そこにリアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター)やエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)も出場し、與那嶺恵理(ヒューマンパワードヘルス)も今季2レース目として臨んでいる。

大会初日のスタート地点、ポート・ラシードを出発する選手たち photo:CorVos

今年からモビスターに移籍したリアヌ・リッパート(ドイツ) photo:CorVos

初日はポート・ラシードを出発し、828mの超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」や木の形をした人工島「パーム・ジュメイラ」などアブダビの観光名所を通りドバイ・ハーバーにフィニッシュする109km。総獲得標高差207mのフラットステージは北西からの強風の影響もあり、落車が続出する混沌のレースと化した。

スタート直後にマチルダ・ベルトリーニ(イタリア、ビーピンク)が落車し、早速今大会最初のリタイア選手になる。その後も落車は続き、更に横風による集団分断と合流を繰り返しながら、ボーナスタイムが付与される1つ目の中間スプリントをアグニエシュカ・スカルニアクソイカ(ポーランド、キャニオン・スラム)が先頭通過。2つ目をリッパートが先着し、総合優勝を狙う2人がそれぞれ−3秒を獲得した。

アブダビの市街地を巡るプロトン photo:CorVos

逃げらしい逃げが形成されないまま進んだレースは、高い緊張感のままパーム・ジュメイラの脇を通過した。スプリントを狙うUAEチームADQや、総合エースを守りたいモビスターらが集団先頭でポジションを争うなか、残り4kmのトンネルを抜けた直後の落車が発生。巻き込まれたウィーベスはバルバラ・グアリスキ(イタリア、SDワークス)の牽引によって集団復帰を果たしたが、スプリントの脚を削ってしまっていた。

残り2.7kmで10名が絡む落車がありながらも大勢には影響なく、SDワークスのトレインを先頭に集団スプリントに突入する。フィニッシュライン手前150mで飛び出したウィーベスが勝ちパターンに持ち込んだと思いきや、その背後から並んだのはコール。幾度となくウィーベスの勝利をお膳立てしてきたコールが、ハイスピードを維持したままフィニッシュを先頭通過した。

ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス)の前に出るシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM) photo:CorVos

初日勝者に輝いたシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM) photo:CorVos

「素晴らしく、でも信じられない勝利。この勝利のために私たちは辛い冬のトレーニングを積み重ねた。リードアウトを落車で失い、混沌のなかでのスプリントだったが、素早く計画を変更することができた。不運の中でも掴んだ美しい勝利。明日も勝利を狙いたい」と、コールは今季初勝利をそう喜んだ。

コールは2020年にNXTGレーシング(現AGインシュランス・スーダル・クイックステップ)でプロデビューを果たした23歳。チームDSMに加入初年の2022年は同い年ウィーベスのリードアウトとして活躍し、今年はその穴を埋めるべくエースを任された若きスプリンターだ。

一方、落車の影響が出たウィーベスは「力を使わなければならなかった(フィニッシュ直前での)落車は残念。完璧な形で集団に復帰することができ、良いリードアウトを受けたたものの、少しだけ力が足りなかった」とコメントし、「でもあのリードアウトは今後の自信に繋がった。スプリントが予想される明日のチャンスを掴みたい」と意気込みを語った。

落車がスプリントに影響したロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス) photo:CorVos

エーススプリンターを任された初レースで早速結果を残したシャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM) photo:CorVos

UAEツアー・ウィメン2023第1ステージ
1位 シャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM) 2:47:14
2位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス)
3位 キアラ・コンソンニ(イタリア、UAEチームADQ)
4位 マリア・コンファロニエーリ(イタリア、ウノエックス・プロサイクリングチーム)
5位 サラ・ローイ(オーストラリア、キャニオン・スラム)
6位 テレザ・ネウマノバ(チェコ、リブレーシング・エクストラ)
7位 マギー・コールズリスター(カナダ、ZAAFサイクリングチーム
8位 マイヤライン・ファントゥへローフ(オランダ、ヒューマンパワードヘルス)
9位 ベレンティーナ・バシリコ(イタリア、ビーピンク)
10位 ロクサーヌ・フルニエ(フランス、サンミッシェル・オーベル93)
個人総合成績
1位 シャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM) 2:47:04
2位 ロレーナ・ウィーベス(オランダ、SDワークス) +0:04
3位 キアラ・コンソンニ(イタリア、UAEチームADQ) +0:05
4位 リアヌ・リッパート(ドイツ、モビスター) +0:07
5位 ニーナ・ケスレル(オランダ、ジェイコ・アルウラー) +0:08
6位 シルヴィア・ペルシコ(イタリア、UAEチームADQ)
7位 クリスティーナ・トネッティ(イタリア、トップガールズ・ファッサボルトロ) +0:09
8位 マリア・コンファロニエーリ(イタリア、ウノエックス・プロサイクリングチーム) +0:10
9位 サラ・ローイ(オーストラリア、キャニオン・スラム)
10位 テレザ・ネウマノバ(チェコ、リブレーシング・エクストラ)
その他の特別賞
ポイント賞 シャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)
ヤングライダー賞 シャーロッテ・コール(オランダ、チームDSM)
チーム総合成績 セラティツィット・WNTプロサイクリング
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos