マイカが魅せた難関山岳ステージの87km独走劇　ブエルタで自身4年ぶりのステージ勝利を挙げる

グレドス山脈の4つの峠道を繋ぐ197.5kmコースでラファウ・マイカ（UAEチームエミレーツ）が実に87kmにおよぶ独走を経てブエルタで4年ぶりのステージ勝利を遂げた。後方集団の総合争いでは抜け出したアダム・イェーツ（イネオス・グレナディアーズ）がライバルたちに対し15秒を稼いだ。

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8月29日（日）第15ステージ
ナバルモラル・デ・ラ・マタ〜エル・バラコ　197.5km

スペインの強烈な日差しのなか走るプロトン photo:CorVos
197.5kmの長距離ステージに待つのは1級山岳アルト・デ・ラ・センテネーラ（全長15.1km・平均5.5%）、2級山岳プエルト・デ・ペドロベルナルド（全長9km・平均4.2%）、そして木々がなく岩が露出した1級山岳プエルト・デ・ミハレス（全長20.4km・平均5.4%）。しかし登坂時間が50分を超えるこの日最大の難所を越えてもまだフィニッシュは38kmも先。最後にボーナスタイム（3秒、2秒、1秒）付きの3級山岳プエルト・サンフアン・デ・ナバ（全長8.6km・平均3.8%）を素早く駆け上がってから短い下り区間を経てフィニッシュに至る獲得標高差3,640mの難コース。

8月29日（日）第15ステージ　ナバルモラル・デ・ラ・マタ〜エル・バラコ　197.5km image:Unipublic8月29日（日）第15ステージ　ナバルモラル・デ・ラ・マタ〜エル・バラコ　197.5km image:Unipublic


昨日の第14ステージ後にブエルタを去ったリチャル・カラパス（エクアドル、イネオス・グレナディアーズ）とともにDNSを決めたヨナタン・カイセド（エクアドル、EFエデュケーション・NIPPO）の2人を減らした163人のプロトンが難関山岳に向け走り出した。

ステージ序盤からアタックが頻発、逃げグループが形成される photo:CorVos
スタートしてすぐに25人の逃げ集団が形成された。総合ジャンプアップを狙うセップ・クス（アメリカ、ユンボ・ヴィスマ）やダビ・デラクルス（スペイン、UAEチームエミレーツ）、再びのステージ勝利を目論む昨日覇者ロマン・バルデ（フランス、チームDSM）やマグナス・コルト（デンマーク、EFエデュケーション・NIPPO）を含んだため集団はこの逃げを嫌い、70km地点の最初の山岳、アルト・デ・ラ・センテネーラまでに全員を吸収した。

最初の1級山岳でラファウ・マイカ（ポーランド、UAEチームエミレーツ）、ファビオ・アル（イタリア、クベカ・ネクストハッシュ）、マキシム・ファンヒルス（ベルギー、ロット・スーダル）ら3人がアタック photo:Photogomezsport
そしてこの最初の1級山岳でラファウ・マイカ（ポーランド、UAEチームエミレーツ）、ファビオ・アル（イタリア、クベカ・ネクストハッシュ）、マキシム・ファンヒルス（ベルギー、ロット・スーダル）ら3人がアタック。ファンヒルスがメカトラで苦しむが、これに合流した21人が逃げグループを形成した。以下が3人に合流した18人。

ステフェン・クライスヴァイク（オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ）
ジョフリー・ブシャール（フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン）
ゴルカ・イサギレ（スペイン、アスタナ・プレミアテック）
ワウト・プールス（オランダ、バーレーン・ヴィクトリアス）
アンドレア・バジオーリ（イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ）
ディエゴ・カマルゴ（コロンビア、EFエデュケーション・NIPPO）
ルディ・モラール（フランス、グルパマFDJ）
シモーネ・ペティッリ（イタリア、アンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオ）
ガイ・ニーブ（イスラエル、イスラエル・スタートアップネイション）
ステフ・クラス（ベルギー、ロット・スーダル）
カルロス・ベローナ（スペイン、モビスター）
ルーカス・ハミルトン（オーストラリア、バイクエクスチェンジ）
ミケル・ニエベ（スペイン、バイクエクスチェンジ）
テイメン・アレンスマン（オランダ、チームDSM）
クリス・ハミルトン（オーストラリア、チームDSM）
マイケル・ストーラー（オーストラリア、チームDSM）
マーティン・トゥスフェルト（オランダ、チームDSM）
ジャンルーカ・ブランビッラ（イタリア、トレック・セガフレード）
フアン・ロペス（スペイン、トレック・セガフレード）
ジョセフロイド・ドンブロウスキー（アメリカ、UAEチームエミレーツ）

マイカら逃げる3人を追うステフェン・クライスヴァイク（オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ）を含む追走グループ photo:CorVos
ファビオ・アルとラファウ・マイカがここまでの2時間の平均速度43km/hでセンテネーラ山頂を通過し、追走グループに1分30秒の差をつける。メイン集団は3分後方に。

先行したラファウ・マイカらを追う逃げグループ photo:Photogomezsport
メイン集団はリーダージャージ要するアンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオがペースをキープ photo:Photogomezsport
そしてフィニッシュまではまだ87kmを残す2級山岳プエルト・デ・ペドロベルナルドでマイカが独走に打って出る。追走グループではステフェン・クライスヴァイクが強さを見せるがマイカとの差は1分40秒。続いてクリス・ハミルトンが3分差で追う。メイン集団はリーダージャージ要するアンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオがペースをキープして追うが、マイカとの差は6分ほどと離れた。

ラファウ・マイカを追うファビオ・アル（イタリア、クベカ・ネクストハッシュ） photo:Photogomezsport
マイカは強力なペースをキープし、最後の3級山岳プエルト・サンフアン・デ・ナバでもこの差をキープし、エル・バラコまで独走で逃げ切った。

このブエルタでUAEチームエミレーツに初のステージ勝利をもたらしたマイカにとってプロ13勝目。ハードな山岳ステージでレース序盤から逃げ、独走で逃げた距離じつに87km。先のツール・ド・フランスではタデイ・ポガチャルの総合優勝のために山岳ステージで強力なアシストを披露したことが記憶に新しいが、自身のために走っての勝利は4年前のブエルタのシエッラ・デ・ラ・パンデラで挙げた勝利以来のステージ優勝となった。両手で天を指差すポーズでフィニッシュしたのは、3ヶ月前に父を亡くしていたからだ。

天を指差してフィニッシュするラファウ・マイカ（ポーランド、UAEチームエミレーツ） photo:Photogomezsport
亡き父を想い勝利に涙するラファウ・マイカ（ポーランド、UAEチームエミレーツ） photo:CorVos
「この勝利は特別なもの。何度アタックを試みても、最後まで逃げ切るのは難しいこと。でも今日はスタートからトライし、最後まで逃げ切った。最後まで誰も待たなかった。絶対に自分が勝ちたかったのは、亡くした父のために、そして2人の子供、家族、チームUAEに勝利を捧げたかったから。僕は今シーズン序盤から良くないスタートを切った。僕と家族にとって困難な時期を過ごしたんだ」。

マイカに1分27秒届かなかった2位のステフェン・クライスヴァイク（オランダ、チーム ユンボ・ヴィスマ） photo:CorVos3位のクリス・ハミルトン（オーストラリア、チームDSM） photo:CorVos


フィニッシュ前に抜け出してライバルたちに対して15秒を稼いだアダム・イェーツ（イギリス、イネオス・グレナディアーズ） photo:Photogomezsport
単独でマイカを追ったステフェン・クライスヴァイクが1分27秒遅れて2位フィニッシュ。3位には2分19秒遅れのクリス・ハミルトン、そして逃げを吸収して続くメイン集団からはアダム・イェーツ（イギリス、イネオス・グレナディアーズ）が抜け出しに成功、総合を争うライバルたちに15秒の差をつけてフィニッシュした。

フィニッシュに向かうマイヨロホを含むメイン集団 photo:Photogomezsport
総合首位に着けるオドクリスティアン・エイキング（ノルウェー、アンテルマルシェ・ワンティゴベール・マテリオ）は6位でステージを終え、マイヨロホをキープ。プロトンは約400kmの移動を経て2回めの休息日を迎える。

ブエルタで4年ぶりのステージ優勝を挙げたラファウ・マイカ（ポーランド、UAEチームエミレーツ） photo:Photogomezsport