ダークホースのアルカンシエル獲得に湧いたロード世界選男子エリート個人TT。初優勝を射止めたトビアス・フォス(ノルウェー)ら上位陣、フィリッポ・ガンナ(イタリア)ら残念な走りに終わった面々のコメントでビッグデイを振り返ります。



優勝:トビアス・フォス(ノルウェー)

花束を投げるトビアス・フォス(ノルウェー)花束を投げるトビアス・フォス(ノルウェー) photo:CorVos
夢を見ている気分だよ。まだ全く信じられない。レース中はずっと脚に力を感じていたんだ。カナダでワールドツアー2連戦を走った時にもきっちりと仕上がっている感覚があった。でも結果は想像よりもずっと素晴らしかった。まだまだ現実と思えないけれど、この優勝を楽しむつもりだ。

テクニカルでトリッキーなタイムトライアルだったよ。レース全てでプッシュし続けなければならなかった。登りを思い切り踏んで、下りで心拍を下げることを意識していた。アドバイスは完璧だったし、準備も万全だった。

今日はトップ10、できればトップ5に入りたいと思っていたんだ。でも僕は世界チャンピオンになり、アルカンシエルを1年着る権利を得た。本当に名誉なことだし、このジャージを楽しみたい。

終始安定感ある走りでトップタイムをマークしたトビアス・フォス(ノルウェー)終始安定感ある走りでトップタイムをマークしたトビアス・フォス(ノルウェー) photo:CorVos
ユンボ・ヴィスマは僕にとって大きなメリットをもたらしてくれた。タイムトライアルに対する知識もそうだし、機材も含め、全てが僕のアドバンテージになっている。今年初のコッピ・バルタリで落車した時も十分サポートをしてくれたし、回復するのに時間こそかかったけれど、それが正しかったことは今回の勝利が証明してくれている。

この2ヶ月はずっとタイムトライアルを踏まえたレースプログラムを組んできた。カナダのレースではワウト・ファンアールトのアシストという意味でずっと集団牽引役を担っていたんだ。それがカナダから好調のまま世界選手権に移れた理由。エコノミークラスの移動だったけれど、それも跳ね返すことができたよ。

2位:シュテファン・キュング(スイス)

第2中間計測までは順調に駒を進めていたシュテファン・キュング(スイス)第2中間計測までは順調に駒を進めていたシュテファン・キュング(スイス) photo:CorVos
可能な限りの走りをした。今朝自分自身に"僅差で敗れるのはもうこりごり"と言い聞かせ、可能な限りリスクを冒して攻め続けた。あれをすべきだったとか、これをすべきだったとか、結局なんといったら良いかわからないけれど、とにかく残念だ。

結果を出すなら今日だと思っていたけれど、僕の日ではなかったということ。4年前だったらこの結果を喜んだと思うけれど、今日は全然違う。流れを掴んでいただけにイライラしているよ。今朝スタートリストを見た時にも今日はいけると思っていたけれど、僕を破るとは思っていなかった選手に敗れてしまった。でも"時間との戦い"は、ピュアに最強だった選手が勝つ。だから彼におめでとうと言いたい

キュングについて語るジュリアン・ピノ(トレーナー)

この世界選はシュテファンの大きな目標だった。ツール・ド・フランス以降彼はいい波に乗れていて、ヨーロッパ選手権で僅差で敗れた(ビッセガーに1秒差で敗北)後はずっと集中して今回のためにトレーニングを重ねてきた。レースプログラムに順応し、この世界選手権に向けての流れもとても良かった。ガンナとエヴェネプールには勝ったけれど、今日はフォスが"ビッグデー"を制した。しかし3秒差で敗れたという事実は今後の大きなバネになるし、2位は彼にとって世界選手権最高順位。僕たちは歩みを止めることなく挑戦し続けていきたい。

3位:レムコ・エヴェネプール(ベルギー)

2年連続の3位銅メダルとなったレムコ・エヴェネプール(ベルギー)2年連続の3位銅メダルとなったレムコ・エヴェネプール(ベルギー) photo:CorVos
フォスが勝ったのは本当に驚いたよ。レース中の無線で彼の名前は聞いていなかったんだ。僕が集中していたのはキュングとガンナの2人だけだった。中でもキュングの走りに注目していたし、最終計測区間では彼とほぼ同じペースを刻んでいた。フォスは後半区間を思い切り飛ばしたはず。これまでで最高のTTができたはずだけど、僕より速い男が二人いた。

(ブエルタ総合優勝で力を使ったのかという問いに対して)それを言い訳にするのはちょっと馬鹿げていると思う。勝っても負けてもガッカリすることはないとレース前にずっと言ってたんだ。

10秒差の3位はあまりにも惜しい結果。ベルギーのためにも良くなかったし、アンラッキーだったと思う。表彰台に立つのは4年連続で、去年はワウトが惜しくも負け、僕は今年3位で頭打ち。今日は風が吹いていたけれど、全員がイコールコンディションだった。結果は公平だよ。僕にとって2度目の銅メダル。個人タイムトライアルではあと一つ届いてないメダルがある。これからもタイトルを目指して戦い続けたい。

4位:イーサン・ヘイター(イギリス)

チェーン落ちに泣いたイーサン・ヘイター(イギリス)チェーン落ちに泣いたイーサン・ヘイター(イギリス) photo:CorVos
トラブルが残念だ。僕はかなり強かったし、優勝争いに加わる素質はあったと思う。実際に表彰台を目指していたんだ。バイク交換で少なくとも20秒を失ってしまった。僕を優勝候補に挙げる声は少なかったのでプレッシャーを感じることなく走ることができた。ただ世界選手権は1年に1度ある。また次のチャンスを狙いたい。

7位:フィリッポ・ガンナ(イタリア)

2年連続覇者フィリッポ・ガンナ(イタリア)は精彩を欠いて7位2年連続覇者フィリッポ・ガンナ(イタリア)は精彩を欠いて7位 photo:CorVos
残念だよ。レースに向けて万全の準備を重ねてきたけれど、ここのところ結果が全くついてこなかったんだ。実際脚の調子はかなり悪く、レース中に良くなることもなかった。イタリアでたくさんのファンが早朝に起きて中継で応援してくれていたことは知っていたので、彼らのことを思うほどに心が苦しくなるよ。

text:So Isobe