JCLプロロードレースツアーの第9戦大田原ロードレースが栃木県大田原市の湯津上支所周辺で開催され、勝負は終盤に形成された11人に絞り込まれる展開に。最後は小集団でのゴールスプリントを制した阿曽圭佑(ヴィクトワール広島)が自身、チームともにJCL初となる勝利を飾った。



7人の逃げ集団とメイン集団のせめぎ合い

ホストチームとして結果にこだわりたい那須ブラーゼンがスタートセレモニーで登壇するホストチームとして結果にこだわりたい那須ブラーゼンがスタートセレモニーで登壇する photo:Nobumichi Komori観戦ルールが設けられたうえで有観客での開催となり、ステージ前にも観戦客が詰めかけた観戦ルールが設けられたうえで有観客での開催となり、ステージ前にも観戦客が詰めかけた photo:Nobumichi Komori

各賞ジャージの4選手を先頭に選手たちがスタートラインに整列する各賞ジャージの4選手を先頭に選手たちがスタートラインに整列する photo:Nobumichi Komori
JCLプロロードレースツアー第9戦となったのは、栃木県の大田原市。2015年に全日本選手権個人TT、17年と18年にはJBCF(全日本実業団自転車競技連盟)が主催するJプロツアー大田原クリテリウムが開催されるなど、サイクルロードレースに対する理解のある地域で3年ぶりにレースが開催されることになった。

コースは大田原市湯津上支所をスタート・フィニッシュ地点とする1周7.74kmの公道特設周回コース。コース中盤やフィニッシュ手前の上りや細かなアップダウンはあるものの決定的な勝負どころと言えるポイントがないだけに、展開を読み違えると勝負にすら絡めなくなるコースと言える。心地よい秋晴れが広がる中、15周116.1kmのレースはスタートした。

しばしのローリングの後、直線区間で正式スタートが切られると、早速のアタック合戦が勃発。各チームともに積極的な動きを見せる中、2周目になると山本大喜と花田聖誠(ともにキナンサイクリングチーム)、石原悠希(チーム右京相模原)、孫崎大樹と宮崎泰史(ともにスパークルおおいたレーシングチーム)、本多晴飛(VC福岡)、佐野淳哉(レバンテフジ静岡)の7人が逃げ集団を形成。協調してローテーションを回しながらメイン集団とのタイム差を広げていく展開になった。


コース中盤の上り区間をクリアしていく逃げ集団コース中盤の上り区間をクリアしていく逃げ集団 photo:Nobumichi Komori
山本大喜と花田聖誠(ともにキナンサイクリングチーム)ら、7人が逃げる展開が続く山本大喜と花田聖誠(ともにキナンサイクリングチーム)ら、7人が逃げる展開が続く photo:Nobumichi Komori
一方のメイン集団は、逃げに選手を送り込めなかった宇都宮ブリッツェン勢が先頭に立ってコントロールを開始。しばらくすると同じく逃げに選手を送れなかった那須ブラーゼン、ヴィクトワール広島も選手を出して協調。逃げ集団とのタイム差を1分前後にキープしながら周回を重ねていくことになった。

アタックに次ぐアタックから抜け出た11人の勝負に

レースも折り返しを過ぎると、メイン集団も本格的にペースアップを開始。周回を重ねるごとに逃げ集団とのタイム差はじわじわと縮まっていき、10周完了時点では14秒差にまで縮まることに。残り5周となる11周目には遂にメイン集団が逃げ集団を吸収し、終盤にしてレースは振り出しに戻った。

宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、ヴィクトワール広島らが協調するメイン集団が逃げ集団とのタイム差を縮めに入る宇都宮ブリッツェン、那須ブラーゼン、ヴィクトワール広島らが協調するメイン集団が逃げ集団とのタイム差を縮めに入る photo:Nobumichi Komori7人の逃げ集団が折り返しの長い直線区間を進む7人の逃げ集団が折り返しの長い直線区間を進む photo:Nobumichi Komori

ひとつになった集団から小石佑馬と宇賀隆貴(ともにチーム右京相模原)の2人が飛び出すも集団は容認せずひとつになった集団から小石佑馬と宇賀隆貴(ともにチーム右京相模原)の2人が飛び出すも集団は容認せず photo:Nobumichi Komori
何度かシャッフルされた後に11人の先頭集団が形成される何度かシャッフルされた後に11人の先頭集団が形成される photo:Nobumichi Komori
ひとつになった集団では再び激しいアタックの応酬が続くが、決定的な逃げは決まらない。小石佑馬(チーム右京相模原)が単独で抜け出し、さらにチームメートの宇賀隆貴(チーム右京相模原)が合流して集団からリードを奪う場面もあったが、活性化する集団が人数を減らしながらも吸収。その後もアタックと吸収が繰り返される中、戻りの直線区間で再び小石がアタックを仕掛けると集団が分断。9人が先行したところに後方からトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)と阿曽が合流。後方の集団は個人総合を争う山本大喜(キナンサイクリングチーム)と小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)がいることもあってか牽制状態になり失速し、勝負は11人に絞り込まれることになった。

11人の先頭集団
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
トマ・ルバ、山本元喜、新城雄大(キナンサイクリングチーム)
小野寛斗(スパークルおおいたレーシングチーム)
小石佑馬、宇賀隆貴(チーム右京相模原)
阿曽圭佑、渡邊諒馬(ヴィクトワール広島)
西尾憲人(那須ブラーゼン)
阿部航大(さいたまディテーブ)

増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を先頭に11人の先頭集団が最終周に入る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を先頭に11人の先頭集団が最終周に入る photo:Nobumichi Komori
小集団のゴールスプリント勝負を制した阿曽圭佑(ヴィクトワール広島)がうれしい初勝利でチームにもJCL初勝利をもたらした小集団のゴールスプリント勝負を制した阿曽圭佑(ヴィクトワール広島)がうれしい初勝利でチームにもJCL初勝利をもたらした photo:Nobumichi Komori
11人の先頭集団ではその後もアタックの応酬が続くが、決定的な抜け出しを決める選手は現れず。最終周に入っても続くアタック合戦から新城、阿部が脱落して迎えた最終局面。ホームストレートへと向かう最終コーナー手前でルバがアタックを仕掛け、そのまま先頭を引く形で残り距離を減らしていくと、最後尾から増田がスプリントを開始。西尾、さらに阿曽が反応して番手につくと、ゴール直前で阿曽が増田を捲りそのまま先頭でフィニッシュラインを駆け抜けた。

優勝した阿曽は「今日のチームプランは僕を勝たせるように、若い選手が多いですが一丸となって残り2レースを戦おうと話していて。本当にみんなが僕を守って追走もしてくれましたし、勝負できる位置に送り込んでくれたのでプラン通りだったなと思います」と最初にチームメートへの感謝を口にした。

表彰式表彰式 photo:Nobumichi Komori
最後のスプリントの場面は「キナンの山本元喜選手がずっと集団の後方でアタックを仕掛ける瞬間をうかがっているように見えて。キナンは人数もそろえているしいかれたら嫌だなと思っていましたが、スプリントになれば自分にも勝機があるとは思っていました。ラスト、コーナーに入る前にトマ選手がアタックを仕掛けたのでしっかりついて行って、増田選手がかけるのに合わせて自分もスプリントを仕掛けてしっかり捲れたという感じでした」と振り返った。

この勝利がチームにとってはJCL初勝利。阿曽は「僕は今年2月からチームに加入して、スポンサーやファンの皆さんが期待してくださっている中で、チーム皆んなで勝てたというのが僕としても本当にうれしいです」と勝利の喜びをあらためて口にした。

敢闘賞は増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が獲得敢闘賞は増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が獲得 photo:Nobumichi Komori中間スプリント賞を獲得した孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)と山本大喜(キナンサイクリングチーム)中間スプリント賞を獲得した孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)と山本大喜(キナンサイクリングチーム) photo:Nobumichi Komori

各賞ジャージ着用者は前戦から変更なし。スプリント賞と新人賞は最終戦まで争いが続く各賞ジャージ着用者は前戦から変更なし。スプリント賞と新人賞は最終戦まで争いが続く photo:Nobumichi Komori
今シーズンのJCLプロロードレースツアーは、残すところ「那須塩原クリテリウム」の1戦のみ。記念すべき開幕イヤーの各賞ジャージとチームランキングの頂点に立つのは…?
大田原ロードレース 116.1km 結果
1位 阿曽圭佑(ヴィクトワール広島) 2時間40分23秒
2位 西尾憲人(那須ブラーゼン)
3位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
4位 山本元喜(キナンサイクリングチーム) +1秒
5位 宇賀隆貴(チーム右京相模原)
6位 トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) +7秒
photo&text: Nobumichi Komori