MBK AL-seriesMBK AL-series photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp

フレンチブランドのMBKよりニューフレームが登場した。オリジナルのシリコン・マグネシウム・アルミ合金によるU6チューブを用いた意欲作である。このアルミバイクは日本限定40台というプレミアムバイクだ。フレーム素材のセレクトからジオメトリー、パーツアッセンブルまで日本のサイクリストをターゲットに製作しているという。

MBKはハイエンドモデルにフルカーボンフレームのRD1200を据える。2009年のフランスチャンピオン、デミトリー・シャンピオンの走りを支えたバイクだ。MBKの上位機種のほとんどはカーボンフレームであるが、それらのラインナップがもつMBKのエッセンスを注入したエントリーモデルが、このALシリーズである。

このALシリーズに用いられるアルミを母材とする新素材を採用したU6チューブは、BMXやトライアル競技用のフレームに用いられる強度の高いフレーム素材だ。

オリジナルの配合を施したアルミチューブにより優れた強度を実現したオリジナルの配合を施したアルミチューブにより優れた強度を実現した ダウンチューブは優れた強度のアルミチューブをトリプルバテッド加工し使用するダウンチューブは優れた強度のアルミチューブをトリプルバテッド加工し使用する


さらにダウンチューブは、ポピュラーな6000番や7000番アルミといった素材を用いたチューブと比較して、素材の引っぱり強度、ねじれ強度、折れ強度といったフレームに求められる強度は2倍近くも高い数値をたたき出すという。それに伴う高い性能とロングライフが期待できる。

加えて、ヘッド周りの剛性アップを図るべく上下異径のテーパードヘッドを採用。これはアルミモデルとしては初めての試みである。そして考えられる最高のチョイスとして、MBKのアイデンティティが伺えるエアロウィング・フロントフォークをアッセンブルしている。

MBKオリジナルエアロウィングカーボンフォークMBKオリジナルエアロウィングカーボンフォーク ボリューム感のあるフレームワーク。「剛性」を連想させるボリューム感のあるフレームワーク。「剛性」を連想させる 特徴的なヘッドチューブの形状特徴的なヘッドチューブの形状


このエアロウィング・フロントフォークを採用することにより、従来のジオメトリーを見直している。ヘッドアングル、オフセット量を適正化し、それに伴い、 BB下がりの位置、トップチューブ長も変化させている。

これは暗に上位モデルのジオメトリーを流用することで、最高の性能が発揮されるというほどジオメトリーは簡単ではないことをMBKは示している。素材の持ち味を活かす設計を追求する中で、MBK独自のベストなハンドリングを導き出すというのが本来の目的だという。

シンプルな形状ながらフレンチブルーのグラフィックが鮮やかだシンプルな形状ながらフレンチブルーのグラフィックが鮮やかだ まっすぐに伸びたチェーンステー。パワーロスが少なそうだまっすぐに伸びたチェーンステー。パワーロスが少なそうだ


フレームの特徴としては全体の剛性感を重要視している。アルミを母材とする素材にはカーボン素材が醸しだすような振動吸収性は期待できないので、アルミ素材の持ち味であるがっちりとしたフレームワークにより不快な共振や、振動を発生させないような設計をしている。これはスチールフレームを製作するときも同じことだという。

これは、しっかりとしたシャーシの自動車ならサスペンションの限界を超えてもバイブレーションやノイズなど不快な振動を受け止めてくれることと、同じ考え方である。

素材にこだわった結果U6アルミチューブを使用する素材にこだわった結果U6アルミチューブを使用する アルミを母材とする新素材を採用したダウンチューブは高い強度を発揮するアルミを母材とする新素材を採用したダウンチューブは高い強度を発揮する シートステーは微妙にカーブするがしっかりとした作りで剛性を確保するシートステーは微妙にカーブするがしっかりとした作りで剛性を確保する


また「レースに使える手軽なアルミフレームバイクが欲しい」、との市場の声に応えたかったのも製作の理由だという。シマノ・アルテグラをメインコンポーネントにしながらも、パーツアッセンブルの熟慮を重ねた結果、完成車価格は26万円とお手頃な価格を実現している。ホイールはマヴィック・アクシウム ブラックを装備しているが、アップチャージによりグレードアップさせることもできる。

さて、この新しいコンセプトのレーシングバイク、ALシリーズを2人のインプレライダーはどのように感じたのだろうか。早速インプレッションをお届けしよう。





―インプレッション


「踏み出しの軽さが印象的」 鈴木祐一(Rise Ride)

印象に残ったのは踏み出しの軽さだ。一切の抵抗を感じずスッと加速し、楽にスピードを上げることができた。

例えば信号からの再スタートなどゼロ発進が多いシチュエーションはウンザリしてしまうものだが、このバイクなら気分よく走れそうだ。その上、巡航スピードに乗せるまでロス無く加速できるというのは高く評価できる。この加速性能は高級なロードレーサーに比べても引けを取らないだろう。

そしてステアリングコントロール性の高さが特徴的だった。エントリーライダーの多くはハンドルを切って曲がってしまう傾向が強いが、実際は「バイク全体を寝かせると曲がる」というのが自然な動きである。その感覚がビギナーでも最初から得ることができるバイクで、曲がりたいときに車体を傾けるとスムーズに曲がってくれる。

「印象に残ったのは踏み出しの軽さだ」鈴木祐一「印象に残ったのは踏み出しの軽さだ」鈴木祐一

ハンドリング性能はヘッドアングル、フォークオフセットなどのメーカーの設計思想が強く影響するが、このバイクは直感的にコントロールできるように設計されている。長距離を走ったときなどは数多くのコーナーをこなすことになるが、コーナーワークに自信がない人でもストレスを最小限にとどめて走ることができそうだ。

アルミフレームとしては振動吸収性は高い部類だろうか。ホイールやタイヤといったパートも大きく影響するのだが、完成車というパッケージで考えた場合突き上げなど不快な要素がマイルドに感じる。

全体的に軽いギヤで回していくペダリングが向いている。高いスピード域でも回していくと楽にスピードを維持できる。リアルレーサーと比較すると、重いギヤのダッシュが若干鈍さを感じるが、パーツのアッセンブル次第で改善できそうだ。しかしながらこの状態でも十分にメリットがあるので、それを引き出すような走りを習得したいところ。

ロードバイクは長く乗るためことや長距離を走ることが本来の目的で、半年から1年経ったときでもガタが出にくくあるべき。そういった観点からシマノ・アルテグラの標準装備は歓迎できる。変速性能も充実しており、安全に楽しく速く遠くまで行ける優秀なコンポーネントだろう。

初めてロードに乗る人もすごく扱いやすいバイクと感じた。ドロップハンドルが怖いなと思っている人にもよい他には無い優れたバランス。MBKのコンセプトは的を得ている。



「良好な設計思想と優れた素材の融合」 山本健一(バイクジャーナリスト)

「良好な設計思想と優れた素材の融合」山本健一「良好な設計思想と優れた素材の融合」山本健一 フランスの自転車ブランドとして広く知られるMBK。昨年のフランスチャンピオンがハイエンドモデルのRD1200を駆り、チャンピオンシップをはじめモンバントゥ頂上ゴールのエタップ・デュ・ツールも好タイムで優勝している。

そんなプロサイクリストから、エントリーユーザーまで幅広くカバーするブランドである。その背景には良好な設計思想と優れた素材の融合が欠かせないだろう。

記録を重要視するシリアスライダーと、日常のサイクリングを楽しみたい一般的なサイクリストではニーズが異なり、適した素材や設計がある。エントリーユーザーに適した素材として多角的な視野で判断するとアルミ素材も捨てたものではない。

その耐久性は、作り方によってはスチールにも引けを取らないだろう。弱点とされる振動吸収性も、今や優秀なパーツによって改善できるレベルにある。それにトレーニング並みのハードなライディングでなければ、それほど気になるものでもない。

フレームそのものの印象は脚に強烈な反発感を感じること無く軽快に加速していく。踏み続けられる適正なギヤ比なら、カーボンフレームである必要性を感じないくらい快適なフレームといえるだろう。

試乗車は私にとって小さめのサイズだったが、実にコントロール性が良い。MBK特有のステアリングフィールがもたらすのであろう、自然なハンドリングだった。バイクを操る楽しさを味わえる優れた設計といえる。

全体的な重量感はカーボンフレームと比較するならばやや重さを感じるが、実際に走っているときの軽さからは、持ったときの重さは感じ取れない。走って軽いバイクといえるが、下りの安定感も見過ごすことはできない。

パワフルなフロントフォークとフレームのマッチング、さらにはホイールやハンドル部までに至るアッセンブルが絶妙なバランス感を生み出し、下りが楽しくなる。前後のバランスに長け、ハイスピードでコーナリングしても肝を冷やすような場面はない。むしろバイク性能に頼りスピードを出し過ぎてしまうことに気をつけたい。

上りでは急激な加速なども比較的得意で、パワーをしっかりと受け止めロスは少なく感じる。ホイールのパワー伝達能力も高く安定した走りを楽しめた。

最初の一台としては十分すぎる性能を持つバイクといえる上に、お手頃な価格もうれしい。レースに参加したいと思っているユーザーにお勧めしたい。


MBK AL-seriesMBK AL-series photo:MakotoAYANO/cyclowired.jp

MBK AL-series
フレーム:MBKオリジナルU6・シリコンマグネシウムアルミ合金 トリプルバテッドチューブ ヘッドサイズ 上1-1/8″ 下1-1/2″
フォーク:軽量カーボン・ウイングデザイン R-FORCE
コンポーネント:シマノ・アルテグラ コンパクトクランク リアカセット12/25T
ホイール:マヴィック・アクシウム ブラック
タイヤ:ミシュラン・リチオン ダークグレー
サドル:PZレーシング・MBKオリジナル 白×黒
ハンドルバー:MBKオリジナル 黒 400mm巾
ステム:MBKオリジナル 黒 90mm 31.8φ
ピラー:MBKオリジナル 黒 31.6φ 300mm長
バーテープ:オリジナル 白
サイズ:XS、S、M
※ステム長は100mm、110mm(白)も選択できる。
マヴィックホイールは、別途精算によりグレードアップ変更可能。
ノーマルクランクのうえ、リアカセット高体連ギア14-25Tに変更可能。

希望小売価格:260,000円(税込/完成車)、170,000円(税込/フレームセット)




インプレライダーのプロフィール

鈴木祐一鈴木祐一 鈴木 祐一(Rise Ride)

サイクルショップ・ライズライド代表。バイシクルトライアル、シクロクロス、MTB-XCの3つで世界選手権日本代表となった経歴を持つ。元ブリヂストン MTBクロスカントリーチーム選手としても活躍した。2007年春、神奈川県橋本市にショップをオープン。クラブ員ともにバイクライドを楽しみながらショップを経営中。各種レースにも参戦中。セルフディスカバリー王滝100Km覇者。
サイクルショップ・ライズライド



山本健一(バイクジャーナリスト)山本健一(バイクジャーナリスト) 山本健一(バイクジャーナリスト)

身長187cm、体重68kg。かつては実業団トップカテゴリーで走った経歴をもつ。脚質はどちらかといえばスピードマンタイプで上りは苦手。1000mタイムトライアル1分10秒(10年前のベストタイム)がプチ自慢。インプレッションはじめ製品レビューなどがライフワーク的になっている。インプレ本のバイブル、ロードバイクインプレッション(エイ出版社)の統括エディターもつとめる。






ウェア協力:ETXE ONDO(エチェオンド)(サイクルクリエーション)



text&edit :Kenichi.YAMAMOTO
photo:Makoto.AYANO
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