昨年覇者ポガチャル不在のなか行われた第108回リエージュ~バストーニュ~リエージュ。名物登坂コート・ド・ラ・ルドゥットで矢のように飛び出したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が、独走を決めて11年振りとなるベルギー人勝者に輝いた。



昨年は2位だったアルカンシエルを着るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)昨年は2位だったアルカンシエルを着るジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos2011年覇者フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)2011年覇者フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
コート・ド・サンロシュを登るメイン集団コート・ド・サンロシュを登るメイン集団 photo:CorVos
初開催から130周年を迎える「最古参のレース」リエージュ~バストーニュ~リエージュ(UCI1.ワールドツアー)。コース変更によって長年スタートを見守ってきたサン・ランベール広場ではなく、フィニッシュ地点と同じケ・デ・アルデンヌからスタートを切ると、この日は約45kmに渡り抜け出しを試みるアタック合戦が続いた。

ブルーノ・アルミライル(フランス、グルパマFDJ)やシルヴァン・モニケ(ベルギー、ロット・スーダル)を含む11名が飛び立ち、先行を開始する。タイム差を広げにかかったエスケープだったものの、メイン集団に対しての最大マージンは6分半止まりだった。

この日メイン集団を積極的に率いたのはバーレーン・ヴィクトリアスやモビスター、そしてクイックステップ・アルファヴィニルといった優勝候補を抱えるチーム。スタートから150km以上を消化し、エディ・メルクスの記念碑が建てられた最大勾配17%の名物坂「コート・ド・ストック(平均勾配12.5%)」などを越えていく中、残り62km地点で大規模な集団落車が起きてしまった。

コル・ド・ロジェを目指す下り区間で起きた高速落車には多数の選手が巻き込まれ、中でもジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)は激しく路肩の草地まで吹き飛ばされて救急車搬送される事態に。あまりの衝撃に動くことができなかったアラフィリップには、その後肩甲骨と肋骨2本骨折という今後のレーススケジュールに大きく影響する診断結果が下されている。

積極的にメイン集団を牽引したディラン・トゥーンス(ベルギー)を擁するバーレーン・ヴィクトリアス積極的にメイン集団を牽引したディラン・トゥーンス(ベルギー)を擁するバーレーン・ヴィクトリアス photo:CorVos
最後のリエージュを走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)に感謝を伝えるファン最後のリエージュを走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)に感謝を伝えるファン photo:A.S.O.
ほとんど落車の影響を受けなかったバーレーン・ヴィクトリアスはその後メイン集団先頭でハイペースを刻み、終盤戦に入ってミケル・ランダ(スペイン)をアタックさせる。ランダのアタックが引き戻されてからはダミアーノ・カルーゾ(イタリア)が仕掛けるなど、ディラン・トゥーンス(ベルギー)のフレーシュ・ワロンヌ制覇で波に乗る中東チームが積極的に攻め続けた。

しかし、バーレーンのコントロールをレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)が突き破った。残り35km地点から29km地点に移動した名物登坂「コート・ド・ラ・ルドゥット(平均8.9%)」で、チームメイトのマウリ・ファンセヴェナントが牽引する背後から矢のようにアタックしたエヴェネプールに喰らいつける選手は誰もいなかった。

「朝起きた時から身体が良い感じだった。"これは僕の日になるかもしれない"と思った」と振り返るエヴェネプールのアタックには、ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も反応できず、唯一食らいつこうとしたニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)も一蹴。メイン集団を全員置き去りにしたエヴェネプールは、その後当初からの逃げグループで唯一生き残っていたアルミライルを平坦区間でキャッチした。

コート・ド・ラ・ルドゥットでアタックしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)コート・ド・ラ・ルドゥットでアタックしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
アルミライルを従えたまま踏み続けたエヴェネプールが得たリードは35秒から40秒。メイン集団は有力勢やアシスト勢も含め人数を残していたものの、なぜか積極的にローテーションを回して追う意志統一は取れなかった。最終登坂「ラ・ロッシュ・オ・フォーコン(距離1.2km平均11%)」ではトゥーンスのアタックによってファンアールトが遅れるなど集団が木っ端微塵に。これによってアルミライルを切り離したエヴェネプールとの差は18秒程度までに縮まったものの、優勝候補だけに絞られたことがむしろエヴェネプールにとって好都合となった。

トゥーンスやダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)を含む精鋭グループからはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)がアタック。ハイペースで登りをこなした反動も加わって身を挺してエヴェネプールを追いかける選手は現れず、アタックと吸収を経たことでむしろペースダウン。こうしてエヴェネプールの逃げ切りに青信号が灯った。

独走のままフィニッシュラインを通過したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)独走のままフィニッシュラインを通過したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ベルギー人として11年振りの優勝を果たしたレムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル)ベルギー人として11年振りの優勝を果たしたレムコ・エヴェネプール(クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ここまで春のクラシックで辛酸を嘗め続けたウルフパックが、エヴェネプールによる起死回生のアタックでついに復活。中継カメラに向けてガッツポーズを見せつつ、最後までハイペースを維持した22歳が大観衆が待ち構えるケ・デ・アルデンヌのホームストレートへ。自身初の「モニュメント」制覇を、この第108回大会のリエージュ~バストーニュ~リエージュで決めてみせた。

「自分自身、驚いている。勝つのが夢であったリエージュをまさか初出場で叶えられるなんて!今日は自転車人生で最良の日だ。レースは厳しかったものの、素晴らしいチームのおかげでストレスフリーで走ることができた。そのおかげで終盤にフレッシュでいられたんだ。ジュニア時代からよく知った道だったのも勝てた大きな要因だろう」と、この54年で最も若いリエージュ勝者となったエヴェネプールは語る。

一方で、エヴェネプールから48秒遅れでやってきた2位を争う集団スプリントは、クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)がファンアールトを抑え先着。そのためベルギー勢が表彰台を独占する結果となっている。

表彰台:2位クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、1位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)、3位ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)表彰台:2位クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)、1位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)、3位ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2022結果
1位レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)6:12:38
2位クイントン・ヘルマンス(ベルギー、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)0:48
3位ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)
4位ダニエル・マルティネス(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)
5位セルヒオ・イギータ(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
6位ディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)
7位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位ニールソン・ポーレス(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)
9位マルク・ヒルシ(スイス、UAEチームエミレーツ)
10位マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
text:So Isobe
photo:CorVos
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