「イタリア最古のレース」と呼ばれるミラノ〜トリノ。横風分断が発生したイル・ロンバルディア直前のワンデーレースで、アダム・イェーツを振り切ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が勝利を飾った。



2年目のアルカンシェルを初披露したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)2年目のアルカンシェルを初披露したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
ミラノ〜トリノ2021 コースプロフィールミラノ〜トリノ2021 コースプロフィール photo:RCS Sport土曜日にワールドツアー最終戦イル・ロンバルディアを控えた10月7日、前哨戦の1つである第102回ミラノ〜トリノ(1.Pro)が開催された。1876年に第1回大会が開催された「イタリア最古」と呼ばれるレースは、その名の通りイタリアを代表する2つの工業都市ミラノとトリノを結ぶセミクラシックレースだ。

昨年大会はコロナ禍による過密日程のため、選手の負担を軽減するべく平坦路に変更されたものの、今年は名物登坂の「スペルガの丘(距離4.9km/平均勾配9.1%/最大勾配14%)」が復活。イタリア北部のミラノを出発して平坦路を進み、最後はトリノのこの丘を含む周回コースを1周半する190kmのレイアウトとなっている。

スペルガの丘を2度登るパンチャーやクライマー向きのレースには、イル・ロンバルディアの最終調整としてビッグネームが多数参戦。世界選手権で2度目のアルカンシェル獲得後、初レースとなったジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)を先頭にスタートの号砲が鳴らされた。

ドゥクーニンク・クイックステップ横風分断作戦で形成された19名の第2集団ドゥクーニンク・クイックステップ横風分断作戦で形成された19名の第2集団 photo:CorVos
ケヴィン・ヴェルマーク(アメリカ、チームDSM)を中心にプロチームで形成された6名の逃げ集団が3分半までリードを広げて順調に距離を消化していくなか、メイン集団は後半に入って活性化。残り65km地点を過ぎた横風区間で次々とエシュロンが発生した。

この横風分断作戦を仕掛けたのはドゥクーニンク・クイックステップ。そのうち6名が集団先頭でペースを上げると、2019年大会の覇者マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)やプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)など各チームのエースを含む19人の第2集団が形成された。

第2集団にエースが乗り損ねたイネオス・グレナディアーズやトレック・セガフレード、チーム アルケア・サムシックが懸命な追走でタイム差を30秒まで縮め、1回目のスペルガの丘(残り24km地点)に突入する。序盤から逃げていた選手たちを次々と吸収し、第2グループが先頭集団に名前を変えると、そこにアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、チーム アルケア・サムシック)、ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)などが自らの力で合流し、有力選手揃いの15名の集団が形成された。

1度目のスペルガの丘頂上手前で飛び出したマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)1度目のスペルガの丘頂上手前で飛び出したマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
一騎打ちとなったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)一騎打ちとなったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)とアダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
集団牽引のために前に出たと思われたマウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が、スペルガの丘頂上の手前で抜け出すことに成功する。下りと平坦区間を使い集団と最大25秒まで差を広げたものの、最後のスペルガの丘の登坂に入った残り4kmで、イェーツを先頭にする精鋭集団に引き戻された。

イェーツに追従できたのはポガチャルとログリッチ、ウッズ、バルベルデ。また、アラフィリップが追走を止めたことで、ドゥクーニンク・クイックステップはジョアン・アルメイダ(ポルトガル)が追いつき、先頭集団は6名まで絞られた。

シッティングのまま強烈なペースを刻むイェーツが、1人また1人とライバルを振り落としたものの、ログリッチは唯一食らいつく。ラスト2kmを過ぎてからはログリッチが先頭交代してペースを保ったことで勝負は先頭二人に絞られた。

フィニッシュまで500mの地点で加速力に劣るイェーツが先にサドルから腰を上げた。しかし「彼(アダム)のアタックは予想していた」と語るログリッチが、イェーツを含むライバルたちを蹴散らした4日前のジロ・デッレミリア同様、イェーツを引きちぎりフィニッシュした。

アダム・イェーツを振り切り勝利したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)アダム・イェーツを振り切り勝利したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
ミラノ〜トリノ2021表彰台ミラノ〜トリノ2021表彰台 photo:CorVos
「良い結果はもちろん、良い天気と良いレースだった。エシュロン(横風分断)は厳しかったものの、チームから僕を含め3名入ることができ、そのまま最初の登りに突入した。幸運にも脚の調子は良く、勝利を掴むには十分だった」とレースを振り返るログリッチ。2戦2勝とこの上ない状態で臨むイル・ロンバルディアについては「いますぐに土曜(イル・ロンバルディア)のことは考えられないが、身体を休めて最後の大きなレースに挑戦したい」と語った。

12秒遅れの2位でフィニッシュしたイェーツは「ブエルタ、ジロ・デッレミリアではタイミングを伺っていた(ので今回は積極的に仕掛けた)、だが今回もプリモシュ・ログリッチに先を行かれてしまった。彼を倒るのは簡単じゃない」とコメント。またポガチャルと来年UAEチームエミレーツへの加入が決まっているアルメイダによる表彰台争いは、激しいスプリントの末アルメイダが先着した。
ミラノ〜トリノ2021結果
1位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 4:17:41
2位 アダム・イェーツ(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:12
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:35
4位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
5位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション) 0:48
6位 ダヴィド・ゴデュ(フランス、グルパマFDJ)
7位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
8位 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
9位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、チーム アルケア・サムシック)
10位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) 0:56
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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