本日6月5日に、クリテリウム・デュ・ドーフィネが開幕する。ログリッチやファンアールトなどツール本戦メンバーで臨むユンボ・ヴィスマの他、マイヨジョーヌ候補のマスやカルーゾ、そして完全復活待たれるフルームらが出場するツール前哨戦をプレビューします。



ツール第12ステージに登場するガリビエ峠を大会7日目に越えるツール第12ステージに登場するガリビエ峠を大会7日目に越える photo:Kei Tsuji / TDWsport
一般的に「ドーフィネ」として呼ばれるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネは、2010年からツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポーツ・オルガニザシオン)が主催している8日間のステージレース。「クリテリウム」の名前がついているものの、レース形式はクリテリウムではない。

1947年に第1回大会が開催され、長年地元新聞のドーフィネ・リベレ社によって運営されてきた。その名の通りレースの舞台はフランス南東部のドーフィネ地方(現在のイゼール県、ドローム県、オート=アルプ県)で、「ミニ・ツール」と形容されるほど内容の濃いステージレースだ。

かつてはドーフィネの総合優勝者がツールの総合優勝に輝くなどマイヨジョーヌ争いと高い親和性を誇っていたレースだったが、昨年はリッチー・ポート(オーストラリア)、一昨年はダニエル・マルティネス(コロンビア、共にイネオス・グレナディアーズ)が制するなど力ある山岳アシストの活躍が目立つ。だがツールの前哨戦と呼ばれるだけに、今年も険しい山岳ステージに個人タイムトライアルなどオールラウンダーの脚ならしに最適なレイアウトとなっている。

2022年の第74回大会はサヴォワ県のサン・タルバン・レイスで開幕する。初日はスタート直後から2級と3級山岳を越える丘陵ステージで、カテゴリーのつかない最終山岳山頂から32kmの下りと平坦路が続くため、逃げ切りやスプリンター向けのレイアウトと言えそうだ。

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第1ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第1ステージ image:A.S.O.クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第3ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第3ステージ image:A.S.O.

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第7ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第7ステージ image:A.S.O.クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第8ステージクリテリウム・デュ・ドーフィネ2022第8ステージ image:A.S.O.

同じく丘陵地帯を駆ける第2ステージを経て、第3ステージはようやく総合勢の出番となる。スキーリゾート地であるフィニッシュ地点の2級山岳シャストレ・サンシーは全長6.2km/平均勾配5.6%と迫力のない数字だが、それはラスト1.2kmが平坦のため。そこまでの勾配は8%と差が生まれるには十分だ。

第4ステージの平坦個人タイムトライアル(32km)を終えると、再び丘陵ステージが5、6日目と続く。そして大会7日目は134.8kmという短い距離に獲得標高差4,000mの登坂が詰め込まれたクイーンステージだ。今年のツール第12ステージに登場する2つの超級山岳(ガリビエ峠&クロワ・ド・フェール峠)を越え、最後は2級山岳ヴォジャニー(距離5.8km/平均7.2%)を駆け上がりフィニッシュする。ちなみにツールではラルプデュエズの頂上がフィニッシュ地点となる。

8日間の大会を締めくくるのは、この日も138.8kmというショートコースに獲得標高差3,782mを越える難関山岳ステージ。スタート直後から1級、3級山岳、そして1級山岳ラ・コロンビエール峠を越えた選手たちは、2017年以来の登場となる超級山岳プラトー・ド・ソレゾン(11.4km/平均8.9%)でフィニッシュを迎える。
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2022ステージ一覧
第1ステージ/6月5日(日) ラ・ヴルト=シュル=ローヌ〜ボーシャステル(191.8km) 丘陵
第2ステージ/6月6日(月) サン・ペレ〜ブリーヴ=シャランサック(169.8km) 丘陵
第3ステージ/6月7日(火) サン=ポーリアン〜シャストレ=サンシー(169km) 丘陵
第4ステージ/6月8日(水) モンブリゾン〜ラ・ベッチ・ドゥッフィ(31.9km) 個人タイムトライアル
第5ステージ/6月9日(木) ティジー=レ=ブール〜シェントレ(162.3km) 丘陵
第6ステージ/6月10日(金) レリブ〜ギャップ(196.4km) 丘陵
第7ステージ/6月11日(土) サン=シャフレ〜ヴォジャニー(134.8km) 山岳
第8ステージ/6月12日(日) サン=タルバン=レイゼ〜プラトー・ド・ソレゾン(138.8km) 山岳


ログリッチがファンアールトやヴィンゲゴーなどツールメンバーを引き連れ出場

悲願のツール総合優勝を目指すプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)悲願のツール総合優勝を目指すプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
スタートラインに並ぶのは18のワールドチームに加え、ツール出場が決まっているアルケア・サムシックやトタルエネルジー、B&Bホテルズ KTMなどのプロチームと、勢いに乗るウノエックス・プロサイクリング チームが加わった合計22チームだ。

チーム3連覇を目指すイネオス・グレナディアーズは、2020年ジロ・デ・イタリア覇者のテイオ・ゲイガンハート(イギリス)にゼッケン1を託した。しかしゲイガンハートはツール出場メンバーからは外れており、イネオスの総合エースを務めるゲラント・トーマス(イギリス)はもう1つの前哨戦ツール・ド・スイスに出場するため、メンバー入り確実のミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド)とフィリッポ・ガンナ(イタリア)の調整レースという意味合いが強い。

ツール2連覇中のタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が例年通りツアー・オブ・スロベニアを選ぶ一方で、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が2年振りに出場する。アシスト勢もヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)や、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)とツール出場が濃厚な選手たちが揃っているため、ユンボ・ヴィスマが展開を作ることは間違いないだろう。

7月はログリッチのアシストとマイヨヴェール獲得を目指すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)7月はログリッチのアシストとマイヨヴェール獲得を目指すワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:A.S.O.数少ないピュアスプリンターとして出場するディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)数少ないピュアスプリンターとして出場するディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ) photo:CorVos

7月にマイヨジョーヌを狙う選手としてはダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)やエンリク・マス(スペイン、モビスター)、ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマ・エフデジ)などが名を連ね、完全復活が待たれるクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)も出場する。また、注目の若手トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム)はトップクライマー相手にどれだけ戦えるのか気になるところだ。

平坦ステージのない大会に、ピュアスプリンターでは唯一と言えるディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が出場する。そこに今年のツールでマイヨヴェール(ポイント賞)を狙うワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とフィル・バウハウス(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス)が、集団スプリントの可能性のある丘陵ステージで争うだろう。

text:Sotaro.Arakawa