激戦必至のマイヨロホ争い。ツール・ド・フランスで苦汁をなめたログリッチに、歴代グランツール覇者であるサイモン・イェーツやカラパス、ヒンドレーらが襲いかかる。またデビュー戦となるエヴェネプールなどブエルタ・ア・エスパーニャの総合優勝候補を紹介します。



スペインの情熱を表す真っ赤なリーダージャージ

2021年大会で総合3連覇を達成したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)2021年大会で総合3連覇を達成したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:Unipublic
レッドジャージを意味するマイヨロホはブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉。長年にわたって金色のマイヨオロが採用されていたが、2010年にツール・ド・フランス主催者のASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、黄色いマイヨジョーヌとの混同を避けるためにスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。

ツールのマイヨジョーヌ、ジロのマリアローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨロホを着る。つまり最終日を終えた時点でマイヨロホを着ている選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。2013年からジャージスポンサーを務めるのは世界大手のスーパーマーケットチェーン「カルフール」だ。

ボーナスタイムは今年も健在。ブエルタでは個人TTを除く各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、山頂フィニッシュで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げることになる。



ログリッチによる前代未聞の4連覇なるか 群雄割拠のマイヨロホ争い

ツール・ド・フランスで肩を脱臼し、途中リタイアとなったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が今年もその悔しさを晴らすべくブエルタにやってきた。2019年に初制覇して以降、他を圧倒するタイムトライアル力と登坂力を武器に、3年連続で総合優勝に輝いてきたログリッチ。4連覇となればもちろん大会史上初となる快挙だ。

ユンボ・ヴィスマの総合エースとして出場するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)ユンボ・ヴィスマの総合エースとして出場するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア) photo:CorVos
今年は30.9kmの個人タイムトライアルに加え、初日にチームタイムトライアル(23.3km)が2年振りに復活。そのためユンボ・ヴィスマは元TT世界王者のローハン・デニス(オーストラリア)とエドアルド・アッフィニ(イタリア)を選出し、山岳アシストかつサブエースにはセップ・クス(アメリカ)がいるため戦力的な死角はなし。しかしログリッチにとって唯一の不安要素はコンディション。メーリン・ゼーマン監督が「準備は十分ではない」というように、肩の怪我に加え一部報道では脊椎骨骨折を負ったと噂されている。

そのログリッチに対抗する筆頭は2018年大会覇者サイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)だろう。課題としていた個人TTを克服し、今年のジロで区間優勝を挙げる進化を見せたイェーツ。同大会は膝の怪我で途中リタイアしたもののその後は治療とトレーニングに専念し、7月に実戦復帰して以降は4戦2勝と復活をアピールしている。

ただ懸念点を挙げるとすればチーム力。山岳が極端に多い今大会において、山岳アシストを任せることのできそうな選手がルーカス・ハミルトン(オーストラリア)しかおらず、イェーツが単騎で奮闘するシーンが予想される。

これまで課題としてたタイムトライアルの改善に成功したサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ)これまで課題としてたタイムトライアルの改善に成功したサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ) photo:RCS Sport
リチャル・カラパス(エクアドル)はブエルタ総合優勝をイネオス・グレナディアーズへの置き土産とできるか。来季イネオスからの退団しEFエデュケーション・イージーポストへの加入が濃厚なカラパス。今年2度目のジロ制覇を寸前で逃したはカラパスだが、急勾配な山岳の多い今大会はカラパス向き。またチームにはパヴェル・シヴァコフ(フランス)や21歳の若きスペイン王者カルロス・ロドリゲスと山岳アシストも揃っており、タイムトライアルでのタイムロスを最小限に食い止めることが総合優勝への鍵となる。

今年のジロで劇的な逆転劇を演じ、オーストラリアとチームに初グランツール制覇をもたらしたジャイ・ヒンドレー(ボーラ・ハンスグローエ)はセルヒオ・イギータ(コロンビア)とウィルコ・ケルデルマン(オランダ)のクライマーを従え出場する。しかしチームは同時にサム・ベネット(アイルランド)でスプリントも狙うため、その影響がヒンドレーにどう及ぶだろうか。

山岳でのチーム力で言えばリゴベルト・ウランとエスデバン・チャベス(共にコロンビア)、ヒュー・カーシー(イギリス)を揃えるEFエデュケーション・イージーポストも強力。またミケル・ランダ(スペイン)をエースに、ワウト・プールス(オランダ)と今年注目の若手フレッド・ライト(イギリス)を選出したバーレーン・ヴィクトリアスの存在も忘れてはならない。

今年のジロ・デ・イタリアで激闘を繰り広げたカラパスとヒンドレーが揃って出場今年のジロ・デ・イタリアで激闘を繰り広げたカラパスとヒンドレーが揃って出場 photo:RCS Sport
サンセバスチャンでSイェーツを引き離したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)サンセバスチャンでSイェーツを引き離したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos現役最後のグランツールを迎えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)現役最後のグランツールを迎えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos

そして多くのファンが期待するのはレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)の存在だろう。今年リエージュ~バストーニュ~リエージュとサンセバスチャンで圧巻の独走勝利を披露したエヴェネプール。グランツールデビューを果たした昨年ジロは途中棄権と苦い思い出となったものの、今年は登坂でSイェーツなど強豪クライマーに食らいつき、逆に引き離すシーンも。弱冠22歳の底知れない可能性を、このブエルタでいかにして見せてくれるだろうか。

その他にもミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン)や激坂職人マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)が出場。また現役最後のグランツールに臨むヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)とアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)という2人の走りにも注目だ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ歴代総合優勝者
2021年プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
2020年プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
2019年プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
2018年サイモン・イェーツ(イギリス)
2017年クリストファー・フルーム(イギリス)
2016年ナイロ・キンタナ(コロンビア)
2015年ファビオ・アル(イタリア)
2014年アルベルト・コンタドール(スペイン)
2013年クリストファー・ホーナー(アメリカ)
2012年アルベルト・コンタドール(スペイン)
2011年クリストファー・フルーム(イギリス)
2010年ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年デニス・メンショフ(ロシア)
2006年アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年デニス・メンショフ(ロシア)
2004年ロベルト・エラス(スペイン)
2003年ロベルト・エラス(スペイン)
2002年アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年アンヘル・カセロ(スペイン)
text:Sotaro.Arakawa
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