全グランツールでの区間優勝を含むプロ通算22勝を挙げたダニエル・マーティン(アイルランド)が今季限りでの現役引退を発表した。「まだ戦えるものの、レースの喜びを失ってしまった」と語り、10月9日のイル・ロンバルディアが現役最後のレースとなる。



2021年ジロ・デ・イタリア第17ステージを勝利したダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション)2021年ジロ・デ・イタリア第17ステージを勝利したダニエル・マーティン(アイルランド、イスラエル・スタートアップネイション) photo:RCS Sport
9月3日、イスラエル・スタートアップネイションに所属するダニエル・マーティン(アイルランド)が今季限りでの現役引退を明らかにした。「まだ戦えるものの、原点であるはずのレースに対する喜びを失ってしまった。とてつもなく大きな決断であったが、いまがその時だという考えに至った」。

現在35歳のマーティンは2008年にスリップストリームでプロデビューを果たすと、エティックス・クイックステップ、UAEチームエミレーツを経て2020年よりイスラエル・スタートアップネイションに加入。プロ通算22勝のうちツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャでそれぞれ区間2勝、7年振りの出場となった今年のジロ・デ・イタリアで1勝を挙げ、全グランツールでのステージ優勝を達成した。

ステージレースでは2010年のツール・ド・ポローニュと2013年のボルタ・ア・カタルーニャで総合優勝し、ガーミン・シャープ時代にはモニュメントと呼ばれるワンデーレースの最高峰であるリエージュ~バストーニュ~リエージュ(2013年)とイル・ロンバルディア(2014年)を制した。日本のレースも幾度となく走っているマーティンは2010年にはエースとして挑んだジャパンカップで優勝し、今年の東京五輪にもアイルランド代表として16位でフィニッシュした。

2010年ジャパンカップを制したダニエル・マーティン(アイルランド、当時ガーミン・トランジションズ)2010年ジャパンカップを制したダニエル・マーティン(アイルランド、当時ガーミン・トランジションズ) photo:Kei Tsuji
2013年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ表彰式 優勝ダン・マーティン、2位ロドリゲス、3位バルベルデ2013年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ表彰式 優勝ダン・マーティン、2位ロドリゲス、3位バルベルデ photo.A.S.O2014年イル・ロンバルディアで後続を振り切ってフィニッシュするダニエル・マーティン(アイルランド、当時ガーミン・シャープ)2014年イル・ロンバルディアで後続を振り切ってフィニッシュするダニエル・マーティン(アイルランド、当時ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele

「依然として自転車競技を愛しており、これを仕事にするプロ選手の特権も味わった。このスポーツを通して素晴らしい瞬間を、僕の人生を輝かせてくれた人たちと分かち合うことができた。どんな時でも100%の力を尽くすのが僕のやり方だった。あと数年間現役を続けることも可能だったが、あまりにも普遍すぎる選択だと思ったんだ。心が沸き立つ新しい挑戦をするならいましかない。そう思いこの決断をした」。

イスラエル・スタートアップネイションのオーナーであるシルヴァン・アダムスは「ダンは自転車界で長きに渡り最高の選手の一人として活躍してきた。多くのレースに興奮を与え、クラシックやグランツールで多くの勝利を挙げてきた。彼はチームに高い水準の戦い方を示してくれた」とコメント。「そんな彼のいない来年は厳しい戦いを強いられることだろう。だがダンの決断を理解し、何よりも尊重したい。彼の未来が素晴らしいものになるよう祈っている」と今年のツールで総合エースを務めたマーティンを労った。

引退後について「競技を離れることで父親として、また夫として家にいる時間が欲しいし、それが何よりも楽しみなんだ。妻と外をジョギングするような普通の生活を送りたい」と語ったマーティンは、9月5日より開幕するツアー・オブ・ブリテンに出場し、過去に優勝経験のあるイル・ロンバルディア(10月9日)が現役最後のレースとなる。

text:Sotaro.Arakawa

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