デビュー直後からログリッチのブエルタ制覇などを支えたサーヴェロの新型フラッグシップモデル、R5。ピュアクライミングバイクとして位置づけられ、フレーム重量695gという軽量性を手に入れたディスクブレーキロードをインプレッションする。



サーヴェロ R5サーヴェロ R5 photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
フィル・ホワイトとジェラルド・ブルーメンが1995年に創業したサーヴェロ。タイムトライアルバイク開発に端を発し、エアロダイナミクスに一日の長があるブランドだけあり、エアロロードやトライアスロンバイクはいつの時代も革新的なモデルを用意する存在だ。

カーボン製のロードバイクが登場し、各社独創的な形状を取り入れたり、エアロ化を推し進めたり、できうる限りの軽量化を行った2000年代後半から10年代前半。サーヴェロも例外では無く、ソロイストでエアロロードのパイオニアとしての地位を築いたのち、軽量バイクに乗り出した。

2010年モデルでファーストプロダクトのR3をローンチ。その翌年には特別なR&Dチームのプロジェクト・カリフォルニアがフレーム重量675gのR5Caを作り出し、軽量バイクの面でも世界トップクラスのブランドとなった。

Rシリーズらしく非常に細く、薄く作られたシートステーが快適性を生み出すRシリーズらしく非常に細く、薄く作られたシートステーが快適性を生み出す サーヴェロらしい形状のダウンチューブサーヴェロらしい形状のダウンチューブ 非常にシンプルなストレートフォークがアセンブルされる非常にシンプルなストレートフォークがアセンブルされる


プロジェクト・カリフォルニアは2013年にはさらに軽量性を追求し、スクオーバル3というチューブ形状を採用することでフレーム667gのRcaの実現に成功。そのテクノロジーが落とし込まれたレギュラーモデルのR5は、2018年のモデルチェンジまでの4年間、軽量山岳バイクとして世界のトップカテゴリーで活躍を続けることに。

そして2018年にデビューした第三世代のR5にはエアロダイナミクスが与えられるとともに、「王道クラシックロードバイク」として様々な要素をバランスさせた1台となった。リムブレーキとディスクブレーキ仕様が混在した第三世代も4年間の時を経て、2022年にフルモデルチェンジとなる。

第四世代のR5は「ピュアクライミングバイク」というテーマに転換し、前作よりもエアロ化が進められたが、フレーム重量695g(51サイズ)という軽量性が際立つモデルへと進化を遂げた。前モデルと比較すると-130g、16%もの軽量化を達成しており、フレームセットとしても約14%も重量が削減されている。

ボックス形状のトップチューブは、シート側に向かうにつれて細くなるボックス形状のトップチューブは、シート側に向かうにつれて細くなる ケーブル類のフル内装システムを採用しているケーブル類のフル内装システムを採用している

ライダーの踏力を受け止めるチェーンステーも非常にシンプルな作りだライダーの踏力を受け止めるチェーンステーも非常にシンプルな作りだ エアロダイナミクスを向上させるためにフォーククラウンとダウンチューブはインテグレートデザインとされているエアロダイナミクスを向上させるためにフォーククラウンとダウンチューブはインテグレートデザインとされている


R5Ca、Rcaに匹敵する重量を実現したディスクブレーキ専用車は、マイヨジョーヌを狙うユンボ・ヴィスマによってツール・ド・フランス、東京五輪に投入。そして、ブエルタ・ア・エスパーニャではプリモシュ・ログリッチのマイヨロホ獲得に貢献した。

また新型R5はマージナルゲインを積み重ねるプロ機材として、ハンドル周りのケーブルをフル内装しエアロダイナミクスを追求。ケーブルの露出を無くすことで、25gものドラッグ量も削減している。

BB Rightのボトムブラケットシェルが踏力を受け止めるBB Rightのボトムブラケットシェルが踏力を受け止める フラットマウントのブレーキキャリパー台座フラットマウントのブレーキキャリパー台座


フレームはクライミングバイクらしくミニマルなデザインだが、ダウンチューブとフロントタイヤのクリアランスを詰める設計や、エアフローを最適化する34mmのタイヤクリアランスなど空力特性についての配慮も行われている。登坂性能とエアロの性能は2021年のツール・ド・フランス第11ステージで、モンヴァントゥを2度登るステージで単独逃げ切り勝利をあげたことで証明済みだ。

ライダーが自然なフィーリングで走れるようにシートポスト周りはシンプルな造形とし、ポストのしなりを生み出している。また、ヘッド周りの剛性を最適化することで快適性の向上を狙った。

シートポストをクランプする斜ウスはポスト後部に移されているシートポストをクランプする斜ウスはポスト後部に移されている 上部はD型断面だが、下方は扁平したボックス形状とされている上部はD型断面だが、下方は扁平したボックス形状とされている 若干くびれた形状のヘッドチューブ若干くびれた形状のヘッドチューブ


ライドフィールへのこだわりはトレイル値を全サイズで57.5mmに統一するために、フレームサイズに応じて3種類のフォークを用意し、ハンドリング性能を追求していることにも表れている。またスタック/リーチは前モデルから共通とされているため、前作から乗り換えるユーザーは違和感なく乗り継げるという。

グランツールで勝利するためにピュアクライミングマシンとして生み出されたサーヴェロの新型フラッグシップ、R5。今回インプレッションを行う試乗車は、シマノDURA-ACE R9170をコンポーネントに据え、ホイールをトーケンのVENTOUSを装着したマシン。テスターはアルディナサイクラリーの成毛千尋と、ワイズロード御茶ノ水の小西真澄だ。



―インプレッション

「思わず笑ってしまうほどダンシングでの軽快感が突出しているマシン」
成毛千尋(アルディナサイクラリー)


「レースの最後まで脚を残せるバイク」成毛千尋(アルディナサイクラリー)「レースの最後まで脚を残せるバイク」成毛千尋(アルディナサイクラリー)
少し乗っただけでもわかりやすく爽快な体験ができるマシンですね。あらゆる性能の中でも際立っている軽快感とハンドリングは、ディスクブレーキロードでは体験したことがないと思うほど凄さがあって、乗っていて笑ってしまいました。

特に踏み始めのダンシングでの軽快感は突出していて、すぐさまスピードが乗ってくれます。その後、平坦でスプリントしてみてもフレームが踏力に負ける気がしなかったので、クライミング性能だけが光るのではなく、オールラウンドに戦えるバイクだと思います。

クライミングバイクはリズムが早いケイデンスがマッチするなどスイートスポットがありますが、R5に関してはハイケイデンスでもトルクを掛けたローケイデンスでも求めている反応を返してくれます。

重心やバランスについてもオールラウンドバイクらしく、ピーキーで扱いにくいということもなく、普段は直進の安定性を感じさせ、バイクを倒した時にクイックに曲がってくれます。その所作の速さがR5の美点だと思います。

「爽快な体験ができる軽快さとハンドリングが特徴」成毛千尋(アルディナサイクラリー)「爽快な体験ができる軽快さとハンドリングが特徴」成毛千尋(アルディナサイクラリー) リムブレーキのクライミングバイクと比べてみてもビハインドは多くないでしょう。重量面ではリムブレーキが軽いブランドも多いですし、ディスクブレーキのロードバイクはまだ完成形ではないと感じています。

R5は軽量であるということと、乗ってみた時の軽快感はリムブレーキに肉薄しています。そこにディスクブレーキの制動性の良さ、エアロを備えており、レーシングバイクに欲しい性能を満たしています。とはいえホビーの方でも満足できそうな懐の深さもあるような印象を受けています。

フレーム全体の剛性がプロのみを受け入れるようないやらしい感じではなく、ロングライドでも脚を最後まで残せるような程よい剛性であると感じています。リア三角がトラッドに作られていますし、ドロップさせないことで剛性感の調整を行なっているかもしれませんね。

サーヴェロはSシリーズとRシリーズでキャラクターがはっきり分かれているので、選びやすいかなと。アマチュアサイクリストの巡航速度を考えると、エアロの恩恵よりも登りでの軽さを重視してもいいかもしれません。ハンドリングも素直ですし、エアロダイナミクスを得るために犠牲にしていることが少なく、ロードバイクとして潔い作りをしているのがR5です。

ツール・ド・おきなわやニセコクラシックでは、登りが速く最終盤まで脚を残せるR5を選びたいです。反応性も光るため、漕ぎ出しが大事なクリテリウムでもマッチしそうです。

今まで経験したことが無いような走りの軽さ、パーツ選びを見極めれば完成車5kgを目指せる重量のR5は、価格も含めて極上のバイクです。レーサー、ホビーサイクリストどちらもその性能の高さ、価値を感じられるでしょう。


「ひと漕ぎ目から伝わる軽快さとクイックなハンドリングが際立つバイク」
小西真澄(ワイズロード御茶ノ水)


「クイックさが特徴のオールラウンドレーサー」小西真澄(ワイズロードお茶の水)「クイックさが特徴のオールラウンドレーサー」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
ひと漕ぎ目から伝わる軽快さと、クイックなハンドリングが際立つバイクです。S5のようなスピードの伸びを感じにくかったのですが、ワウト・ファンアールトのスプリントをみていれば、脚力のあるライダーであれば速く走れるのは間違いなく証明されています。オールラウンドな性能と軽さを重視している方向けのバイクですね。

新型R5はディスクブレーキ専用フレームとして剛性が煮詰められていることが、乗っていて伝わってきます。前作も乗ったことがあるのですが、それと比較するとフロントフォーク・ブレードの左右差やブレーキ時のたわみ具合の調整がブラッシュアップされていると感じました。

そして前作と比較すると快適性も今作の方が優秀です。砂利道を走ると細かい突き上げが伝わってくるものですが、ドロップドシートステーでは無いにもかかわらず意外にもその振動や衝撃は感じませんでした。オールラウンドバイクたる性能は備えていると思います。

「平坦のスプリントでもバイクは応えてくれる」小西真澄(ワイズロードお茶の水)「平坦のスプリントでもバイクは応えてくれる」小西真澄(ワイズロードお茶の水)
このバイクが得意とする登り坂での走り方ですが、シッティングでペダルを漕ぐ時はケイデンスを高め、回転数を高める方がマッチします。アタックしたい時は、そこからギアを一枚、二枚重くして踏み込むとライダーの要望に車体が素直に応えてくれるでしょう。平坦のスプリントでも同じことが言え、重いギアを踏み込んでいく方がスピードは乗るはずです。

冒頭でスピードの伸びはS5に譲ると言いましたが、路面が綺麗な状況では40km/hまであっという間に加速してくれる巡航性も持ち合わせています。快適性に優れていることもあって、多少道が悪くても快適にかつスピードを維持したまま巡航することができます。

「ひと漕ぎするだけで伝わる軽快感は伝わる」小西真澄(ワイズロードお茶の水)「ひと漕ぎするだけで伝わる軽快感は伝わる」小西真澄(ワイズロードお茶の水) ただ気になる点は、登り坂のダンシングで車体のリズム感が非常にクイックなところでしょうか。左右の振りが軽すぎるので、ギアを重めにしてケイデンスを下げようとしても、ヘッド周りはクイックに反応するため、上半身と下半身のテンポを合わせるのには慣れが必要かなと思います。もちろんペダリングが上手い人はスムーズに乗りこなせるかもしれませんね。

クイックな印象はダウンヒルでも同じなのですが、ハンドリングはあくまでニュートラルで、自分が思ったラインに自転車が乗りますし、車体を傾けても不安感はありませんでした。剛性向上やBBドロップが大きいジオメトリーが安定感を生み出しているのでしょう。

R5を使う場面を色々と考えてみましたけど、自分の場合はヒルクライムレースで使いたいですね。榛名山の大会に毎年出ているんですけど、いつも通りに練習できていれば、今所有している自転車よりも速く走れると思っています。

あとは最後のスプリントでも十分速さを見せてくれますし、富士ヒルクライムにもぴったりかもしれません。クリテリウムなどタイトなターンでの立ち上がりでR5は群を抜いて
速いでしょう。色々なところで活躍しそうなので、オールラウンドバイクはやっぱり面白い存在ですね。

価格は非常に高いですが、どこでも乗れて、乗り心地が良く、一番良い自転車を見繕ってくれと言われたら推薦できる自転車です。軽くて、走りの質が良いロードバイクを探している方にはぴったりな一台です。

サーヴェロ R5
フォーク:Cervélo All-Carbon, Tapered R5 Fork
ハンドル:Cervélo HB13 Carbon
ステム:Cervélo ST31 Carbon
シートポスト:Cervélo SP24 Carbon
サイズ:48、51、54、56、58、61
重量:695g(51サイズ)
価格:693,000円(税込、フレームセット)、1,595,000円(税込、DURA-ACE R9270完成車)



インプレッションライダーのプロフィール

成毛千尋(アルディナサイクラリー)成毛千尋(アルディナサイクラリー) 成毛千尋(アルディナサイクラリー)

東京・小平市にあるアルディナサイクラリーの店主。Jプロツアーを走った経験を持つ強豪ライダーで、2009年ツール・ド・おきなわ市民200km4位、2018年グランフォンド世界選手権にも出場。ロードレース以外にもツーリングやトライアスロン経験を持ち、自転車の多様な楽しみ方を提案している。初心者からコアなサイクリストまで幅広く歓迎しており、ユーザーに寄り添ったショップづくりを心がける。奥さんと二人でお店を切り盛りしており女性のお客さんもウェルカムだ。

アルディナサイクラリー


小西真澄(ワイズロードお茶の水)小西真澄(ワイズロードお茶の水) 小西真澄(ワイズロードお茶の水)

ワイズロードお茶の水でメカニックと接客、二足のわらじを履くマルチスタッフ。接客のモットーは「カッコイイ自転車に乗ってもらう」こと。お客さんにぴったりの一台が無ければ他の店舗を案内するほど、そのこだわりは強い。ロードでのロングライドを中心に、最近はグラベルにもハマり中。現在の愛車はスコットADDICT エステバン・チャベス限定モデルやキャノンデールTOP STONE。

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text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO
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