秋空広がる長野県を駆け巡るエリア周遊型イベント「松本・安曇野サイクルロゲイニング」が、10月22~23日の2日間にわたり開催された。街中に散らばるチェックポイントを制限時間内に回り、稼いだ得点を競うユニークなイベントだ。前編では安曇野エリアの実走レポートと共に、サイクルロゲイニングの基本的な流れをおさらいしていこう。



スタート前のなごやかな空気。老若男女揃ったアットホームなイベントだスタート前のなごやかな空気。老若男女揃ったアットホームなイベントだ


「サイクルロゲイニング?なんか自転車でスポット巡りするやつでしょ?」と思ったそこのあなた。字面からふんわりイメージは湧くが、実際に参加したことはない、それが多数派ではないだろうか。

その響きから「物好きのマイナーな自転車遊び」という印象を受けるかもしれない。普段レーシング系トピックが多めなシクロワイアードであるが、ぜひ食わず嫌いせず読み進めていただきたい。なぜなら、いざ飛び込むと2日間とも大いに盛り上がり、大成功なイベントであったから。加えて、全国のサイクルツーリズム事業者、地域活性化の担当職員など、イベント開催側の方々にも本レポートが届けば幸いである。

スタート / ゴール地点の安曇野市防災広場。大会本部でマップを受け取るスタート / ゴール地点の安曇野市防災広場。大会本部でマップを受け取る
まずは開催1日目、安曇野エリア編からレポートしたい。サイクルロゲイニングの全体像をおさらいしつつ、イベント中に得られた気づきを記そう。

イベント初日、東京駅から始発で北陸新幹線かがやき→特急しなのを乗り継ぎ、松本駅からさらに10kmほど自走して安曇野市を目指した。筆者としても人生初のサイクルロゲイニング、かつ初めての安曇野訪問。早朝の気温10度、少し靄がかった秋空に北アルプスを望む安曇野市防災広場に、サイクリストもといロゲイナーたちが集結した。

マップ、参加要項、クーポンを受付で入手。左のiPhoneと比べるとマップの大きさが分かるだろうマップ、参加要項、クーポンを受付で入手。左のiPhoneと比べるとマップの大きさが分かるだろう ルーティングのアイディアは無数にあり、ペアで作戦を練るのも一興だルーティングのアイディアは無数にあり、ペアで作戦を練るのも一興だ


まずは基本ルールの解説から。制限時間は11時~16時までの5時間。街に散在するチェックポイント(以下CP)を巡って得たポイント合計を競う。CPはカフェや道の駅、神社から牧場まで多種多様で、獲得ポイントの大小はCPごとに異なる(詳しくは後述)。

CP数は松本、安曇野あわせてなんと70ヶ所、総計7,000ポイントに上る。フルコンプには1時間に14ヶ所回る必要があるが、グランツールレーサーでもそれは難しいだろう。とはいえ、全制覇を目指さずとも十分に楽しめるのでご心配なく。完走後、獲得ポイント順に上位3名に表彰および豪華賞品の贈呈あり。その他、特別賞や参加賞も振る舞われるため、誰にでも景品ゲットのチャンスがある。

CP一覧は当日受付時に渡される紙の地図で初めて明らかにされ、大会前にCPを抜き出してルートを練ることはできない。よって、即興でのルート構築能力、地図読み力、タイムマネジメント能力が試される。当然、地元を知り尽くしたローカルライダーはアドバンテージがあるだろう。

地図読みに集中する皆さん。戦いはスタート前から始まっている地図読みに集中する皆さん。戦いはスタート前から始まっている
配布されるやいなや、参加者全員無言でマップに釘付けになり、独特な静けさが漂う。その緊張感はまさにレース前のそれ、というのは冗談で、ほとんどが初ロゲイニングの方ばかりでゆるふわした雰囲気だ。本イベントは個人単位での参加となるが、チームを組んだ方がメリットは多そうだ。知恵は多い方が良く、仲間と走れば楽しさも二倍というものだ。実際、ペアや家族での参加が非常に多かった。

CPはスタート地点を東西南北囲むように散りばめられており、初手でどのエリアを攻めるかを試される。ヒルクライム区間の待つ東回りルートか?はたまた、川沿いで走りやすい西側ルートか?マップには写真付きのCP一覧表があり、カタログを読む感覚で行き先を決めてもいいだろう。

次のCPを捉えた瞬間。市街地を離れると、そこは快適な道続き次のCPを捉えた瞬間。市街地を離れると、そこは快適な道続き
全体的な傾向として、スタート会場から遠いCPほど高得点が与えられる。走りごたえはもちろん景色もよく、時間の許す限り遠方のCPを狙うメリットは十分ある。序盤は会場付近の小ポイントを細かく拾い集め、次第に郊外へと繰り出していく流れだとバランスがいい。序盤は、5分で1カ所回れるくらいのスピード感だった。

なお、イベントに合わせて交通規制が敷かれる訳ではなく、普段通り交通ルールを遵守しながら街を巡る。市街地を抜ければ、クルマの少ない快適な道が待っている。マップを読む時は周囲の安全に配慮し、一時停止して行おう。

クリアマップケースが非常に便利。出し入れ不要で一覧性に富む、もはや必須装備といえるかもクリアマップケースが非常に便利。出し入れ不要で一覧性に富む、もはや必須装備といえるかも バックパックに地図をマウント。お土産を入れるスペースは確保すべしバックパックに地図をマウント。お土産を入れるスペースは確保すべし


降車と一時停止が多いため、トレッキングシューズやスニーカーの方が機動性が高い降車と一時停止が多いため、トレッキングシューズやスニーカーの方が機動性が高い 右にガーミン、真ん中にEバイクのモニター、左にスマートフォンのマルチディスプレイ体制右にガーミン、真ん中にEバイクのモニター、左にスマートフォンのマルチディスプレイ体制


ルール解説に文字を費やしてしまったが、やるべきことはシンプル。CP目指して走り回り、楽しみ、制限時間内にカムバックすればオールOKだ。ブリーフィングを終えいざスタートすると、最初の交差点からサイクリストが四方八方へと繰り出していく。アルプスあずみのセンチュリーライド(AACR)でサイクリストにおなじみ、安曇野エリア。広域がフラットな地形は、ロゲイニング開催地として親しみやすいロケーションだ。

指定のCPに到達したら、アプリ「NaviTabi」でログをとるか、スマホで撮影した写真がポイント獲得の証明となる。ブルベカードのような紙の台帳は無く、ゴール後の集計表でポイント計算する。撮影を忘れずに、チェックインを重ねていこう。5時間の競技とはいえ、スマホを多用するためモバイルバッテリーがあるとより安心だ。

イベント中はアプリ「NaviTabi」を利用可能。現在地、CPの場所、獲得ポイント値がマップ上で閲覧できるイベント中はアプリ「NaviTabi」を利用可能。現在地、CPの場所、獲得ポイント値がマップ上で閲覧できる おそろいのクロスバイクで参加。次のCPはすぐそこおそろいのクロスバイクで参加。次のCPはすぐそこ


舗装路メインのイベントであり、スピーディなポイント収集にはロードバイク一択。かと思いきや、取り回しやすいフラットハンドルのクロスバイクやEバイクが大活躍していた様子。マップホルダーやスマホマウントをハンドルに装備すると、より効率的にポイント巡りに集中できる。また、レンタサイクルやシェアバイク、ヘルメットレンタルの利用もあり、手ぶらで来ても参加可能だ。

降車と一時停止を繰り返すので、シューズはロード用よりもMTB/トレッキング向けか、スニーカーがおすすめだ。お土産を収集したい場合は、空荷のバックパックを背負うとモアベター。特産品でバッグを満杯にするために、CPを選定しても楽しいはず。また、寒暖差が大きいため防寒着の準備をお忘れなく。

フロントバスケットがマップ入れとして大活躍。クロスバイクはロゲイニング向きと言えるだろうフロントバスケットがマップ入れとして大活躍。クロスバイクはロゲイニング向きと言えるだろう
走って撮って、また次へ。5時間は長いようで、あっという間に過ぎていく。なお、タイムオーバーは1分単位で大きく減点が課されるため、メイン会場まで戻る時間も考慮してCPを回ろう。次回開催の楽しみをスポイルしてしまわぬよう、ここにはスポット全容を載せることは控えさせていただく。しかし、どれもこれも魅力的なスポットばかりなのはぜひ強調したい(特に、グルメのバリエーションは豊富だ)。以下、筆者が到達できたCPを掲載する。

オープンからまだ1年のKIIIYA cafe & hostel。安曇野に新風を吹き込むおしゃれスポットであったオープンからまだ1年のKIIIYA cafe & hostel。安曇野に新風を吹き込むおしゃれスポットであった
スタート会場近くのCP「大王わさび農場」。安曇野はわさびの名産地だスタート会場近くのCP「大王わさび農場」。安曇野はわさびの名産地だ 北アルプス牧場直売店の「りんごアンドソフト」 一度で二度美味しい北アルプス牧場直売店の「りんごアンドソフト」 一度で二度美味しい


穂高神社。素通りするには惜しい、美しい境内が広がる穂高神社。素通りするには惜しい、美しい境内が広がる 最高所、かつ最大ポイントを得られる月日堂製パン。登った先のご褒美だ最高所、かつ最大ポイントを得られる月日堂製パン。登った先のご褒美だ


5時間は長いようであっという間。ほとんどの参加者は16時前にゴールへと戻っていた5時間は長いようであっという間。ほとんどの参加者は16時前にゴールへと戻っていた
全員がゴールし、集計を終えると表彰式へ。合計ポイント上位3位には豪華な賞品が贈呈され、金額換算するとエントリーフィーを余裕で回収できるほどの大盤振る舞い。加えて、特別賞、参加賞もあるので最後までセレモニーを楽しむと良いだろう。参考までに、筆者は取材をしつつ45kmほど走ったが、優勝者は90km/3,600ポイント以上を稼ぎ、安曇野のほぼ全てのCPを回ったそう。強い!

優勝バイクは、まさかまさかのオールドMTB!優勝バイクは、まさかまさかのオールドMTB!
安曇野ステージのトップ3。エントリー料を余裕で回収する豪華賞品をゲット安曇野ステージのトップ3。エントリー料を余裕で回収する豪華賞品をゲット 表彰圏外の全員にもわさびドレッシングが授与された表彰圏外の全員にもわさびドレッシングが授与された


本イベントのエントリー料は3,000円、両日参加だと6,000円。協力店舗で利用できる1,000円分(両日参加は3,000円分)のクーポンがつき、リーズナブルに松本・安曇野エリアを遊び倒せる、なんともお財布に優しいイベントだった。安曇野エリアは初訪問だったが、CPを巡るうちに地域の名産品、快適な走行環境、魅力的なスポットに触れ、地域を満喫することができた。ライド後はじんわり染み渡るような満足感に包まれ、その楽しさはお値段以上と思えること間違いなしだ。

実行委員会の言葉を借りると、本イベントは松本市、安曇野市の自転車環境向上を目指し開催された側面もあるそうだ。事実、ほとんどのCPにはサイクルラックが設置され、街をあげてサイクルフレンドリーな環境作りへ取り組んでいる様子が見てとれた。サイクリストたちの来訪が地域経済活性化に貢献し、さらなる投資の輪へと繋がっていく。ますますサイクリストウェルカムな安曇野へと、さらなる発展に期待したい。

安曇野の夕日は美しかった。翌日の松本ステージへ続く安曇野の夕日は美しかった。翌日の松本ステージへ続く


大会当日の様子は、以下フォトギャラリーからぜひご覧あれ。次回、松本エリア編に続きます。
(※後編はこちらから

text&photo:Ryota Nakatani
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