ツール・ド・フランスの最高の栄誉が、総合優勝者に与えられるマイヨジョーヌだ。大会のイメージカラーでもある黄色い栄光ジャージを懸けて、世界各国から総合力のある精鋭たちが集う。連覇の懸かったコンタドール(スペイン)とシュレク兄弟(ルクセンブルク)、アームストロング(アメリカ)らの闘いに注目だ。

コンタドールを中心に描かれる勢力図

総合優勝候補の筆頭アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)総合優勝候補の筆頭アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vos今年で開催97回目を迎えるツール・ド・フランス。3週間に及ぶ闘いは、オランダ・ロッテルダムで華々しくグランデパール(開幕)を迎える。

総合優勝候補の筆頭、それは間違いなくアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)だ。2007年に初めて総合優勝を達成し、2008年にジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャを制覇。そして昨年2度目のツール総合優勝を達成した「エル・ピストレロ(銃を撃つ人の意、ゴールポーズに由来)」は現在世界最強のオールラウンダーであると言っても過言ではない。

ジロ・デ・イタリアでマリアローザに袖を通したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)ジロ・デ・イタリアでマリアローザに袖を通したアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ) photo:Kei Tsuji今年コンタドールはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネのラルプ・デュエズ頂上ゴールで優勝。生まれ変わったアスタナチームのリーダーとして、ヴィノクロフ(カザフスタン)やナバーロ(スペイン)らを従えて出場する。山岳アシスト体制は強固だ。

第3ステージのパヴェ区間を見据えて、アスタナはイグリンスキー(カザフスタン)やノバル(スペイン)らをメンバーに入れた。しかしライバルチームと比べると、平地でのアシスト体制には不安が残る。山岳とタイムトライアルで強さを発揮するコンタドールにとって、パヴェステージだけが不安材料。なお、2006年のツール総合優勝者ペレイロ(スペイン)はメンバーから外れている。

昨年のツールで果敢にコンタドールに挑んだアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)昨年のツールで果敢にコンタドールに挑んだアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosコンタドール崩しの急先鋒は、昨年総合2位のアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)だろう。昨年のツールでコンタドールの王座を脅かすことが出来たのはこのアンディだけだ。

ツール制覇に照準を合わすアンディは、今年も兄のフランクとタッグを組む。兄フランクも昨年総合5位に入る実力者であり、今年はツール・ド・スイスで総合優勝を飾るとともに、ルクセンブルク選手権ロードレースで優勝した。

ツール・ド・スイスで逆転総合優勝に輝いたフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)ツール・ド・スイスで逆転総合優勝に輝いたフランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:www.tourdesuisse.chサクソバンクはカンチェラーラ(スイス)やフォイクト(ドイツ)、ブレシェル(デンマーク)らでアシスト体制を築いており、様々なコースで主導権を握ることが可能だ。パリ〜ルーベを2度制したカンチェラーラが指揮を執り、パヴェでコンタドールを突き放すような動きを見せるかも知れない。

どれだけコンタドールやシュレク兄弟が活躍しようとも、注目度の面では誰もこの男に敵わない。癌の闘病を乗り越え、ツールで史上最高の7連覇を達成したランス・アームストロング(アメリカ)が、再びチームリーダーとしてマイヨジョーヌを懸けた闘いに挑むのだ。

ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック)ランス・アームストロング(アメリカ、レディオシャック) photo:Cor Vosコンタドールにチームリーダーの座を譲った昨年のツールから1年。アームストロングは自ら立ち上げたアメリカンチーム・レディオシャックを率いてツールに戻ってくる。かつての帝王はツアー・オブ・カリフォルニアで顔面を8針縫う怪我を負ったが、ツール・ド・スイスで総合2位に入り、順調な仕上がりを見せている。アームストロングはこれが自身最後のツールになることを公言しており、モチヴェーション高くマイヨジョーヌを狙っているはずだ。

レディオシャックのメンバーは昨年のアスタナチームをコピー&ペーストしたような布陣で、自身も総合表彰台経験があるクレーデン(ドイツ)とライプハイマー(アメリカ)が強力にアームストロングをバックアップ。このトリプルエースは他チームの脅威になるだろう。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでコンタドールを下したブライコヴィッチ(スロベニア)やホーナー(アメリカ)らが後ろに控えており、チームとしての戦闘力は非常に高い。


虎視眈々とマイヨジョーヌを狙うアウトサイダーたち

アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)アルカンシェルを着るカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム) photo:Kei Tsuji今年の総合争いは上記のアスタナ、サクソバンク、レディオシャックの3チームを中心に繰り広げられるだろう。そこに割って入るのが、世界チャンピオンのカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)を始めとするオールラウンダーたちだ。

2007年から2年連続で総合2位に入ったエヴァンスは今年、プロツアーチームから格下のプロコンチネンタルチームに移籍。ジロでは孤軍奮闘しながらも、チーム力不足も手伝って総合5位に終わった。しかしマイヨジョーヌを狙う気持ちに変わりはない。アルカンシェルにマイヨジョーヌを重ね着する光景が見られるかも知れない。

昨年ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)昨年ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったデニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク) photo:Kei Tsuji今年連覇の懸かったジロをスキップしてまでツールに照準を合わしているのが、デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)だ。過去に2度ブエルタ・ア・エスパーニャを制しているメンショフは、コンタドールに続く史上6人目のグランツール全制覇を目指す。

オランダをスタートするだけに、ラボバンク所属のオランダ人選手ロバート・ヘーシンクにも期待が集まる。直前のツール・ド・スイスで、ヘーシンクは難関山岳ステージ制覇。最終個人タイムトライアルでリーダージャージを失ってしまったが、存在感ある走りを見せた。メンショフとともに山岳で動いてくるだろう。

ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)ジロ・デ・イタリアで総合優勝を飾ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス) photo:Kei Tsujiジロで4年ぶりの総合優勝を飾ったイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)が、久々にツールに戻ってくる。ジロの山岳で見せた走りはアルプスやピレネーでも通用するのだろうか?チームメイトのクロイツィゲル(チェコ)も総合上位を狙える逸材。リクイガスお決まりのダブルエース体制でレースに挑み、状況によって戦略を変えてくると思われる。

2008年大会の総合優勝者カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)は、持病のヘルニアと落車の影響でジロでは精彩を欠いた(総合8位)。まだ完全に回復していないため、目標をマイヨジョーヌから山岳賞にスイッチする可能性もある。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji北京五輪ロードレース金メダリストのサムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)のツール出場は2年ぶり(2008年総合6位)。ダウンヒルスペシャリストにチャンスがある山岳ステージも多く、バスクファンが詰めかけたピレネー山脈でその真価を発揮出来るか。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは総合2位だった。

TTスペシャリストとして名を馳せ、ほんの数年前までグランツールの総合優勝候補になど挙がらなかったブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は、完全にマイヨジョーヌを狙ってツールに出場する。ダークホースと呼んでは失礼だが、今大会最も大きく化ける可能性を秘めた選手だと言えるだろう。

昨年山岳ステージでトップクライマーと対等に闘い、総合4位に入ってオールラウンダーとしてブレイクしたウィギンズ。今年は得意の個人TTの距離が短いため、決してウィギンズ向きのコースとは言えない。しかしジロを完全に準備レースとして走ったあたり、このツールへの意気込みの強さを感じさせる。「黒い軍団」の動きから目が離せない。

2009年ツール・ド・フランスの総合トップ10(チーム名は当時の所属チーム)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)     85h48'35"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)     +4'11"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)       +5'24"
4位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)        +6'01"
5位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)     +6'04"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)        +6'42"
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)     +7'35"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)  +12'04"
9位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)       +14'16"
10位 クリストフ・ルメヴェル(フランス、フランセーズデジュー) +14'25"

歴代のツール総合優勝者
2009年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2008年 カルロス・サストレ(スペイン)
2007年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2006年 オスカル・ペレイロ(スペイン)
2005年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2004年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2003年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2002年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2001年 ランス・アームストロング(アメリカ)
2000年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1999年 ランス・アームストロング(アメリカ)
1998年 マルコ・パンターニ(イタリア)
1997年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1996年 ビャルヌ・リース(デンマーク)
1995年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1994年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1993年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1992年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1991年 ミゲル・インドゥライン(スペイン)
1990年 グレッグ・レモン(アメリカ)

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos
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