「30歳を越え、自分のスタイルが見つかった。初出場で優勝なんて夢のようだ」と、19年ぶりの雨泥パリ〜ルーベを制したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)は言う。2位のフェルメルシュ、3位ファンデルプールなど、混沌のパリ〜ルーベを走り終えた選手たちの言葉を紹介します。



1位 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)

ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)がスプリントでファンデルプールとフェルメルシュを下したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)がスプリントでファンデルプールとフェルメルシュを下した photo:CorVos
信じられない。僕にとって最初のパリ〜ルーベだった。そこでいきなり優勝するなんて言葉がない。伝説とも呼ばれるであろう雨のルーベで勝てて本当に嬉しいよ。スタートから路面は濡れ、フィニッシュまで90kmを残すアランベールで早くもアタックがかかった。終盤はファンデルプールの後を追い、最後のスプリントで勝つことができた。本当に嬉しいよ。

(先行した)モスコンは良い選手で、スタートして40km付近で早くも飛び出した。200km近く先頭を走るなんて強い選手だということを証明したが、それを追う僕たちも良い協力体制を築くことができた。最初のパヴェ区間から落車しないよう走らなければならず、常に良い位置を確保しながら走った。パンクや機材トラブルがなくて本当にラッキーだったし、何度か落車しかけたものの集中して回避できた。力の限りを尽くして掴んだ勝利は特別だよ。

最後のスプリントはファンデルプールの後ろにつき、残り200mからロット・スーダルの選手(フェルメルシュ)が先に飛び出したんだ。彼らを抜いたのはフィニッシュラインまで僅か25mぐらいだっただろう。限界は超えていたが、勝てて本当に嬉しいよ。

フィニッシュ直後に倒れ込む、泣け叫びながら喜ぶソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)フィニッシュ直後に倒れ込む、泣け叫びながら喜ぶソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
パヴェでできた優勝トロフィーを掲げるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)パヴェでできた優勝トロフィーを掲げるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
30歳を越えてからモニュメントを勝ち始めるグレッグ・ファンアーヴェルマートのような選手たちを見てきた。彼らが僕の良いお手本になってくれたんだ。30歳を迎え選手として円熟期に入り、ようやく自分のスタイルを見つけたんだ。この状態をあと数年は維持していきたい。

また、今年は精神面で大きな変化が訪れた1年だった。メンタルコーチのサポートもあり、自分の内側から変化していったんだ。それが今年の活躍できた理由だよ。まるで夢のようだ。今年は僕にとって最高の1年となった。

2位 フロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・スーダル)

呆然とした表情で悔しがるフロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・スーダル)呆然とした表情で悔しがるフロリアン・フェルメルシュ(ベルギー、ロット・スーダル) photo:CorVos
今は2位という結果に落ち込んでいる。けれど、すぐに誇りに思えるようになるだろう。ここまで勝利に近づけるとは思ってもおらず、今日の走りは将来への自信に繋がるはずだ。でも2位はやっぱり悔しいね。

まるで戦争のようなレースだった。それでも神話に出てくるようなアランベールなど、いくつかの石畳へと先頭で入る瞬間は興奮した。沿道から応援してくれた多くのベルギー人ファンが僕の力になったし、何よりもシクロクロスの経験が役に立った。長らくシクロクロスのレースからは離れているが、石畳上を滑る感覚は近いものがあった。

終盤に最初のアタックを仕掛けた瞬間、彼らは僅かなリードも許してくれないのだと分かった。少し間を開けて残り2kmから再び仕掛けたのだが、上手くいかなかった。コルブレッリとファンデルプールには集団スプリントで勝つ脚があったので、彼らを虚を突く動きをするしかなかった。それ自体は成功して最終コーナーを先頭で抜け出すことができたものの、フィニッシュラインの直前で脚が攣りコルブレッリに抜かれてしまった。

3位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)

マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のアタックをフォローするソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)のアタックをフォローするソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
負けたのならば、勝てるまで死ぬ気で挑み続けるしかない。だからこそこの結果を誇りに思うことができるんだ。脚は正真正銘の空っぽで、初出場での表彰台は誇りに思うべき成果だろう。まだ1回しか走っていないが、このレースは間違いなく忘れられない思い出になった。

アランベールの森で仕掛け、それ以降レースが落ち着くことはなかった。パヴェ区間では自分のテクニックを発揮することができたものの、ラスト30〜40kmは常に限界の状態だった。最後のスプリントまでは本当に長く、残り50kmからは5〜10kmごとにジェルで補給しなければならないほどだった。十分に補給したつもりだったが、勝利には何かが足りなかったようだ。

死にそうになっているのは他の2人も同じだと願っていた。3人の中でも自分が一番マシな状態だと信じていたが、結果的に僕が一番力が残こせていなかった。頭をシクロクロスに切り替えるのには時間を要するだろう。いまはしばらく休息の時だ。

4位 ジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)

残り52.8kmから独走に持ち込んだジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)だが、パンクと落車でリードを失う残り52.8kmから独走に持ち込んだジャンニ・モスコン(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)だが、パンクと落車でリードを失う photo:CorVos
最も美しいレースの1つだった。距離を残した場所から仕掛け、力のすべてを出し尽くした。パンクという不幸の後、限界が来てしまった。限界を越えて走っていたため、ミスを犯して落車してしまった。それほどタイムは失わなかったものの、脚は底を尽きていた。来年また挑戦するよ。

5位 イブ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)

3度のパンクに見舞われながらも上位でフィニッシュしたイブ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)3度のパンクに見舞われながらも上位でフィニッシュしたイブ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:CorVos
重要な所で3度パンクしたのにもかかわらず、良いレースができた。追走集団についていき、トラックのスプリントで先着し5位に入ることができた。マチュー(ファンデルプール)がアタックした瞬間にパンクとはついてなかったよ。リスクを犯さないよう走ったのに3度のパンクは不運としか言いようがない。次回は運が味方してくれるといいね。でもパンクはこのレースの一部だし、自分の走りを誇りに思う。あと、今夜はお腹いっぱいになるまでフリッツ(フライドポテト)を食べるつもりだ。

6位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)

予想通りクレイジーなレースだった。パヴェ区間では良いペースで走ることができ、パンクしてバイク交換した後に集団復帰することができた。パンクした瞬間”僕のレースは終わった”と思ったが、諦めたくなかったのでベストを尽くした。結果的に良い順位でフィニッシュすることができ満足しているよ。この状況下でのパリ〜ルーベは長きに渡り語り継がれていくことだろう。

7位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)

7位に終わったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)7位に終わったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ) photo:CorVos
とても厳しいレースだった。大きな逃げ集団が形成されると予想していたのだが、強い選手が数名入る小さなグループだったので良い展開となった。最初のパヴェから混沌としていたため、トラブルを回避するため集団先頭で走らなければならなかった。ファンデルプールが加速した時、僕は集団の後ろにいたためついていくことができなかった。それが敗因だろう。

パヴェでは良い感覚で走ることができず、誰かの後ろを走ると余計な力を使わなければならなかった。視界も徐々に悪くなっていき、満足できるレースとはならなかった。今日は勝利が不可能だった日となった。この後は久しぶりに休暇を楽しみたい。

8位 トム・ファンアスブロック(ベルギー、イスラエル・スタートアップネイション)

集団から遅れた時には、もう踏む力は残っておらず空っぽだった。

9位 ギヨーム・ボワヴァン(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)
 
あるパヴェ区間で遅れたが、自分でも驚くほど調子が良かったのでその後も踏み続けた。でも、勝利に絡むことができなかったので悔しいよ。

57位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)

見せ場を作れずに終わったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)見せ場を作れずに終わったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
パリ〜ルーベという厳しいレースに、悪天候が加わる最悪の状態になった。フィニッシュラインにたどり着くまでひたすら消耗し続けるレースだった。集団での位置争いが勝敗を分け、集団先頭にいることが何よりも大事だった。チームとして良く動いたものの、その多くが様々な落車に巻き込まれてしまった。僕自身はそのうちの1つに巻き込まれ、身体の右側を地面に強く打ち付けてしまった。しかしその後もフィニッシュを目指し懸命に踏んだ。ボーラ・ハンスグローエのジャージを着て走る最後のレースだったので、この5年を締めくくる良い結果で終わりたかったのだが、望み通りの結果とはならなかった。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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